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- 細胞の生死を制御する -
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| ニュース |
Nod2欠損マウスを利用して腸でのNod2の役割などを調べた論文がScience
に出ました。今後のクローン病の研究に大いに役立つものと思われます(2/4)・・・同時に奇妙な論文もいっしょに出ました(こちらは追試の広
場)
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Postdoctoral Position |
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「お前は死について聞くが、私は 未だ生について知らないのだよ。どうして死について知っていようか」(巻第六先進第十一11-12)
科学の発達した今日、多くの生命現象が分子レベルで解明されてきています。現在、科学の分野では死についても真剣に研究されるようになってきて います。
諸行無常、生きとし生けるものはいつか死ぬ
これは真実です。しかし、人の死のパターンにもいろいろありま す。不幸にしてやって来る事故死、老いからくる死、どちらともいえない病死、計画的な殺人と自殺。
人は多くの欲を持っていますが、もっとも強い欲求はもっと生きたいというものではないでしょうか。そこで交通事故や病原感染の防 止といった不慮の死を回避する様々な手段をこうじています。年々、技術が発展して人は長寿化する傾向にあります。 にもかかわらず、人は死にます。現代では上記が減少するのに応じて、今まで感染症や循環系異常などによる死に隠れて見えなかった癌による死が増えています。 なぜ、死はあるんでしょう、かつて仏 陀は四門に四相を見て出家を決心しましたが、これは仏陀のみが感じた疑問だけではなく人類の大命題です。
人の体を作るのは細胞です。
ですから人が死ぬ(個体死)時はふつう細胞の死ぬ時でもあります。しかし、人の体は約60兆の細胞からできていますが、これらの細胞は培養して やると個々に生きることができます。それでも細胞はいつか死にます。そのうちの一つは摂取する栄養分がなくなったり、物理的に傷ついたりといった「不慮の 死」です。
そも、昔の生命には「不慮の死」以外のこうした死は存在しなかったと考えられます。
遺伝子と体の類似性などから、今の生命は同一の起源より起こったものと容易に推定されます。化石 的根拠などからこれらは単細胞生物であると考えられています。単細胞生物は一般に無限増殖を繰り返し、いつまでたっても老いず不慮の死以外 には死にません。しかし、人の体はこうした細胞の単なる集まりと異なって、全体で「からだ」として働くために、ちがう働きを持った、ちがった形を した細胞(機能的・形態学的に分化した細胞)からなります。生きた細胞は新陳代謝を行いますが、体の中のいくつかのしくみを維持するためには、それを支え る細胞自体が絶えず増殖して死滅を繰り返す必要があります。たとえば、皮膚では絶えず表皮細胞が増えて死んで垢となっていますので、たとえ皮膚の細胞が太 陽光線で傷ついても次の新しい細胞が皮膚を守れます。これを計画細胞死と呼びます。
では、進化の過程ではこの有限の生と計画細胞死はどのように獲得されたのでしょう。
真実は時の彼方ですが、系統分類などから、以下のことが推定できます。「卵」以外にそれ
を保護する「殻」をもつものがあらわれました。初めは単に乾燥などの急激な単純な環境変化に耐えるだけのためでした。その後、この殻はより効率のいい繁殖
を支える母体となります。初めは単なる殻であったのに、やがて形も複雑になり、生殖を効率的に進める器官となります。その多様性を個々にあげると先に話が
進まないので省略します。こうして生殖細胞を保護していた殻は今や人の体の大半を占めるまでになったわけです。殻は所詮殻、いつかは腐り落ちていくもので
す。しかし殻を持つことで生存に有利になったことはいうまでもありません。さらにその「殻」がもっといろんなことをしてくれると、もっと有利です。つまり
長い進化の末、我々生命は積極的に有限の生(老化)と細胞死を獲得したと言えるわけです
(後述の「再び問う 死はどこからきたか」参照)。
| 関連項目 | 関連リンクの説明 | リンク先 | 推奨 |
| 細胞の誕生と死 | by和田勝氏。細胞の誕生と生死についてよくまとめてある。全体も秀作なので時間のある人は最初から読 むことをお勧めする | 東京医歯大生 物学内 | AA |
| 宇宙観 | by匿名。時間別によくまとめてある。 | A |
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ヒトなどのこうした体細胞中心の生命体では、全体(個体)の統合性がもっとも大切です。
そのために、こうした生物では、個体という自分らの集団に、その存在を脅かす厄介者がいたら排除するし
くみを身に着けています。大きくおおよそ3つに分けると
厄介者のもっとも最たるものは天敵や体の中に入ってくる病原体です。また、厄介者は外からだけとは限りません。
体の中で分業している細胞や、体を作ったり維持するために一過的に必要な細胞のなかには、その場所や時期以外にい てもらっては困るものもいます。たとえば、赤ちゃんの体ができる途中でいつまでも水かきが手にあると、ちょっと困ります。
また、発癌剤や放射能などで遺伝子が傷つくと、ちょっとぐらいなら細胞は自分で直してしまうのですが、あんまり遺伝子の壊れ方が ひどいようだと、修復不能になったり、修復の途中で間違ったりしてしまい、癌細胞などの元となります。癌細胞は体全体のことを考えず勝手なことをやるので、これも厄介 者です。
また、人は「自分」の細胞を病原といった外敵から守るためのしくみを持ちますが(免疫系といいます)、免疫系の細胞が正常な仲間 の細胞をも攻撃したのではこれまた厄介者です。
こうした身内の厄介者は、外部からの侵入者である病原のようにやが て除かれてしまいます。ヒトの場合、最終的に免疫系の細胞に食べられて除かれてしまいます。ただ、除く側の立場からすると、病原のように外部のやつらと、 このような元々身内だった厄介者では対処の方法が異なっています。外部の者の場合、強力な免疫兵器で攻撃して撃退するだけでなく、次回の攻撃に備えて、顔 をしっかりと覚えておき、入ってきたとたんに袋叩きにすることができます。ところが、このような元々身内だった厄介者の場合、こんな特徴のヤツが厄介者に なりましたよ、ということで覚えておくと、今まともに仕事をしている仲間の細胞も同じ顔をしているわけですから、彼らまで攻撃してしまうことになります。 これが自己免疫疾患と呼ぶ病気です。そこで、こうした内部の厄介者たちは、外部からの敵とは違った方法で粛々と処分されることとなります。 ではどうやって?生命は奇想天外な方法を思いついたのです。
自分が厄介者になったら自殺する(計画細胞死を行う)ように細胞一つ一つに遺伝的にプログラムしたのです。
遺伝子か傷ついたり、体に不必要になったりした細胞は静々と自らに備わったしくみで、自らを分解していきます。体の重要な成分である蛋白質を分
解する酵素(プロテアーゼ)と自
らの遺伝子を壊す酵素(DNA
分解酵素-DNase-)を活性化されます。
| 役割 | 具体的な役割 | 例 |
| いらない細胞を除く | 有害細胞を除く | 遺伝子が傷ついた細胞(癌細胞の予備軍) |
| 自分を攻撃する免疫細胞 | ||
| 余った細胞を除く | 脳のネットワークができる途中で余った細胞 | |
| 役割を終えた細胞を除く | みずかきとか、体ができる途中ではいるんだけども完成するとき不必要な細胞ができたとき | |
| 体の機能を維持するための細胞の代謝 | 表皮の細胞 | |
| 免疫系の細胞 |
こうして、個々の細胞の死は、全体の統合性のために、つまり個体として生きるために必要になったのです。
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こうした細胞の生死調節に関する研究ははじめ癌細胞の研究からはじまりました。彼らの中には不死化し、増殖を重ねることができるものがありま す。かつて米国でヘレンという人が癌でなくなりました。しかし彼女の細胞は不死性を獲得し、増殖を続けています。今では世界各地の実験室で人の実験細胞と して飼われています。こうした不死化した細胞の種類は星の数ほどあり、今の医学の基礎研究に多いに役立っています。こうした細胞は遺伝子に変異異常を抱え ています。
癌細胞は増殖性を獲得するだけではなく、深刻なものでは抗 癌剤も放射線も効かず自殺を引き起こしません。ふつう、これは細胞の正常な増殖と生存を監視する癌抑制遺伝子が壊れているためです。なかでも癌抑制遺伝子産物p53は 遺伝子の異常を発見し、そ の細胞が自殺するように仕向けます。もしもp53遺伝子そのものが壊れると、遺伝子異常を起こすほどの放 射能を浴びても細胞は死にません。こうしてp53 がないと高発癌性となります。
細胞死の研究の上で重要な第二の因子も癌から見つかりました。ある濾胞性リンパ腫の原因遺伝子を突き詰めると、この遺伝子は細胞の増殖ではなく 専ら死を調節していることがわかったのです。Bcl-2の 発見です。かくて、細胞の生死を制御するメカニズムを解明する時代が始まりました。
不慮に細胞が機械的に破壊されたり、飢餓状態に陥れられたりした時の死(ネクローシスといいます)と異なった形の変化と共通の過程をたどるので す。このホームページ先頭で示したように遺伝子の場である核が凝縮します(下表内図参照)。凝縮した核の中には密度の濃いところが見られま す。核に収められている遺伝子DNAは分解酵素でバラバラにされます。細胞表面の膜(原形質膜)の構造が破壊され細胞の本体部分に当たる細 胞質も細切れになってきます(これをアポトーシス小体とよびます)。しかし、あくまで細胞の内容物はその膜の「袋」に包まれたままです。「袋」ではその細 胞自身の蛋白質やDNAの分解酵素が働いて自分自身を分解しているのです。こうした細胞死をア ポトーシスと呼びます。
体がだんだんとできたり、老朽化した細胞を排除する過程ではアポトーシスを起こした細胞は炎症を起こすことなく、細胞の内容物が外に漏れる前に
免疫系の細胞に食べられてしまいます。わたしたちの体は免疫により病原などの外敵から守られているのですが、この場合、細胞がこうした病原体で殺されると
しばしば細胞の内容物が漏れでて、病原体をやっつける様々な免疫反応を起こします。自分の体内の要らない細胞や危険な細胞を除くときには自分自身を攻撃し
ないように、こうした外敵を除く免疫系を活性化しない方法で細胞を処理するのです。
| 何のアポトーシス? | 内容 | 説明 | リンク先 | 推奨 |
| 好中球 | HTML | 膜のブレビングがくっきり。動画あり | CELLS alive | AA |
| ハラキリで | JPEG | 核が凝縮したり、ばらばらに | このHP内 | AA |
| CIDEで | JPEG | 細胞が凝縮し、膜がブレビング | このHP内 | BB |
| c-Mycで | MOV | 細胞死の経時変化がよくわかる(重い) | Gerald Evans' | AA |
| LLCPK細胞 | JEPG | 黄色い核の凝縮がはっきりと | Miguel's | AA |
| 乳 腺細胞 | JEPG | 核凝縮がくっきり。 | Miguel's | AA |
アポトーシスは偶発的な死と異なり、いろんなしくみで制御されています。細胞の情報の根元は遺伝子です。遺伝子DNAには細胞の 生死を決定する遺伝子があり、これによって厳密に調節されています。またこれらの遺伝子自体も細胞同士の相互連絡で制御されており、いつ死ぬべきか個体と しての全体的統合性を考えた上で決められています。こうした点からもアポトーシスは他の死と大きく異なります。計画細胞死は下等な動物から植物まで広く認 められますが、動物のほとんどの計画細胞死はアポトーシスです。
余談ですが、植物などの動物以外の生物でのアポトーシス様の形態をたどる細胞死が観察されていますが、前に述べたようにアポトーシスはこれらの 生物にはない免疫系との関連が強い生理的意味合いを持つため、同義に論じられるかどうか語論のわかれるところです。また、動物以外にはこれからこれら述べ るアポトーシスの立役者たちは原則的に存在しません。
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個体全体の統合性にとって計画細胞死はたいへん大切なので計画細胞死を調節する遺 伝子や因子には細胞の増殖とも関連するものもあります。一方で計画細胞死を専ら制御する遺伝子もいます。例えば、Bcl-2とそ の仲間です(表)。はじめ、タンパク質の一種Bcl-2を作る遺伝子bcl-2は 濾胞性リンパ腫の原因遺伝子として見つかったのですが、その後その仲間が報告されてBcl-2ファミリーというタンパク質群からなることがわかり ました。Bcl-2ファミリーのうち、Bcl-2やBcl-xLな どはアポトーシスを抑制します。Hrk(Harakiri), Mtd, Bax, Bakなどは細胞死を引き起こします(後述)。人工的にBcl-xL遺伝子を培養細胞に入れてやると培養細胞のアポトーシスは抑制されます。逆にHrk遺 伝子を入れてやると細胞死は促進されます。こうして細胞の生死を制御できます。実際の人体では遺伝子を出し入れしているわけではなく、遺伝子やその産物で あるタンパク質の働きが制御されています。いつスイッチオンになりオフになるかで生死を制御しているわけです。Bcl-xは脳で特に多く含まれています が、同 遺伝子を破壊したねずみは大量の神経細胞が死に、胎児の段階で死亡します(Bcl-2ファミリーの働きの詳細については後述しています)。
このようにアポトーシスを制御するタンパク質を大量に作ったり、逆にその遺伝子を破壊してその影響を調べることで、アポトーシスを調節するメカ ニズムがだんだんと明らかになってきました。
表 Bcl -2ファミリー 哺乳類のもののみをあげた。この他、線虫Ced-9,Egl-1、 ゼノパスはxR1、xRII、 ウズラはNR-13、 ウィルスはBHRF1,LMW5-HL,ORF16,vBcl-2な どをもつ。遺伝子の配列が決定されていないものはcDNAの配列をリンクさせた。独自の判断でBRAG1とBNIP3/BNIP3Lは 加えていない。BH3サブファミリーには膜結合部位のある強力なもの(1)と膜結合部位のないもの(2)がある。
遺伝子名 その産物 (タンパク質)
機能 その他 bcl-2 Bcl-2α 抑 制 濾 胞性リンパ腫の病因遺伝子 bcl-x Bcl-xL 抑 制 おおよそどこでも発現しているが、脳に特に多い。
立 体構造 (RasMolで 閲覧)mcl1 Mcl-1 抑 制 マ クロファージ誘導遺伝子 A1(bfl1) A1(Bfl-1) 抑 制 GM -CSF誘導遺伝子 bcl-w Bcl-w 抑 制 精 子形成に重要 bax Baxα 促 進/抑 制 細胞の種類によって細胞死の抑制vs促進が変わるという bak bak 促進 /抑制 Bcl -xLとの結合像 (RasMolで 閲覧)。シグナルの種類によって細胞死の抑制vs促進が変わるという bok/mtd Bok/Mtd 促 進 成体では卵巣に多い diva Diva/Boo 促 進/抑 制 成体では生殖系に多い bcl-g Bcl-Gs/Bra
Bcl-GL促 進 成体では精巣に多い bcl-rambo Bcl-Rambo 促 進
bpr BCL2L12
harakiri Hrk/DP5 促 進 単BH3サブファミリー。誘導遺伝子 bik/nbk/blk Bik/Nbk/Blk 促 進 単BH3サブファミリー bad Bad 促 進 単BH3サブファミリー。Akt/PKCa/PAK1によってリン酸化されると無力化 bid Bid 促 進 細胞外からの細胞死誘導経路の補強
立体構造(1,2)bim Bim/Bod L,M,S 促 進 単BH3サブファミリー。日 頃細胞骨格タンパク質に結合しているがIL3除去で細胞骨格から遊離して作用。 bmf Bmf 促 進 単BH3サブファミリー。日 頃細胞骨格タンパク質に結合しているが細胞同士の結合がむりやり離されると細胞骨格から遊離して作用。 noxa/apr Noxa/APR 促 進 単BH3サブファミリー。誘導遺伝子 bbc3 Puma/Bbc3 α,β,γ,δ 促進 単BH3サブファミリー。誘導遺伝子。p53による細胞死に関与
| 他の参考HP | 内容 | リンク先 | 推奨 |
| Bcl-2ファ ミリーの構造と機能の総説。アポ トーシス全体もいい。 | HTML | J. Masuda-Robens | AA |
| Bcl-2ファミリー構造の概略。E.Whiteによる。ちょっ と古い。Bad,Bax, Bak以外はほぼ正しい。E1B19Kは疑問 | GIF | E.White | A |
| Bcl-2ファミリー構造の概略。C.B.McBrideによる。 ちょっと古いが詳しい。Bax,Bak,Bad以外はほぼ正しい | HTM | C.B.McBride | AA |
| より詳細なBcl- 2ファミリーのリスト(英語版)。研究者向け。BH3タンパク質など一部抜けている | HTM | ProWeb | A |
| よ り詳細なBcl-2ファミリーのリスト(英語版)。研究者向け | HTM | 猪原 | AA |
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線虫の仲間を 使っておもしろい実験がなされました。線虫ではわずかな1090個の細胞よりなりますが、神経もあれば口だってお尻だってあります。この生物にもきちんと 計画細胞死(131個の細胞死)があります。また、全遺伝子(ゲノム)の構造(塩基配列)が決 定され、実際に体の中で働いている遺伝子(mRNAといいます)のほとんどが発見されています。このシンプルなモデル生物で調べると、きっと最低 限必要な遺伝子が何かわかるでしょう。
解析の結果、3つの遺伝子が発見されました。細胞死を引き起こすのに必要なced-3, ced-4と 細胞死の抑制に必要なced-9で す。もしもこれらの遺伝子の変異すると細胞が死にすぎたり、逆に余分な細胞が出現します。
| 画像 | 内容 | リンク先 | 推奨 |
| 遺 伝子ced-3が壊れて余計な細胞が体にあるミュータントの線虫 | JPEG | Miguel's | 現在リンク切れ失礼 |
これらの遺伝子が作るタンパク質をヒトと比べてみると、Ced-3はプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の一種であるカスパーゼの仲間であり、Ced -4はCed-3の活性化因子の一種であることがわかりました。また、Ced -9はBcl-2の仲間でした。タンパク質は生命活動に必須な生体の主要な成分ですので、これを破壊するカスパーゼ Ced-3は細胞の処刑人といえます。Ced -4はCed-3に結合して活性化し、アポトーシスを誘発します。これに対してCed-9はCed-4に結合して、Ced-4がCed-3を活性 化するのを抑えます。
その後、ヒトのアポトーシスも基本的には類似の機構により制御されていることがわかりました。実際、ヒ トのBcl-2遺伝子を線虫に入れると部分的ではありますが、計画細胞死が抑えられます。ただ、人間の場合はもっと複雑です。10 種類以上のカスパーゼ、4種類以上のカスパーゼ活性化因子、10 種類以上のBcl-2の仲間(表参照)が知られています。それらの働きや存在する 組織が違っており、それ故に細胞死を肌理細かく制御できるのです。この他、ハエもカエルもヒトと同様であるらしく、細胞死を制御する機構は動物界に普遍的 に存在することが明らかになりました。
| 種類 | 線虫 | 哺乳類 | 推 奨 |
| カスパーゼ(タンパク質分解酵素) | Ced-3 | カスパーゼ1〜14 | A |
| カスパーゼ活性化因子 | Ced-4 | Apaf-1などの
Nod ファミリー, FADD, RAIDD |
A |
| カスパーゼ活性化因子阻害タンパク質 | Ced-9 | Bcl-2ファミリー | A |
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もう少し詳しく述べたいと思います。先に述べたようにカスパーゼはタンパク質を分解する酵素(プロテアーゼ)の一種です(一覧表はこちらをクリック)。 ヒトには約10-20 種類のカスパーゼが存在します。カスパーゼはやたらめたらとタンパク質を分解するのではなく、ある特定のタンパク質のみを認識して分解します。ま た、カスパーゼははじめ、タンパク質を分解できない状態(不活性状態といいます)として細胞内で合成され、アポトーシス誘導シグナルがきたときだけ活性化 されます。生きている細胞はこの不活性状態のカスパーゼを時限爆弾のように常にかかえて生きているのです。
では、どうやってカスパーゼは不活性状態を保つのでしょう。
細胞で合成されたばかりカスパーゼはその活性をすぐさま発揮できないようにするための活性抑制領域を持ちます。この前駆体の抑制領域が切断され たり構造変化を起こすと、カスパーゼは活性化されます。
カスパーゼ自体もタンパク質で、カスパーゼを切断できます。こうして、一旦、あるカスパーゼが活性化されると他のカスパーゼがそのカスパーゼに よって活性化される、という雪崩(カスケード)現象が起きます。きっかけは小さくても、効果は増幅されてドカーンというわけです。株価の暴落を見るようで す。
ヒトのカスパーゼ8,9,10は線虫のCed-3に相当し、アポ トーシス誘導シグナルに従って自分自身を切断し、活性化します(上位)。これに対して、カスパーゼ3,7,6な どは専ら、他のカスパーゼによって活性化されます(下位)。
それにしても、はじめのカスパーゼ(つまり8,9,10)はどのように活性化されるのでしょうか?
これらカスパーゼの前駆体は酵素活性や前述の活性抑制に必要な領域に加えて活性化に必要な領域を持っています。この活性調節領域が不活性状態の 維持や活性化に必要です。カスパーゼによって活性化される下位のカスパーゼの調節領域はちいさくて他の調節タンパク質が結合できませんが、カスパー ゼ8,9,10のもの(通称DED,CARD) は大きくてカスパーゼ活性化タンパク質(FADD/MORT1,RAIDD/CRAIDD,Apaf-1)に結合できます。
カスパーゼ活性化タンパク質はカスパーゼに結合するのに必要な領域をもち、その領域はカスパーゼの活性調節領域とよく似た構造をしています。例 えば、カスパーゼ9を活性化するApaf-1はカスパーゼ9の調節領域(CARD)とよく似た領域をもち、こ の領域を介して両者は結合します。
カスパーゼ活性化タンパク質はカスパーゼに結合するだけでは活性化しません。同タンパク質にはカスパーゼに結合する領域とは他に活性化に関与す る領域が存在します。この領域が存在することで受容体などからのシグナルに従ってカスパーゼを活性化できるのです。
| カスパーゼ活性化タンパ ク質 | 活性化されるカスパーゼ | 両者結合にかかわる調節領域の名前 | 多量体化領域 | 多量体化のシグナル | CARD/DED阻害タ ンパク質 |
| FADD(別名MORT1) | カスパーゼ8,10(ヒト) | DED | DD | 受容体 | vFLIP,cFLIPs(CLARP2),ARC |
| Apaf-1 | カスパーゼ9 | CARD | (d)ATPase | cyt-c | |
| RAIDD(別名CRADD) | カスパーゼ2(追試なし) | CARD | DD | 受容体(+TRADD/RIP) | ARC |
それでは、これらのタンパク質(FADD,RAIDD,Apaf-1)は具体的にはどのよ うな方法で上位のカスパーゼを活性化するのでしょうか?
実は上位のカスパーゼは弱いながら前駆体でもプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)活性が存在し、活性化タンパク質はこれを利用して活性化してい ると考えられています。カスパーゼと結合した活性化タンパク質はアポトーシス誘発のシグナルが来たときに、互いに集まります(ムズカシイ言葉で言えば多量体形成します)(1,2,3,4,5,6)。 たとえばFADDは死の受容体と似た構造(DD) が存在し、カスパーゼ8はFADDを介して死の受容体に結合します。シグナル分子によって受 容体が集められると、カスパーゼ8が活性化されるといった具合です(「きっかけ」参照)。同様にカスパーゼ9は結合 したApaf-1が集まると活性化されます。集 まったカスパーゼ8やカスパーゼ9は構造変化を起こして活性化型になります。
なお、これは別にアポトーシスにだけ見られる現象ではありません。細胞の増殖に関与する系にも同様のメカニズムによりキナーゼ(タンパク質りん 酸化酵素)が局所的に濃縮活性化されることが知られています(後述)。これは細胞内情報伝達における酵 素の近接活性化モデルと呼ばれています。受容体やカスパーゼの集合に関わるCARD,DED,DDの構 造は似ています。DDは細胞内で裏打ち集合しているア ンキリンや免疫活性化物質(インターロイキン,LPSなど)の刺激で集合するキ ナーゼとその調 節タンパク質にも存在し、広くこうした分子の多量体化形成に重要な役割を果たしています。
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アポトーシス抑制因子ARCは カスパーゼ活性化因子同様にCARDを 持っていてカスパーゼに結合できます。しかし、ARCは、FADDやRAIDDにあるカスパーゼの活性化に必 要な多量体形成ドメインであるDDが ないので、逆にアポトーシスを抑制してしまいます。またclarp遺 伝子からできるc-FLIPs(別 名CLARP-2, CASH(S), MRITβ1) はDEDのみをもち、やはりアポトーシスを抑制します。ウィルスの仲間にもアポトーシスを抑制するものがいます(後 述参照)。これらのウィルスはcFLIPsと構造が類似した、つまりDEDのみをもつタンパク質vFLIPを もっています。これらの原理もARCと同じで、アポトーシス活性化領域をこれらのタンパク質が欠いているためにこうなります。実際、人為的にDDのない FADDを大量に細胞内で作ると、アポトーシスは抑制されます。カスパーゼにとってARC, vFLIP, c-FLIPsはFADD,RAIDDの「おとり(decoy)」なのです。
| カスパーゼの詳細な一覧 | 私のサイト内にあるリスト。 研究者向け | A |
| カスパーゼの詳細な一覧 | ProWebにあるリスト。カス パーゼの研究者向け。他のリストもあり | A |
| タンパク質分解酵素の一覧 | MEROPS peptidase databaseにあるリスト。研究者向け。カスパーゼのリストも あり | A |
| カスパーゼ調節タンパク質の詳細な一覧 | 私の サイト内にあるリスト。遺伝子欠損マウスの結果も要約。研究者向け | A |
| カスパーゼの構造概略 | C.B.McBrideに よるカスパーゼの チュートリアルの中にある | AA |
| カスパー ゼの構造 | Criekingeによる(Birkbeck College) | B |
| カ スパーゼ1の立体構造 | Walker et al.,Wilson et al.(RasMolで 閲覧) | B |
| カ スパーゼ3の立体構造 | Rotonda et al,Mittl et al.(RasMolで 閲覧) | B |
| Caspase Gallery | G Jekelyのホームページ。カスパーゼの構造と機能を解説。上の構造だけ見てもよくわからない人はここで勉強できます。初心者向けにもうちょっ と踏み込んで解説してほしいです。 | AA |
| FADDのDED構造 | Eberstadt ら(1998) F25G F25Y | BB |
| RAIDDのCARD構造 | Chou ら(1998) | BB |
| Caspase 9/Apaf-1 CARD複合体の構造 | Qin ら(1999) | BB |
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だってそうでしょう?いつもカスパーゼが働いていたら細胞はバラバラになるわけですから、カスパーゼ活性化タンパク質の活性は、計画細胞死を引 き起こさなければならないような場合だけ活性化されなければならないはずです。
細胞は様々な死と生を制御する信号(シグナル)に対して応答してアポトーシスを起こします。
細胞は細胞の内側や表面に細胞死を誘導するシグナルに対してセンサーを持っています。前述のp53やCed-4/Apaf-1な どは細胞の中に存在するセンサーです。これに対して、細胞外からのシグナルをずっと細胞の表面で待っている物質もあります。膜受容体タンパク質の仲間です。
ヒトの場合、腫瘍壊死因子(TNF)とその仲間(FasLなど)は免疫系などの細胞から他の細胞に提示され、特定の細胞を殺します。死ぬ側の細胞にはTNF の仲間を受容するタンパク質(受容体)があります。この「死 の受容体」の仲間は細胞の外側にセンサーを付き出していてメッセージを受け取った時、細胞の内側に伝えるという役割をしています。TNF の仲間はいわば、伍 子胥のヒ首よろしく「死ね」というメッセージなのです(ARC参照)。
一方、細胞が生存するには「生きろ」という命令を他の細胞から受けることが必要です。例えば細胞間情報伝達物質が多くの細胞の生存に必要です。 この生存に必須な因子を欠いたとき、細胞はアポトーシスを引き起こします(Hrk参照)。生存を命令する因子にも 受容体が存在しています。このように通常、細胞の生死は他の細胞から「死ね」「生きろ」というシグナルによる調節を受けています。これにより個体としての 統合性を維持しているのです。
この死のシグナルの受容からカスパーゼの活性化の間には、センサーからカスパーゼへのシグナルを仲介・伝達する分子が存在します。
こうして、アポトーシスを引き起こす@きっかけ(シグナル受容)A伝達B実行段階でさまざまな因子が関連しており、アポトーシスを調節していま
す。Bcl-2ファミリー(Ced-9の仲間)もその中の一つなのです。これが線虫からヒトまでアポトーシスの基本であることを前述の線虫
の遺伝学とあわせて学びました。
| 細胞の生死を決定する因子がくる
↓ 受容体に結合する ↓ 情報伝達物質が仲介←調節タンパク質 ↓ カスパーゼが細胞を破壊 ↓ 細胞死 |
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細胞はカスパーゼ9で死んだり、カスパーゼ8で殺される
わけです。なお、カスパーゼ8の経路は動物のほか、ハエにもやや類似の経路がありますが、線虫では見つかっていません。
もう1つ差があります。
Caspase-8を活性化する代表的なものにTNF(腫瘍壊死因子)とその仲間FasL,TRAILがあり
ます。その受容体は死受容体(death
receptor)と呼ばれ、免疫系で重要な役割を果たしています。TNFは細菌や真菌などに感染したとき作られる情報伝達物質です。TNFはIL-1βと
ともに炎症反応を起こします、つまり、他の細胞(特に免疫細胞)に感染したことを教えてまわります。死受容体はNF-kBを中心とした転写
調節因子を介して免疫系の活性化を引き起こす細胞間情報伝達物質の合成を誘導します。NF-kBはTNFやIL-1β遺伝子の転写を引き起こしますので、
TNFやIL-1βは自分自身の合成を促進し、全身性の炎症、つまり全身で感染に対して守る反応を起こすことができます。一方、caspase-9は発生
段階での計画細胞死などがその代表例で、感染時のcaspase-8の活性化とことなり、炎症を起こすような細胞間情報伝達物質を作らないことがほとんど
です。
| 細胞の外から 細胞の中から
他の細胞からのシグナル分子提示 遺伝子の障害(紫外線、抗癌剤など)や |
経路 シグナル センサー 自己活性化上位カスパーゼ 高活性型下位カスパーゼ |
原則的にはこの二つのキャスパーゼ系(カスパーゼ8と9)はいろいろなシグナルで使い分けられているわけですが、完全にそうかというと、そうで はありません。死のシグナル伝達に関与する因子も細胞が合成し、その量はさまざまな内外の因子によってコントロールされているわけですから。
また、この二つの系(カスパーゼ8と9)は必ずしもいつも並列というわけではありません。カスパーゼ8を含む死受容体系の蛋白質が比較的少ない
細胞でも細胞外からの死のシグナルに応答して細胞死を引き起こすことができます。これはカスパーゼ8の系を補完的にカスパーゼ9系が助けているためと推定
されています。その中心的な役割をなすと目されてきたのが単BH3蛋白質(後述)のBidで
す。Bidは通常細胞質に低活性型として存在しますが、一旦カ
スパーゼ8によって切断されると膜に移行してBcl
-xLとたいへんよく結合・拮抗するようになります。チトクロームcがミトコンドリアから流出して、カスパーゼ9が活性化されます。ただ、現在で
はBidは他
のcaspaseで切断されることが多いこと、caspase
で切断されなくても細胞死誘導することから、
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前述のようにTNFの仲間(FasLなど)にはアポトーシスを誘発するものがあります。細胞の表面にあってこれらと結合する受容体(い わゆる「死の受容体」)は、細胞の外側と内側に、センサー部分(リガンド結合部位といいます)と細胞内因子と結合できる領域をそれぞれ突き 出しています。後者はDD (死のドメイン)と呼ばれていて、FADD(別 名MORT1) などのDDをもつ細胞内タンパク質と結合します。ちょうどカスパーゼとカスパーゼ活性化タンパク質が互いに類似した構造部分(CARD,DED)で結合す るのと同じです。実際、機能だけではなくDDとCARD,DEDは構造が類似しています。
| DDタンパク質の詳細な一覧 | 研究者向け | A |
| TNFファミリーとその受容体の詳細な一覧 | 研究者向け | A |
さて、まず死の受容体はFADDまたはTRADDと いったDDを持つタンパク質が結合します。FADDは直接的にカ スパーゼ8(別名FLICE/MACH1/Mch5), -10(Mch4)に結合できます。TRADDにはカスパーゼに結合する領域が存在しませんが、DDを介して第二のDDタンパク質FADDやRIP、 RIPには第三のDDタンパク質RAIDD(別 名CRADD)が結合すると言われています。RAIDDはCARDを持っており、カスパーゼ2に直接結合して活性化を促進すると言われてい ます。受容体がシグナル分子(リガンド)に結合すると受容体,DDタンパク質,カスパーゼが集まって、その結果カスパーゼが活性化されます。我々の発見し たタンパク質CLARP(別 名Casper, I-FLICE, cFLIP, FLAME-1, CASH, MRIT) もカスパーゼ8の活性化を調節します。
アポトーシス抑制因子ARCは カスパーゼ2,8と結合するCARDを 持っているのですが、カスパーゼの活性化に必要な多量体形成ドメインであるDDが ないので、逆にアポトーシスを抑制してしまいます。ARCはアポトーシス促進因子であるRAIDDのDDが失われたようなものです。 RAIDD's失われたARC。死の命令に対して完全と立ち向かうARC。細胞が死のシグナルを受けた後も聖戦を続ける戦士ARC、がんば れARC!(注:「レー ダース/失われたアーク」とはいっさい関係ございません)。
| 死の細胞外シグナル分子[FasL]が提示される
↓ 細胞の表面で「死の領域(DD)」をもつ受容体[Fas]で情報を受ける ↓ 「死の領域(DD)」と「死執行領域(DED)」をもつ情報仲介物質FADDに伝わる 「死執行領域(DED)」をもつタンパク質分解酵素[カスパーゼ8]が働きはじめる ↓ 他のカスパーゼが活性化されて雪崩式に効果を増幅する ↓ 細胞を構築するタンパク質などが分解される ↓ 細胞死 |
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Hrkの遺伝子は先に述べたヘレンさんの細胞(HeLa)から単離 されました。この遺伝子を細胞に導入したところ細胞が死にました。細胞の死に方にも種類があることは以前述べましたが、Hrkは図のようにアポトーシスを引き起こします。まず、はじめに細胞が丸く小さくなりやがて細切れになり、12時間後には細 胞の死骸は土左衛門のごとく培地に漂うようになります。その過程で核が凝縮しますので、核を染色すると図のように一際明るく見えます。
| A | B |
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もっと余談をすると切腹は例え内臓をかき出しても早々には死なないので、中世戦国時代には武士の心意気を示す最後の手段として一般化しました。 いづれは死ぬのだから介錯人は本来要らないわけです。介錯人は最後の見苦しさを断ち切ることを目的にしていますので、もっとも親しかった者が行いました。 ところが江戸時代に入って世も平和になると名誉な刑罰の一種となり、様相も変わりました。本来腹を切るはずの懐刀も木刀になり、介錯人による「首切り」が 直接的死因になります。また、切腹人も独自の意志で自殺するのではなく、また自由な切腹も認められなくなります。ハラキリによる死は厳密に調節されるとと もにこれを支える多くのシステムができます。最終的には切腹人の生死は主君が制御しており、その伝使がその情報を伝えます。日取りが決まると見取役、介錯 人等がそろって初めて切腹を開始します。時代は移っても介錯人は生死に密接な関係にあるので切腹人が特異的に選択しました。ハラキリによる死は他の刑死と 異なり、一般と同様の葬式が行われることが多かったようで、形式的にもあきらかに他の死と異なります。もちろん、悪どい支配者によってハラキリは都合の悪 い者や役にたたなくなった者を除いたり、余分な者の口減らしに利用されました。(森鴎外「阿部一族」参照。映画 はこちら)
はじめ我々はBcl-2に結合するタンパク質としてHrkを単離したんですが、女の子がBcl-2と 双子の兄弟であるBcl-xLに 結合するタンパク質も独立に単離して調べたところ、Hrkと同一でした。女の子はがっくり でしたが、Bcl-xLはBcl-2と同様に細胞死を抑制しますので話がかみあいます。またHrkはBax, Bakな どの細胞の殺し屋とは結合しません。
遺伝子を解析したところ、Hrkは小さなタンパク質でした(下図A)。どうしてこんな小さなタンパク質が細胞を自殺に追いやれるのでしょうか。
そのころ同じ部屋でア
メリカ人と中
国人の二人がBaxを研究していたので、何度も研究について議論しているうちに重
要な構造は覚えてしまいました。タ
ンパク質は20種類のアミノ酸が一列に並んでいる構造をしているんです。それで、タンパク質のアミノ酸配列は通常SECLRR
IGDELDSNMEL QRMIADというような1アミノ酸1文字で表しますが、Baxの場合約
200文字と短く覚えやすかったわけです。ふと、自分のHrkを見ると図のようなBaxやその他の殺し屋タンパク質と同じ配列があるのに気づきま
した(下図B)。こうしてコンピュータによる相同性検
索は完全でないことを改めて痛感させられました。今では新規タンパク質が見つかる度にアミノ酸配列をワープロのマクロを使ってその性質に合わせて
色をアミノ酸の文字につけて一日モニターに表示して眺めることにしています。
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「反対の反対は賛成だよー」
細胞死誘発の阻害を阻害するらしいです。この機構は線虫からヒトまで保存されており、Ced-9(Bcl -2・Bcl-xLの仲間)はCed-4(Apaf-1の仲間)に結合してCED3(カ スパーゼ)の活性化を阻害し、Egl-1(Hrk の仲間、BH3タンパク質)はCed -4とCed-9の結合を阻害することでCed-9の阻害作用を阻害します(「死ぬのは人も 虫もいっしょ」参照)。
線虫にはアポトーシスが起きにくくなった変異体がいます。このうちの一つはCed-9の 変異体です。この変異体はEgl-1とCed-4の推定結合部位の境目の構造が変わっており、このため、Egl -1の結合が弱くなるとともに、Egl-1が結合してもCed-4がこの変異Ced-9からはずれなくなります。こ のことは単BH3タンパク質であるEgl-1がCed-9に結合してCed-4を放出することが大変重要であ ることを明瞭に示しています。
最近の研究から、実は単BH3タンパク質の一種Badは 細胞生存を促進するシグナルで阻害されることが明らかになりました。また、神経成長因子(NGF)がないと神経細胞は死にますが、こ のときHrkが合成されます。Bimはインターロイキン3(IL-3)があるとき、働けないように細胞骨格蛋白質にしばりつけられ ています。これらを考え合わせると、細胞生存因子は「アポトーシス促進因子を阻害する因子を阻害している因子の働 きを阻害している」といえます。
「賛成の反対の反対の反対は反対だよー」
以前Bcl-2ファミリーの一覧表にあげたように各Bcl-2ファミリーのメン
バーは機能は似通っているものの、異なったシグナルに応答したり、仲介したりします。このことにより、さまざまなシグナルがBcl-2ファミリーを介して
アポトーシスの根幹部であるカスパーゼとその活性化因子に結び付けられているのです。
| 生存因子(インターロイキン,神経成長因子など) ○
↓阻害または転写抑制[ces] BH3タンパク質(Bad,Hrk/DP5,Bimなど) [Egl-1] × ↓阻害 Bcl-xL, Bcl-2 [Ced-9] ○ ↓阻害 Apaf-1 [Ced-4] × ↓促進 カスパーゼ9 [Ced-3] × ↓促進 カスパーゼ3 × ↓ 細胞を構築するタンパク質の分解 ↓ 核・細胞質の断片化、遺伝子の分解、細胞膜構造の破壊 |
単BH3蛋白質には、転写制御によるもの(Hrk,
Egl-1)、
リン酸化によって直接的(Bad)、
間接的(Bim)
制御を受けるもの、カスパーゼで活性化されるもの(Bid)
とさまざまですが(後述)、総じて言えるのは、これらがアポトーシス抑制性のBcl-2ファミリーの一員のどれ
かと結合・拮抗できることです。Bad, Bak
とBcl-xLの複合体の解析から、BH3はBcl-xLのBH1・BH3領域などで形成される疎水性のボケットに結合することがわかりました。
BH3がこの領域に結合するともはやBcl
-xLはCed-4ファミリーと結合することはできません。
| 関連項目 | 関連リンクの説明 | リンク先 | 推 奨 |
| DP5 | マウスHrk、別名DP5のホームページ。DP5の研究の歴史がよくまとめられている | 福島県 立医科大学 生体情報伝達研究所 細胞科学研究部門内 | A |
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次にBcl-2ファミリーの生理的な役割について述べます。下流の因子であるApaf-1,Caspase-9,下位カスパーゼといった基幹となる因子がだいたいどこでもいつでもあるのに対して、Bcl -2ファミリータンパク質の量や活性は様々なシグナルによって調節されています。別の言い方をすると、恒常的に存在する下流の因子であるApaf-1, Caspase-9,下位カスパーゼといった基幹部分と上流の細胞の生死を決定するシグナルとを結びつける役割を果たしていると言えます。個別のBcl- 2ファミリータンパク質の量や活性を調節する因子はそれぞれ異なっており、この多様性ゆえに生命は細胞の生死を肌理細かく調節することができるのです。
現在までにbcl-2,bcl-x,bcl-w,A1,bax,bak,bad,bim,bid,mcl1を 欠くマウスが作られて、発生段階における役割を中心に解析されています。bcl-xとmcl1欠 損マウスが胚発生段階で致死となる他は、仔ホモ接合体マウスが得られます。bcl-2の 欠損マウスは成熟TおよびBリンパ球、発生段階での腎細胞やメラノサイトなどのアポトーシスが増進することから、Bcl-2はこれらの細胞の生存に重要で あると考えられます。bcl-x欠損マウスでは神経系や造血系などの細胞でアポトーシスが増進していました。bcl-x欠 損キメラマウスでは未熟BおよびTリンパ球が半減しますが、bim欠 損マウスは未熟BおよびTリンパ球の蓄積しますので、両遺伝子が未熟リンパ球の生存に対して拮抗的に働いているようです。実際Bcl-2を余分に 作るマウスやBimを欠いたマウスでは、本来ならなくなる自 分自身を攻撃するリンパ球が死なず、自己免疫疾患を起こしてしまいます。bak,baxは生理的な役割がオーバーラップしており、両遺伝子を共に 欠くとき、様々な異常が生じます。Apaf-1の ないマウスのように指の間の細胞がアポトーシスを起さないので、水かきをもったネズミになってしまいます。p53依存性、ERストレスや成長因子除去によ るアポトーシスもなくなり、bax,bakがこれらのアポトーシスに重要であることがわかりました。以前、述べたように p53は遺伝子の傷ついた細胞でアポトーシスをおこして、癌になるのを防いでいますが、実際、baxを欠くマウスでは癌 になりやすくなり、MMP+大腸アデノカルシノーマで実に半 分はBax遺伝子が壊れています。ただ、神経ではbaxとbakの両方を欠いても細胞死が若干抑制されますが、 caspase-9やApaf-1ほど劇的ではないので、神経などで重要な役割を果たしているアポトーシス誘導因子がいるみたいです。
Bcl-2ファミリータンパク質を欠くマウスを調べてみると、アポトーシスが予想外に精子や卵子を作るのに重要な 役割を果たしていることがわかりました。精子形成の過程では精原細胞の多くがア ポトーシスを起こします。この時期にどうしてアポトーシスが必要なのかよくわかりませんが、正常な精子を作るのに必須の役割を果たしています。bcl-w欠 損マウスでは精巣における精原細胞のアポトーシスが促進されていて、bcl-wは精子形成のごく初期の過程でのアポトーシス抑制に 重要な役割を果たしていると考えられます。また、アポトーシスを起こす時期の精原細胞ではBaxの 強い発現が認められ、bax欠 損マウスは正常な精子ができません。Divaは さらに後期の精母細胞において特異的に発現していますが、この生理的役割もまだわかっていません。一方、卵巣でもアポトーシスは卵子を作るのに大切です。 卵母細胞のうち、排卵されるのはごく一部であり、ほとんどは周りの顆粒膜細胞とともにアポトーシスを起こします。卵巣顆粒膜細胞ではBax、Bok(別 名Mtd)、Diva(別 名Boo) が強く発現しています。bax欠 損マウスでは本来死滅すべき濾胞細胞のアポトーシスが抑制されていますので、濾胞細胞の細胞死の調節にこれらのアポトーシス促進性Bcl-2ファ ミリーが関わっているらしいです。まだまだ調なければならないことが多そうです。
Bcl-2ファミリータンパク質の活性調節にはいくつかの方法があります。
第一の調節機構は量的な調節です。
タンパク質の量を決める重要な段階の一つは、遺伝子DNAからmRNAができる過程(転写といいます)です。血球系細胞は他の細胞から与えられるインターロイキンなどの生存因子 がなければアポトーシスを起こします。この生存因子の制御する転写調節因子によってアポトーシスを抑えるBcl-2ファミリータンパク質の量は調節されて います。bcl-2はIL-2,-4お よび-7な ど、bcl-xはIL-3,エ リスロポイエチンなど、mcl1とa1はGM-CSFな どによってmRNAの量があがります。bcl-xの場合、これらのシグナル分子は転写調節因子STAT ファミリーによって調節されています。実際、STAT5 を欠いたマウスではbcl-xの発現がなくなり、アポトーシスが起きます。
また、Bcl-2とその仲間がアポトーシスを調節している場所は、その種類で異なっています。こうしたBcl-2ファミリーの持ち場分担ができ る1つの理由は、Bcl-2ファミリーが、その働く組織や時期にだけ存在するように転写調節されているためです。bcl-2の場合、成熟T リンパ球で重要な役割を果たす転写調節因子NF-AT4に よって、bcl-xはさらに造血に重要な転写調節因子GATA-1に より転写調節を受けています。
A1の発現は炎症系のサイトカインやバクテリアリポ多糖(LPS)でも誘導されますが、これは転写調節因子NF-kB(調 節機構は後述)の活性化によるものです。NF-kBの活性化はときにアポトーシスを抑制しますが、A1の研究者はこの効果がA1によるものであると考えて います。
単BH3タンパク質の中にも転写がその活性調節に重要な役割を果たしているものがあります。
モデル系として使われてきた線虫では、体ができる途中でアポトーシスがおきますが、抗アポトーシスBcl-2ファミリータンパク質であるCED9が 恒常的に発現しているのに対して、単BH3タンパク質Egl-1が 組織・時期・性 特異的に発現してアポトーシスを誘導します。
ヒトの単BH3タンパク質ハラキリ(Hrk) やBimは、 アポトーシス抑制性Bcl-2ファミリータンパク質と全く反対の挙動を示します。つまり生 存因子の除去すると誘導される遺伝子です。
| 遺伝子名 | 機能 | 転写調節 | 上流調節因子 | 考えられる生理的役割 |
| bcl-2 | 抑 制 | Aiolos, Myb, Brn-3a, p53, Bcl-6, NFAT4, PAX8, RAR/RXR, WT1, PU.1, Pi1, STAT3, CREB, GATA-1, SP1/ER | ILs, G-CSF(-), EGF, TGF(反 対),IGF-I, 女 性ホルモン, NGF | リンパ球やメラノサイトなどの成熟に伴う細胞死抑制。生存因子依存的な未熟細胞の細胞死抑制? |
| bcl-x | 抑 制 | GATA-1, Ets2, NF-kB, Bcl-6, STAT3, STAT5A&B | Epo, IL3, CD40, EGF, GM-CSF(反 対), TGF, 女 性ホルモン, | 神経系や造血系などの成熟に伴う細胞死抑制。生存因子依存性細胞死抑制 |
| mcl-1 | 抑 制 | SRF/Elk-1, CREB | GM-CSF, DNA 傷害, IL3, gonadotropins | マクロファージ系の成熟に伴う細胞死抑制 |
| A1/bfl-1 | 抑 制 | NF-kB, STATs | GM-CSF, LPS, CD40 | マクロファージ系の成熟に伴う細胞死抑制。NF-kB活性化によるアポトーシス抑制? |
| bcl-w | 抑 制 | 雄性生殖細胞の成熟に伴う細胞死抑制 | ||
| bax | 促 進/抑 制 | p53(反 対) | G-CSF, IL1 | p53応答性細胞死。細胞死増強。生殖細胞の細胞死による選択 |
| bak | 促進 /抑制 | p53 | p53応答性細胞死。細胞死増強。 | |
| bok/mtd | 促 進 | 生殖細胞系のアポトーシス調節? | ||
| diva/boo | 促 進/抑 制 | 生殖細胞系のアポトーシス調節?NF-kB活性化によるアポトーシス抑制? | ||
| harakiri | 促 進 | NGF/IL3除 去,β アミロイド | 神経、造血系統の未熟・異常細胞のアポトーシス誘導? | |
| bik/nbk/blk(1) | 促 進 | ? | ||
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精巣でのアポトーシス調節? | ||
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促 進 | 成長因子,女 性ホルモン | 造血系の未熟細胞のアポトーシス誘導補完? | |
| bid | 促 進 | Caspase-8 | Death Receptor系による細胞死誘導の補完 | |
| bim | 促 進 | ILs | 造血系統の未熟細胞の生存因子依存性アポトーシス誘導。自己免疫リンパ球の除去 | |
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| EGL1(線 虫) |
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HSNニューロンの除去など |
第二の調節機構は修飾によるものです。
単BH3タンパク質Bidは 細胞外からのアポトーシス誘導を補完・増強する役割を果たしていますが、細胞外からのシグナルによって活性化されたCaspase-8はBidを切断し、 活性化します(前述)。また、単BH3タンパク質Badは 日頃リン酸化を受けており、生存因子の除去によってリン酸化されなくなると、Bcl-xLに結合できるようになり、アポトーシスを促進でき るようになります。Bimは通常細胞骨格タンパク質に結合していますが、生存因子が除去されるとこ れから離れてアポトーシスを誘導します。これは細胞骨格タンパク質の修飾によるものと推定されています。同様の調節機構が、細胞接着阻害による細 胞死(アノイキス)誘導に関与することが示唆されているBmfに ついてもいえます。ただ、bad,bidい づれの遺伝子を欠いてもマウスは見た目正常に大きくなりますので、これらの因子が生理的にどんな役割を果たしているのか、は今後の解析で明らかになること でしょう。
修飾による調節を受けるBcl-2ファミリータンパク質はHrkやBcl-xLのようにりっぱな膜結合部位を持っておらず、アポトーシス誘導シ グナルがない状態では通常細胞質に存在します。一旦活性化されるとミトコンドリアに移動し、機能できます。この点では以下の第三のグループのBaxや Bakとよく似ています。また、概してこれらのタンパク質は、頭(N末端側)に調節領域を、中央にBH3ドメインを、しっぽ(C末端)に膜相互作用領域を もつという点でも第三のグループと類似します。
第三の調節機構は立体構造変化によるものです。
Bax,Bakなどは分子内構造変化が重要です。rat Bcl-xLの結晶化の際に論じたことですが、いづれもBH1からBH4まで4つの保存された領域を持ちます。特に BH4とその下流に続く領域がアポトーシスを抑制するか促進するかにたいへん重要な役割を持っています。Bcl -xLの構造を良く見てみると自身のBH3はBH4によってブロックされ、、他のBcl-2ファミリーと結合できないようになっています。その結 合はイオン性結合と疎水性相互作用に大いに依存しており、こ れらの結合はBaxやBakの構造上にも認められます(下図)。したがってこれらの因子も、もしもBH3がBH4で完全にブロックされているなら アポトーシス抑制性のBcl-2ファミリーと相互作用できず、むしろBcl-2同様にアポトーシスを抑制することができる可能性があります。実際、 Bax,Bakはアポトーシスを促進するという報告がある一方で、あ る種のシグナルや細 胞ではアポトーシスを抑制することができます。しかし、一旦、アポトーシスを誘発するシグナルを受けるとBaxやBak のBH4領域の構造が変化します。逆にBcl-2,Bcl-xLでも過 剰に発現させたり、BH4を除いたり、その下流の領域をリ ン酸化したり、カ スパーゼで切断するとアポトーシス抑制機能が落ちたり、アポトーシスを促進するようになります。このようにBH4とそれに続くフレキシブル な領域はBcl-2ファミリー間の相互作用の調節に重要であり、それによりアポトーシス抑制・促進のスイッチングの役割を果たしているものと推定 されます。Baxの構造が決定さ れて、さらにどれだけドメインが動きやすいかがわかると(NH-NOE)、BaxのBH4の重要性がより明確になってきました。
また、以前BH3しかもたないと考えられていたBidも Bcl-xLとよ く似たドメイン構造を持つことがわかりました。つまりBidのBH3ドメインはBH4ドメインに対応するαヘリックスの疎水面によってブ ロックされており、その下流でCaspase 8で切断されることによりBcl -xLとより強く結合できるようになったり、ミ トコンドリアへ結合できるようになります。
Bcl-xLやBidなどのBcl-2ファミリーには、BH3領域の下流、ちょうどタンパク質の中心部に疎水的な、つまり膜やタンパク質の疎水面に結合し やすいようなαヘリックスがあって、BH4/BH3(と似た)領域に構造変化を起こした場合、膜 やタンパク質に疎水面を介して接触できる領域があって、その重 要性が示唆されていますが、今のところ、生理的な意味合いを示す決定的なデータは報告されていません。同様に、BaxにおいてもBH3ドメインが 露出するためには、つまり多量体化するには、たいへん大きな構造変化を伴い、こうした変化が起きたときにはBaxタンパク質の疎水部の配置が大きく変わる ものと考えられます。もともと中央部にある疎水部がまだ個々のBaxの中央にとどまるのか、それとも膜のような疎水的なものへと組みこまれていくのか、今 後の研究のまたれるところです。
BH4の構造と機能 A)多量体化ドメインBH3とその調節ドメインBH4のアミノ酸配列。Bcl-xLのBH3のD95とBH4のK16を矢印で示した。B) Bcl-xLのD95にK16とY15が結合している様子。 A B
閑談 -Bcl-xLの結晶化用大量精製の舞台裏- Bcl -xLの結晶化用大量精製の舞台裏
実は私、一度も大腸菌大量培養装置(ファーメンタ)を使ったことがないんです。そんなもんで、2リットルの普通のフラスコ10数本 ゆすって10リットル単位で大腸菌を集めました。10本もゆすれる恒温シェイカーが当初なかったので、室温で揺すりました。でも夏だったんでシェイカーの モーターで部屋がムンムン、35-37℃という至適条件となりました。連続遠心ローターも使ったことがないので400mlずつせこせこと遠心沈殿させまし た。そのうち、大学を移ったところ、精製用HPLCがありませんでした。そこで、アミノ酸分析用のHPLCを改造しました。幸い、アミノ酸分析用オートサ ンプラーがあったので、ゲルろ過カラムの容量の小ささを回数でカバーしました。ゲルろ過は2日がかりで10-15回(1回アプライ量おおよそ2mg)繰り 返しました。このタンパク質はどうも凍結融解でダメになるようなので当初3日ほど睡眠時間0−3時間程度での調製となりました。
なお、ショウジョウバエにおいてはRpr(reaper)ファミリーが単BH3タンパク質と同様の働きを担ってい ます。RprはEgl1,Hrkタイプで、細胞死誘導因子により誘導されます。これに対してHidはBimタイプで、だいた いいつも発現しており、細胞死誘導因子により、ミトコンドリアへ移動します。
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Bcl-2と同じぐらい昔に見つかって長い間アポトーシス調節の機構のわからなかった因子があります。IAP(アポトーシス阻害タンパク質の略)で す。IAPははじめバキュロウィルスという昆虫のウィルスの一種で発見され、その後、細胞もよく似たタンパク質をもつこと、ユ ビキチン化と密接な関係にあることがわかりました。ユビキチンは特定のタンパク質を壊すのに使われます。
「このタンパク質、壊しといてね」
E3と呼ばれる因 子は壊すべきタンパク質を見分けて、E2と 呼ばれる因子が壊されるタンパク質にユビキチンという名のラベルを貼ります(ユビキチン化といいます)。ユビキチンのついたタンパク質はプロテアソームと呼ばれるタンパク質分解装置 によって壊されます。
一覧表 IAPの詳細な一覧 研究者向け。BIRの項目を見てください A TRAFの詳細な一覧 研究者向け。TRAFの項目を見てください A RINGタンパク質の詳細な一覧 研究者向け A
IAP はアポトーシスに強く影響を与えるE3の一種で、BIRと呼ばれる様々なタンパク質に結合するドメインとZn フィンガードメインの一種RINGド メインからなります。ヒトの場合、XIAP(別名ILP,MIHA),cIAP1(別名IAP2,MIHB,API1),cIAP2(別 名IAP1,MIHC,API2)などが存在します。こうした典型的なIAP他、RINGを持たないBIRタンパク質であるsurvivin,NIAP やBRUCE(別名apollon)をもち、広義にはこれらBIRタンパク質もIAPと呼ばれています。最近、DIABLO(別 名SMAC) と呼ばれるタンパク質に結合したXIAPのBIRの三 次構造が決定され、BIRは4アミノ酸残基のみ,しかもプロセシングされたタンパク質の頭(N末端)のみを認識することが明らかになりました。 RINGドメインはタンパク質に結合するドメインの一種で、IAPの他、細胞伝達物質(PDGFなど)の受容体の機能を抑えるc-CBL、 IκBのユビキチン化で始まるNF-κB活性化に関与するTRAF、p53の調節因子Mdm2な どに存在します。これらの因子はIAPのBIRと同様に比較的短い配列を認識する他のタンパク質結合ドメインを持ちます。RINGは結合相 手であるE2とこれらのドメインの結合した基質の橋渡しをするものと考えられます。IAPファミリーの一つBRUCE(別 名apollon) ではRINGがない変わりにE2と同じ構造をもっています。
c-CBLがリン酸化された活性化されたタンパク質を基質にするのに対して、IAPはプロセシングされたタンパク質のみをBIR で認識して基質にします。つまり、c-CBLがリン酸化によって活性化されるような情報伝達系を抑えるのに対して、IAPはプロセシングで活性化されるよ うな情報伝達系に対して抑制的に働くわけです。プロセシングで活性化されるといえば・・・そう、caspaseです。caspase-3,7(ショ ウジョウバエではDRONC) はプロセシングされることでIAPに結合できるN末端配列ができます。これを認識してIAPが結合し、ユビキチン化を起こします。
さらに上流の因子も基質である可能性があります。また、単BH3タンパク質の一種でやはりプロセシングによって活性が調節されているBidも ユビキチン化を受けていることが知られています。ショウジョウバエDIAP1,2ではrpr ファミリーにも結合します。IAPは細胞の運命を決めるぎりぎりのところで働いているのです。このIAPや他のユビキチン化系によるアポ トーシス調節の生理的な意義ははっきりしませんが、「生と死の閾値」・・・即ち、どの程度までカスパーゼが活性化されると細胞が死ぬかといったことと関連 していると考える人もいます。この場合、IAPの作用点はアポトーシス誘導経路のもっとも下流にあたるのだけれども細胞の運命を変えるようなきっかけを与 えるのではなく、死にやすい、とか、死ににくい、といった環境づつりといったところでしょうか。cIAP1とcIAP2は炎 症系の転写調節因子であるNF -κB(後述)の活性化によって大量に誘導されるタンパク質であり(一 次元電気泳動で見えるぐらい!)、NF-κB活性化時には細胞が死ににくいという現象と関係している可能性が指摘されています。
なお、全てのBIRタンパク質の基質がアポトーシス調節因子だけかというと・・・必ずしもそうではないようです。というのは線虫のBIR タンパク質は細胞質分裂に関与することから、細胞質分裂に関与する因子を認識すると考えられるからです。動物のIAP同様にBIRをもつタンパク 質は酵 母にも存在し、細 胞分裂に重要な働きを果たしています。線虫でも同様です。高等動物においてもBIRタンパク質の一種survivinが同 様の機能を果たしているらしいことが明らかになっています。このことから、BIRの結合相手は必ずしもアポトーシス調節因子でない可能性も残って います。実際、c-IAP1,2はTRAF の結合因子として発見された経緯があります。今後、IAPの基質のうち、もっとも重要なのはどれなのか徐々に明らかになることでしょう。
| 関連項目 | 関連リンクの説明 | 推奨 |
| カ スパーゼ3/XIAP(BIR)複合体の構造 | カ スパーゼ3,7と結合したXIAPのBIRドメインの構造が決定されている。RINGもいれてほしい! | AA |
| Diablo に結合したBIRの構造 | XIAPがどのようにペプチドを認識するかはっきりと示した最初のもの | AA |
| cIAP1 のBIRの構造 | ちなみにcIAP1は本当に生理的条件下でカスパーゼ活性を抑制する? | A |
| Survivin の構造 | ちなみにsurvivinは本当に生理的条件下でアポトーシスを抑制する? | A |
| 総説 | RINGとユビキチン化に関する優れた総説 | AAA |
なお、ユビキチンによる標識はタンパク質の分解だけに使われるのではなく、そのタンパク質の機能を調節するために使われることが あります。たとえば、転写や膜小胞の仕分け(ソーティング)などでは、その中心的な役割を果たすタンパク質がユビキチン化されることで調節されています。 ユビキチンにはSUMO,ISG15といったタンパク質の仲間があり、同様に調節的な役割を果たしています。ですから、ユビ キチン化は IAPにようにアポトーシスの実行分子の分解を促進することによりアポトーシスを阻害するだけではなく、こうした調節的な役割を介してアポトーシスに影響 を与えることもあります。アポトーシスの中心的な転写調節因子であるp53はmdm2などのE3によってユビキチン化され、調節されています。
遺伝子が傷ついたとき、p53自身の合成が更新するとともにユビキチン依存性の分解が抑制されます。また、ウィルスに感染するとp53が働い て、ウィルスが増えないように細胞を増えなくしたり、アポトーシスをおこすようにします。E3がユビキチンをターゲットにつけることによってその分解のた めの標識や分解や働きを制御するのに対して、逆にユビキチンをはずすものもあります。USPで す。E3と同じように、USPもユビキチン化された、しかも特定のターゲットを認識するためのドメインを持ちます。たとえ ば、E3であると考えられるTRAFがMATHと呼ばれるドメインを持ちますが、USP7(HAUSP)もMATHを持っており、ユビキチン化されたp53 からユビキチンを除きます。これに対していくつかのウィルスは逆にUSP7 に結合するタンパク質を持っており、うまく自分の増殖に役立てています。
E3やUBPの中にはE3をターゲットにするものもいくつか知られています。TRAFはCYLD というUBPでユビキチン化をはずされますし、ショウジョウバエのDIAP1はMorgueと 呼ばれるE3でユビキチン化されます。ユビキチン化は情報伝達系の代表的なタグであるリン酸化と同様に、ユビキチン化カスケードともいえる べき複雑できめの細かい情報伝達系を構築しているのです。
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この過程でDFF(DNA
断片化因子)と呼ばれる蛋白質が関与しています。DFFは、DFF45(別
名ICAD)
とDFF40(別
名CAD,CPAN)
という2つのタンパク質からできています。DFFは細胞内に常日頃から存在し、この状態では遺伝子を破壊することはできません。カ
スパーゼでDFF45が分解されるとDFF40はDNA分解酵素(DNase)として働くようになります。つまり、調節サブユニットDFF45は
通常、DFF40の働きを抑制しており、DFF45がアポトーシスのシグナルで活性化されたカスパーゼによって分解されて初めてDFF40
はDNase活性を発揮できるのです。
DFF40とDFF45はアポトーシス誘導タンパク質であるCIDE サブファミリー(CIDE-A,CIDE-B,Fsp27)と似た配列(CIDE-Nド メイン)をアミノ末端側に持ち、CIDE/DFFファミリーに属します。DFF40はC 末端側にDNaseドメインを持ち、N末端側のCIDE-Nドメインに よって活性が調節されています。調節サブユニットDFF45はこのCIDE-Nドメインに結合してDFF40のCIDE-N ドメインがDNaseドメインを活性化しないようにしています。この機構は、ショウジョウバエにもDFF30・DFF45とそれぞれ相同なタンパク質DREP4(別 名dCAD),DREP1(別 名dICAD) などが存在していることから、ヒトからハエまでかなり普遍的なものであるといえます。ただ、ショウジョウバエにはDREP1の 他にDREP2,DREP3が 存在し、互いに相互作用しますので、Caspaseによる切断以外にもショウジョウバエDFFのDNA分解活性を調節するシグナルがあるのかも知れませ ん。
DNAは細胞自身の生命の設計図ですが、感染症のときには、壊 れた細菌から流れ出たDNAは免疫細胞を活性化します。ですから、自分のDNAを消化しておかなければ、外来の敵のDNAと間違って免疫応答を起 こすというやっかいなことがおきます。実際、DFFとDNaseIIを欠くマ ウスも、ハ エも免疫系がおかしくなってしまいます。
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DFF40がDNaseドメインをもつ一方、CIDEサブファミリーはC末端にアポトーシス誘導に 必須なCIDE -Cドメインを持っています。CIDE-Cドメインの 機能もCIDE-Nドメインによって調節されています。DFF45存 在下でCIDEによるアポトーシスは阻害されますが、CIDE-Nドメインのない変異CIDEタンパク質はも はや阻害を受けません。
このようにCIDEとDFFは構造も調節機構も似ているものの、機能ドメインが全く異なっています。活性化されたDFFは遺伝子DNAの分解の みならず、核 の凝縮といった形態変化をも引き起こしますが、膜構造破壊などを引き起こすことはありません。一方、CIDEはミトコンドリアに局在してBcl- 2ファミリーのBH3サブファミリー(Hrkなど)による細胞死と全く区別のつかない細胞死を引き起こします。膜構造破壊も起こします。し かし、現在のところ、どのようにしてCIDEがアポトーシスを起こすのは不明です。
最近、CIDE
-Aがないマウスはガリガリとなることが報告されました。しかもあぶらっこいものを食べても食べても肥
満にならないのです。運動もしないのにみんな脂肪を体温に換えてしまうのです。CIDEファミリーのFsp27(別名
CIDE3)が脂肪組織に発現するのに対して、CIDE-Aは褐色脂肪組織にだけ存在します。体の中のエネルーギー源を消費して体温に換え
るUCP1に結合し、ミトコンドリアで生体エネルギー代謝の調節に関わっているらしいとのことです。CIDEがどのようにして肥満にかか
わっているのか、今後の解析が待たれます。
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| 蛋白質名 | DNA断片化
核凝縮 |
アポトーシス | その他 |
| DFF45/ICAD | 抑制 | カ スパーゼ3による分解で抑制解除 | |
| DREP-1/dICAD(ショウジョウバエ) | 抑制 | DFF45ホモログ | |
| DREP-3(ショウジョウバエ) | DFF45ホモログ(?),DREP-2結合因子 | ||
| DREP-2(ショウジョウバエ) | DREP-1,3結合因子 | ||
| DFF40/CAD/CPAN | 促進 | × | DNA 分解酵素 |
| CIDE-A | 促進 | ○ | CIDE サブファミリー |
| CIDE-B | 促進 | ○ | CIDEサブファミリー |
| fsp27 | CIDEサブファミリー |
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| 哺乳類 | 魚類 | ハエ | 線虫 | 植物 | 酵母 | 大腸菌 | |
| カスパーゼの仲間 | あり | あり | あり | あり | あり | あり | なし |
| カスパーゼそのもの | あり | あり | あり | あり | なし | なし | なし |
| カスパーゼカスケード | あり | あり | あり | なし(2) | なし | なし | なし |
| 死受容体経路 | あり | あり | なし(1) | なし | なし | なし | なし |
| Ced-3/4/9様経路 | あり | あり | あり | あり | なし | なし | なし |
| NF-kB活性化系 | あり | あり | あり | なし(4) | なし | なし | なし |
| p53依存性細胞死 | あり | あり | あり | あり | なし | なし | なし |
| DNA障害の細胞死誘導 | あり | あり | あり | あり(3) | ? | ? | ? |
| 感染時の細胞死 | あり | あり | あり | あり |
あり | あり(2) | あり(2) |
| 発生での細胞死誘導 | あり | あり | あり | あり | あり | なし(2) | なし(2) |
| IAP | あり | あり | あり | あり | なし | なし(2) | なし |
| NOD蛋白質 | あり | あり | あり(2) | あり(2) | あり(2) | あ り(2) | ?(2) |
| 細胞数 | 多 | 多 | 多 | 多 | 多 | 単 | 単 |
最近、歯周病細菌のシステインプロテアーゼであるギンギパインRの形が決まって、カ
スパーゼのものと似ていることがわかりました。他の細菌や植物もギンギパインRと似たタンパク質メタカスパーゼを
もっていることが知られており、動物にも似たタンパク質パラカスパーゼ(MALT1の
仲間)が存在します。さらにリソゾームの酵素であるカテプシン(C1)ファミリーやSUMOの再利用に関与するプロテアーゼ(C48)などとも弱い相同性
を持ちます。カスパーゼは計画細胞死を制御するために特化したシステインプロテアーゼであると言えます。これはいづれもCys残基を介して酵素・基質中間
体を形成するタイプも酵素反応を行い、その必須のCys残基の上流に、他の酵素と同じように水素イオンを受け取ったり、預けたりできるHis残基が存在し
ます(カスパーゼの場合、基質と直接的にやりとりすると考えられています)。しかし、このHis残基の下流にカスパーゼが基質のAsp残基を特異的に認識
してその下流で切断するためにArg残基を持ちますが、他のものはまた別の残基を持っています。また、Cys残基の下流には基質のAsp残基上流に存在す
る残基を認識する残基が存在しており、これはカスパーゼの種類で異なっています。この差を利用して、カスパーゼは異なる基質を分解すると共に、異なるプロ
テアーゼ(他のカスパーゼなど)を活性化できるのです。一方、システインプロテアーゼの活性化方法は、その種類でまちまちですが、大別してプロセシングが
必要なものと活性化物質が必要なものがあります。現在、これらがどのようなしくみで活性化されるには、今後、活性化前後の三次構造の解析や酵素学的な研究
で明らかになることでしょう。
高等植物においても計画細胞死があります。アポトーシスという言葉は本来植物の落葉に由来するぐらいですから。また、過敏感反応と呼ばれる現象が知られています。細 菌・ウィルスなどの病原体に細胞が感染したとき、いち早く感染を伝えるとともに感染細胞は自滅を始めます。
みなさんもごらんになったことありませんか?別に虫が食べたわけじゃないのに草や木の葉に へんな穴があいたりしているのを。
この反応には細 胞質性R(病原耐性)タンパク質が関与します。細胞質性R蛋白質は動物のApaf-1やCed-4と 似たドメイン(NOD) を持ちます。NOD中にはNBD-ARCと 呼ばれる保存された配列ブロックがあります。Apaf-1がWD40 リピートドメイン(WDR)を持つのに対してN蛋白質やその仲間はロイシンリッチリピート(LRR)をシッ ポ(C末端側)に持っています。WDRもLRRも他の蛋白質の結合ドメインとして多くの蛋白質に存在します。Apaf-1のWDRがチトクロームcに結合 するセンサーであるのに対して、R蛋白質のLRRは植物に侵入してきた病原物質(総称してAvr産物と呼ばれます)のセンサーとして働きま す。したがって、LRR の種類が異なれば応答できる病原体の種類も異なってきます。別の言い方をすると、植物は、動物のように抗体による生体防御機構(獲得免疫) をもたないものの、非常にたくさんのRファミリーを持つことで体を守っているのです。遺伝子が小さいと言われているシロイヌナズナでさえ、200 ぐらいのRファミリーを持つと言われています。動物は免疫細胞で抗体遺伝子の組換えや点突然変異導入で病原体を認識する様々なバリエーションを 作っていますが、植物はこうしたことができないかわりに、世 代間で頻繁な遺伝子組換えを行うことで、異なる病原体に耐性をもつタネをつくるのです。
細胞質性Rタンパク質は、Apaf-1ではcaspase-9が結合するCARD、つまり、シグナルに応答して活性化する因子の 結合すると思われる領域が、その種類によって異なっています。特定の病原菌に応答するシロイヌナズナのRPP1,RPP5やウィルスに応答 するタバコN蛋白質などは頭(N末端側)に動物のToll/IL-1受容体と相同性あるドメイン(TIR)を 持ちます。また別の細菌に応答するシロイヌナズナのRPM1,RPS2,RPS5,RPP8やトウモロコシのRp1などは CARDやDDのようにαヘリックスに富んだドメイン(ロイシンジッパー様またはコイルドコイル様ドメインと呼ばれています)を持っています。しかし、現 在のところ、これらのドメインに何が結合しているのかわかっていません。
植物はまた、細胞表面でAvrを受けとめる受容体(R)をたくさんもっています。この膜表在性Rファミリータンパク質は細胞外に
LRRを突き出すかたちで持っており、Avrを認識しているものと考えられます。
哺乳類にもこの植物の系とたいへん似たものが存在します。Tollの仲間(TLR,Toll様受容体)とNodの仲間の系です(下図)。
-目で見る過敏感反応- 説明 推 奨 過 敏感反応死を起こした燕麦細胞 過敏感細胞死像がわかりやすい解説とともに示してある 神 戸大学植物学教室 A 植 物の病害抵抗性遺伝子 Nod1/Apaf-1,TollやRICKの仲間などの一覧がわかりやすい 同 教室 A R タンパク質の総説 Rタンパク質全体をよく把握した総説 NCBIからPNASへ A
TLRは 植物の膜表在性Rファミリーと同様に細胞外にLRRを突き出して細菌や真菌の一部の感染をいちはやく感知します。TLRは 転写調節因子であるNF-kBやAP-1を活性化して、この感染情報を他の細胞に伝える物質(サイトカインなど)を作ること で、生体防御のもっとも最初の段階(自然免疫)で重要な役割を果たしています。また、TLRは膜表在性Rファミリー同様に細 胞死も誘導します。
一方、Nod1の仲間は細胞内にあって、植物の細胞質性Rファミリーに対応します。Nod1(別
名CARD4)
とNod2は
細胞に侵入する細
菌の成分を認識し、LRRが必須の役割を果たしています。Nod1は植物のN蛋白質同様にNODとLRRを
持ちますが、Apaf-1と同様にN末端側にCARDを持ちます。Nod1は
このCARDを介してRICK(別名RIP2,CARDIAK)とカ
スパーゼ-9に結合し、アポトーシスとNF-kB活性化を
引き起こします。このように動物においても、植物同様に細胞の表面と内側両方で、病原体から流出したり病原体の表面に存在する物質に応答する系を
もつと考えられます。Nod2はNod1と
よく似た因子でN末端に2つのCARD、中央にNBD、C末端にLRRを持ちます。Nod1同
様にRICKと結合し、NF-kB活性化を誘導します。Nod1とNod2は認識するリポ多糖の種類は異なっ
ており、おそらく異なる病原菌耐性にかかわっているのではないかと推定されます。赤痢は疫病の中でももっとも恐れられたものですが、これは
グラム陰性菌の赤痢菌(ちなみに日本人の滋賀潔が見つけたのでShigellaという学名)の感染によるものです。赤
痢菌が感染するとNod1が多量体化し、RICKがNod1に結合し、NF-κBを活性化します。また、O157ですっかり有名に
なった病原性大腸菌やサルモネラなどもNod1,
Nod2を介してNF-kBを活性化すると考えられてます。
TNFファミリーの受容体の情報伝達に関与するRIPはRICKよ
く似ており、RICK同様にカ
スパーゼとNF
-kBを活性化します。しかし、RICKがC末端側にCARDを持っていてNod1に結合するのに対して、RIPは
はC末端側にDDを持っていて、レセプター複合体(正確にはその中のTRADD)に結合します。こうしてみるとわかりますよ
うに死受容体系はNod1/RICK系が膜内外の情報伝達に関与するように特殊化したものであると言えます。
さて、もう一度、話をApaf-1とCed4に戻しましょう。
これらのアポトーシス調節タンパク質はミトコンドリアから流出したcyt-cや表面に存在するBcl-2ファミリーであるCed-9をそれぞれ認識し、応
答します(Ced9の場合、阻害ですが)。実は、遺伝子配列の解析や形などから、グラム陰性菌が細胞内共生したのがミトコンドリアの始めであると考えられ
ます。従って、Apaf-1やCed-4による細胞死誘導系はこうした原始的免疫応答機構から生じた可能性が現れました。つまり、Apaf-1やCed4は
アポトーシスに特異的に働くように進化したNOD蛋白質らしいです。
別の言葉にすると、
細胞自身を殺すしくみはもともとヤラれた細胞を殺すためのしくみと同根だったらしいです。 進化で自身を殺すしくみと細胞間で殺せるしくみが分かれたようにみえます。
また、ネクローシスを起こしたり、細胞が感染などで傷つくと、細胞内の成分が漏れでて炎症を起こします。このときの免 疫応答には細胞表面にあるTLR受容体が関わっています。この現象は、アポトーシス促進性のBcl-2ファミリータンパク質によって「傷ついた」 ミトコンドリアから漏れ出た成分による細胞死誘導に細胞内のApaf-1が関わっていることと、対をなすように見えます。つまり、この植物まで保存された 生体防御の機構は、病原による障害だけではなく、様々な細胞内外での障害を検出する機構に両者が関わっているといえます。
病気はいつもわたしたちと隣り合わせです。わたしたちの体が健康であり続けるためには、日ごろ感染や放射線で傷ついた、わるい細胞を除去し続け
なければなりません。これは、多細胞生物の基本であり、その基本原理は動物も植物も変わらないといえるのではないのでしょうか。
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また、Apaf-1やNod1のNODの役割がはっきりしてくると、NOD
の働きと人体でこのNODをもつ因子群の生理的役割をより普遍的に考えることができるようになりました。C末端側はシグナル分子がないときは
NODが多量体となるのを防いでいます。シグナル分子がくると抑制が解除されて多量体を形成します。この時点でN末端側に自己触媒性のあるエフェクター分
子が結合し、近接によりエフェクター分子同士が互いに活性化され合います。活性化されたエフェクター分子はその触媒活性を持ってその経路の下流の分子を活
性化する、というものです。たとえば、DNA非結合性の免疫系転写調節因子CIITAは
Nod1とたいへんよく似ています。つまりCIITAは
NODとLRRを持ちます。ただし、Nod1がN末端側にCARDを持つのに対して、ADとPSTリッチ領域が存在し、CBP
などと相互作用しています(デンドロサイト特異的CIITAはCARDを持ちますが、転写調節に必
須ではありません)。CBP
はアセチル転移酵素ですので、おそらくApaf-1,Nod1と同様のメカニズムで転写を促進している可能性があります。BIRタンパク質(前述)の一種NAIPもNODとLRRを持つマクロファージ特異的タンパク質で、細菌の一種レ
ジオネラに対する耐性に関与しています。Nod1同様、LRRを介してなにがしらのシグナル応答を仲介しているものと考えられます。今
後、そのシグナル分子を見つけることがNAIPの機能の解明や感染症治療のために急がれます。さらに、最近NAIP,Cryopyrin(別
名PYPAF1),
NAC(別
名DEFCAP,CARD7,NALP1),
Ipaf(別
名CLAN,CARD12)
やNBS1(Pypaf2)(別
名NALP2)
といった新規因子も同様の構造が見つかり、NF-kB活性化やアポトーシス制御以外の情報伝達系でもApaf-1やNod1と
同じような分子制御機構が存在する可能性が強まってきました。
Cryopyrinはどのような働きをしているのか、現在のところ不明ですが、家
族性寒冷蕁麻疹病因遺伝子のひとつではないかと考えられています。この家族性の蕁麻疹の患者さんはCryopyrinのNOD近辺
に点変異があります。ただ、Cryopyrin自体の機能も不明ですが、この変異と蕁麻疹との関係も不明で、まだまだ調べる必要があるよう
です(NODの構造はたいへん似ていますので後述のNod2,CIITAの解析からある程度、蕁麻疹とCryopyrinの関係がわかるかもしれませ
ん)。
| タンパク質名 | 構造 | 分子機能 | 結合すると言われている因子 | 関係する疾患 | 遺伝子座 | 引き金物質 | 提唱されている生理機能 |
| Nod1 (CARD4) | CARD/NOD/LRRs | NF-kBやcaspaseの活性化 | RICK, caspase-9 | 7p14-p15 | 細菌成分 | 細菌の細胞内センサー | |
| Nod2 (CARD15) | CARDx2/NOD/LRRs | NF-kBやcaspaseの活性化 | RICK | Crohn病, Blau症候群, 喘息, 小児の感染症 | 16q12 | 細菌成分 | 細菌の細胞内センサー |
| CIITA | (CARD)/AD/NOD/LRRs | MHC-II遺伝子の活性化 | 転写調節因子群 | 免疫不全 | 16p13 | ? | リンパ球に抗原提示するための下地作り |
| Apaf-1 | CARD/NOD/WDR | caspaseの活性化 | caspase-9 | メラノーマなどの癌 | 12q22-q23 | チトクロームc | アポトーシスの中心的分子 |
| Ipaf (CARD12, CLAN) | NF-kBやcaspaseの活性化 | Asc, caspase-1 | 2p22-1p22 | ? | 炎症反応の誘導 | ||
| DEFCAP (NAC,CARD7, NALP1) | PD/NOD/LRRs | caspaseの活性化 | caspase-1,2, 5,9,Apaf-1,Asc | 17p12-13 | ? | 細胞死制御? | |
| NAIP | BIRx3/NOD/LRR | caspaseの抑制? | hippocalcin, TAK1 | レジオネラ感染症 | 5q12.2-q13.3 | ? | レジオネラ菌抵抗性, 細胞死抑制 or TGF情報伝達経路の制御 |
| Cryopyrin (CIAS, Pypaf1) | PD/NOD/LRR | NF-kBやcaspaseの活性化 | Asc | 家族性寒冷蕁麻疹など | 1q43-q44 | 炎症反応の誘導 | |
| Pypaf7, (Pan6) | PD/NOD/LRR | NF-kBの活性化 | 19q13.42 | ||||
| Mater (Pypaf8) | PD/NOD/LRRs | ? | 不妊症 | 19q13.42 | 受精卵ごく初期の段階での発生制御 | ||
| NALP2 (Pypaf2) | PD/NOD/LRRs | ? | 19q13.4 | ||||
| Pypaf3 | PD/NOD/LRRs | ? | 19q13.42 | ||||
| NALP4, (Pypaf4, Pan2) | PD/NOD/LRRs | 抑制? | IKKα? | 19q13.43 | |||
| Pypaf5 (Pan3) | PD/NOD/LRRs | ? | 11p15 | ||||
| Pypaf6 | PD/NOD/LRRs | ? | 19q13.43 |
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今世紀最初の年、私どもはNod2がクローン病の 病因遺伝子らしいことをつ きとめました。クローン病 は小腸や大腸などで繰り返し炎症をおこす病気です。一旦良くなったり悪くなったりします。炎症を繰り返した結果、潰瘍ができます。多くの患者さん (日本全国で約1万4千人、全米50万人)がいらっしゃるにもかかわらず、その病因は不明でした。潰瘍は炎症を繰り返すことで悪化しますので、免疫系の異 常が考えられていました。ただ、この病気が遺伝によっておこるのか、それとも環境によっておこるのか、はっきりわからないところがあり、それが研究を遅ら せました。クローン病はし ばしば細菌との関わりあいが疑われ、炎症を起こす原因の一つである細菌に対する応答性がおかしくなっている可能性がありました。
遺伝子の場所(遺伝子座)を調べたところ、Nod2とク ローン病のものとぴったり一致しました。そこで、患者さんのNod2の構造を調べてみると、LRR 部分などに欠損が見つかりました。LRR はNod1やNod2が細菌の成分に応答するために重要で、この領域がないともはや細菌成分に応答できません。驚いたことに正常な人にも同じ遺伝 子欠損を持つ人がい ます。このことはクローン病は予防できること・見た目正常な人でも発症しうる可能性を示唆するものです。
どうして一部の人だけクローン病になるのでしょうか。
患者さんのもつ変異Nod2を調べてみると細 菌成分に応答できなくなっています。別のいいかたをすると遺伝的素因があっても特定の細菌に触れる機会がなければ免疫は健常人と変わらないことに なります。かといって予防として菌を全部殺してずっと無菌状態を保つことはむずかしいです。また、腸内細菌は人体に多くのメリットを与えてくれますので、 腸内細菌がいないと逆に他の病気にかかりやすくなってしまいます。そこで腸の調子(マイクロフローラ)をととのえることが重要であると考え られます。
クローン病の予防にはとりあえず以下が重要だと思われます。これらのうちいくつかは炎症の沈静化に有効と考えられていましたが、初発予防にも有 効と予想されます。
1. マイクロフローラを変えるような食事内容をしないこと。
2. 旅行等の時、食べ物・飲み物が急に変わらないようにすること
3. 感染症治療や骨髄移植などのときにマイクロフローラに十分に注意すること。とくに抗生物質投与後。
4. Nod2はモノサイトで機能していると考えられることから免疫系を大きく変えるものに注意する。たとえば、ストレスとか疲れなど。また、クローン病をご存知の方はお気づきかと思いますが、遺伝子だけではなく食事療法など今まで有効といわれていた対処療法の標的である環境要 因がNod2とその下流に密接に関連していることがわかります。いや、Nod2系の働きで全て説明できるといっても過言でないかもしれません。従って、今 後は食事療法他を組みたてる上でNod2への影響を考えれば、極めて有効に働くと考えられます。
最後に、発症以前に自分のNod2の遺伝子配列を知っておくこと、もしも機能異常が予想されるなら上記に特に注意することが重要だと思います。自分の Nod2が細菌成分に応答できないか、つまりどんなマイクロフローラや食事がよくないかを把握していたほうがいいと思います。もちろん、調べられる範囲に は限りがあります。例え変異がみつからなくてもNod2遺伝子が機能していない可能性がありますので、ご家族にクローン病をお持ちの方は上記に注意すべき でしょう。4については逆に症状の重い患者さんに吉報でもあります。Nod2 は主に血液の免疫細胞であるモノサイト・マクロファージ系で 働いているようですので正常なモノサイトを導入することで病気が根本から100%治る可能性がある
からです。症例が少ないですが、実際、骨 髄移植でクローン病が治ったとの報告があるからです。免疫型がぴったり合うドナーさえあれば重度の患者さんの場合、治療法の一つとして十分考えら れます。炎症の研究者のみなさん、モデルマウスなどでデータを集めてください!きっと患者さん助かりますよ。
逆に、nod2の変異を持ったドナーから骨髄移植を受ける場合、クローン病を発症する可能性が考えられることを先ほどの抗生物質の使用後の 注意とともに警告しておきます。現在、無検査の状態ですが、移植を行う方は今後の研究の進展をぜひ見守ってもらいたいです。もちろん、まだ、解決していない主要な現象も多くあります。Nod2は血液細胞で発現しているほか、腸ではPaneth細 胞と呼ばれる腸での免疫に大切と考えられいる表皮細胞で発 現しています。クローン病の患者さんやNod2を人為的になくしたマウスでは細菌を殺すための物質(抗菌物質)のひとつであるディフェンシンがでにくくなり、病原細菌であるリステリアに対する免 疫が弱くなります。ですので、こうした腸における免疫の低下もクローン病にかかわっているのかもしれません。現在、ヨーロッパをはじめ、上でお話 しした骨髄幹細胞移植を使ってクローン病がどう治るか、どう伝わるかといった大 規模な研究がなされています。今後の進展に注目したいところです。
Nod1やNod2のLRR領域が完全になくなると細菌成分に対する応答性がなくなり、い つも活性化された状態になります。これは、クローン病の患者さんから得たモノサイト・マクロファージは、腸内細菌の細菌成分で刺激した健康な人か らのものと同じぐらいす でに活性化されている、という現象をある程度、説明できるものでした。ところが、実際に患 者さんから得られた配列はLRR領域の一部のみを欠いており、細菌成分応答性は失うものの決していつも活 性化されっぱなしの状態にはなっていませんでした。むしろ、免疫応答をおこせないというかんじです。ですから、炎症に関わると思われるNod2遺 伝子が働かなくて炎症を起こすという現象は、一見矛盾しているように見えます。Nod2の下流ではIKKβという炎症反応に重要な因子が働いています。と ころが、体の一部だけIKKβを作らないマウスでは、なんと逆 に炎症を起こします。こうした一見矛盾した現象がどうしておきるのか、詳しく調べる必要がありそうです。
また、Nod2の異常が見つかったのではクローン病患者さん全員ではありません(数 %〜50%以下)。詳しく調べることでさらに別の欠損が見つかるはずですので、今後割合は増えるものの、家族の方からの遺伝を調べて、明らかに Nod2以外の遺伝子が原因と考えられる方もいらっしゃいます。詳しく調べてみると「クローン病」とごっちゃに診断された患者さんのうち、回 腸部分の炎症が認められる方だけでNod2の異常が見つかっています。このことは症状はおなかの炎症なのですが、糖尿病の場合といっしょでもっと 細かく分類できること、それに見合った治療が可能なことを意味しています。今後、みんなで話し合って新しいネーミングをつける必要があります。私 たちは最近、Nod1とNod2が細菌の違う成分を調べていることを見つけました。Nod2は多くの種類の細菌に認められる構造(ペ プチドグリカンのMDPという構造)を認識します。これに対してNod1は一部の細菌にしかない成分(DAP 型ペプチドグリカン)を認識していました。乳酸菌の中にはNod1の認識できるもの(DAP型)とできないもの(非DAP型)がいます。DAP型 のものは以前からクローン病の症状を緩和するものとして利用されてきたものです。私たちはさらに進めて、このNod1の認識する成分に当たるものだけを合 成しました。Nod2が働かないクローン病の患者に対して、Nod1を刺激することでクローン病を予防することができるかもしれません。
クローン病の根本予防薬になりうる原型試薬として大いに期待しています。
我々は納豆の細菌(バチラス菌)の中に同 成分を見出しており、今後クローン病における納豆汁の有効性も検討したいと考えています。
リンク先 内容 誰の
医 療講座 「クローン病・潰瘍性大腸炎について」 クローン病やIBDとは何かわかりやすい リ ウマチ反応陰性脊椎関節炎ホームページ AAA Crohn's Disease Resource Center All staffs of CD healingwell.com A クローン 病について思うこと ポストゲノム研究のあり方についての私見 私のいいたい放題 A ク ローン病とは なにがクローン病なのかの定義がきちんとわかる 特 定疾患治療研究事業 A クローン病 病変部(内視)等 たいへんわかりやすい解説付。イラストもいい。 丹羽病院 AAA 他の大腸関連の病気といっしょに理解 腸が回るアニメつき・・・ 大腸.COM AA
最近、クローン病と同様に炎症系疾患に分けられるブラウ (Blau)病(まれな家族性の肉芽種性関節炎)の患者さんのNod2遺伝子も健 常人のものと異なることがわかりました。ただ、その差はクローン病のそれと異なって、細菌のセンサーとして働くと考えられるLRR の部分ではなく基幹部分のNODにあり、細 菌との相互作用とは関係なく炎症を引き起こす情報伝達経路を活性化します。また、この遺伝子の差は明らかな欠損といったものではなく、今後、この 差が本当に病気と関連しているのか、さらに詳しく調べる必要があります。注:私どもは研究を専らに行うもので、治療を直接行ったり、治療施設をご紹介するものでは ありません。病院・お医者様に関するお問い合わせはご遠慮ください。
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CARD(前述)をもつタンパク質が免疫と密接な関係にあるもうひとつの情報伝 達系を紹介します。Bcl10(別 名CIPER/Bcl10/mE10/cCARMEN/CLAP/c-E10) を中心とする系です。
植物の場合、病原に細胞が感染すると計画細胞死(過敏感反応)が誘導され、これにより病原が他の細胞へ広がるのを防いでいます。その中心がRタ ンパク質で、そのために植物は多数のRタンパク質をもち、さらにいろんな病原体に対応するためにLRRの異なるRタンパク質をもつ種を作っています(前述)。
動物ではどうでしょう。動物は植物と違い動くことができます。リンパ球はごそごそと患部までやってくることができます。感染して ヤラれた細胞の計画細胞死に加えて、リンパ球といった免疫系の細胞などが病原や感染した細胞をいろんな方法で攻撃することができます。また、病原が何なの かを調べる段階も二段構えになっています。第一段階として植物のRタンパク質に対応するNodやTLRがまずしらべて、マクロファージ系などを活性化する ものと考えられます。第二段階として、マクロファージによって殺されて分解された病原の一部はリンパ球にある免疫 グロブリンの仲間によって調べられます(前に述べたCIITAが調節しているMHCはこの病原提示を助けます)。
リンパ球には免疫グロブリンの仲間が中心となったT 細胞受容体(TCR)複合体やB細胞受容体(BCR)があって、こうして提示された病原の一部を認識すると次の免疫反応を 誘導する情報伝達物質を合成します。この情報伝達物質の合成にはNF-kB活性化が必要です。本題とはずれますので詳細は飛ばしますが、TCRは細胞の中 へのCa2+イオンの流入を引き起こし、その後、Ca2+依存性でタンパク質をリン酸化する 酵素であるPKCを活性化し、ついでPKCがNF-kBを活性化します。このPKCによるNF-kBの活性化 にCARDタンパク質が必須の役割を果たしています。
この系で中心的な分子がBcl-10(CIPER)です。Bcl10 を欠いたマウスではもはやTCRやBCRによるNF-kB活性化を起こすことができません。逆にBcl-2同様抗体遺伝子の転写活性化領域(エン ハンサー)が転座(遺伝子異常のひとつ)によってタンパク質をコードする領域の近くに来てB細胞で大量に発現するとMALT リンパ腫という癌になってしまいます。このBcl10を培養細胞で大量につくらせるとNF -kB活性化を引き起こします。Bcl10のユニークな点はそのCARDの性質にあります。多くのCARD蛋白質が自分自身には結 合しません。したがって、ARCの ように活性化ドメイン(この場合DD)を持たない蛋白質は他の蛋白質に結合した後も多量体化しないので、アポトーシスを抑制してしまいます。ところがBcl10は CARDを用いてたいへん効率よく自 分自身と多量体化することができます。
MALTリンパ腫には、Bcl10とは別にMALTリンパ腫を引き起こす遺伝子がもう1つ知られています。MALT1で す。MALT1はN末端にDDと免疫グロビンドメインを持つシステインプロテアーゼです(前述)。 このMALT1のC末端のプロテアーゼドメインが転座によってIAP2(別名API2。前述)のN 末端と融合することで、強力なNF-kB活性化因子となります。しかし、もともと正常なMALT1は単独ではNF-kBを活性化しません。 しかし、C末端側のシステインプロテアーゼドメインを多 量体化させるとNF-kB活性化します。このことから、そのN末端側の領域には多量体化を介してNF-kB活性化の調節関与すると考えられまし た。調べてみると実はこのN末端側の免疫グロブリンドメインにはBcl10が結合し、Bcl10 の重合化を介してMALT1同士が近接することがわかりました。
このBcl10・MALT1の基本的な部分とPKCをリンクする役割を果たすのがBimp1(別 名CARD10,CARMA3), Bimp2 (別名CARD14, CARMA2),Bimp3(別 名CARD11,CARMA1), CARD9と いったBimpファミリーです。BimpファミリーはN末端にCARDをもち、これを介してBcl10に結合 します。Bimp1(別名CARD10) はPKCによるNF -kB活性化に必須の役割を果たし、CARD を欠いたBimp1は全てのPKCによる正常なNF-kB活性化を阻害します。Bimp3 に欠陥のあるマウスはリンパ球でのTCRやBCRからの情報伝達がおかしくなってしまいます。
CIPERを 欠くマウスではリンパ球でのNF-kB活性化ではなく中枢神経ができる過程も異常になり、免疫系だけではないもっと一般的な役割が考えられていま した。中枢神経ができるときにはNF -kBの活性化が必要ですが、CIPERを欠くマウスでは神経ができる過程にで板上(神経板)だった部分が閉じる最中、アポトーシ スを起してしまい、正常な管状構造(神経管)になりません。実際、Bimpファミリーは免疫系のPKCだけではなくPKCαやPKCεなど のPKCによるNF-kB活性化にも関与するらしいことがわかりました。BimpのC末端にはコイルドコイルという共通の構造があり、さらにBimp1,2,3はMAGUKと呼ばれるド メインのセットを持っています。MAGUKは、PDZ,SH3,グアニル酸キナーゼ様ドメインの三点セットを指し、これをも つタンパク質は他の細胞内情報伝達因子の「足場」(scaffold)の役割を果たします。おそらく、BimpはCARD以外のドメインを介して上流の因 子と、CARDを介して下流因子であるBcl10と結合することにより情報伝達に関わっているのでしょう。
ところで、MALTリンパ腫はたいへんユニークな癌です。なんと、細菌を殺す薬である抗生物質で治せる場合があることです。つまり、バイキンを コロすと癌がなおるのです。MALTとの関係がもっとも疑われているバイキンはヘリコバクター・ピロリ(通称ピロリ菌)という細菌です。通 常の場合、ピ ロリ菌がいてもNF-kB活性化を介して炎症を含む免疫反応おこすだけですが、IAP2はNF-kBで活性化される遺伝子ですから(前述)、MALT2遺伝子がIAP2遺伝子と同じ制御を受けるようになるとNF-kB活性化は雪崩式に増幅すると想 像されます。本来、細菌などの病原をやっつけるためにあるシステムが逆に壊れてしまうと、普通なら病気にならないような細菌で病気になってしまうなんて、 まさにMALT関連の遺伝子は両刃(もろば)の剣といえるのかもしれません。
図 Bcl-10(CIPER)による免疫反応の調節
(作業仮説)抗原等が提示される
↓
B・T細胞受容体に結合する
↓
PKCが活性化される
↓
Bimpsにより情報伝達
↓
Bcl10(CIPER)の多量体化
↓
MALT1が近接する
↓
?
↓
IKKγ(NEMO)
↓
IKK酵素活性の上昇
↓
NF-κB活性化
↓
抗体やサイトカインなどの生産
↓
病原に対する耐性
-癌とCIPER(Bcl-10)の関係をめぐる熱い討論-
ほとんど場外乱闘。「転座による過剰発現以外の変異を論じるからこうなるのでは」という意見も・・・内容 推奨 Bcl-10と癌の関係 元文献 Willis ら, Zhang ら B RE:Bcl-10と癌の関係 反論 Fakruddin ら,Apostolou ら BB RE:RE:Bcl-10と癌の関係 反論の反論 Martin ら BBB
-目で見るMALTリンパ腫- 説明 推奨 MALTリン パ腫病変部(内視)
Atlas of Gastrointestinal Endoscopy A MALTリンパ腫病変 部(内視2)
Drいぶき の内視鏡検査室 A わかる! 独説免疫学 おお、これならわかる。学生教育チュートリアルも いい 近畿大学医学部免疫学教室 AAA ウマのウィルスの一種はCIPERとそっくりの因子E10を 持っており、CIPER同様にNF-κB活性化を引き起こします。NF-κBの活性化は様々な免疫反応を誘導しますので、本来はウィル スなどの病原体の排除に重要な役割を果たしています。しかし、かなりの数のウィルスは、ウィルス感染によって活性化されたNF-κBを巧みに利用して増え ることが知られています。白血病ウィルスHTLVがその一例です。アポトーシスを含むウィルス除去機構を様々な方法で抑えこみながら(後述)、一方で誘導されたNF-κBの転写促進活性を利用して自分の体を作るのです。また、いくつかのウィ ルスは積極的に自らNF-κB活性化を誘導するものがいます。例えば、HTLVーIはtaxを持ち、これでNF-κBを活性化します。つま り、本来、ウィルスのような病原から体を守るシステムを乗っ取ってしまうのです。E10もそのような遺伝子の一つであるのかもしれません が、ウィルスとの増殖との関連についてまだ、調べられていません。
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Apaf-1/Caspase-9系が専ら細胞死のみを調節するのに対して、細胞内Nod1/RICK系 やTNFα受容体といった細胞膜死受容体系などは細胞死のみならず、転写調節因子NF-κBの 活性化します。このような転写調節と細胞死のカップリングは、植物細胞で知られている過敏感反応とよく似ています。実際、Nod1やApaf-1は 過敏感反応の主役Nタンパク質とその仲間と似ています(前述)。アポトーシスと転写調節 因子の活性化をカップリングさせることには二つのメリットが考えられます。ひとつは下流の調節タンパク質によって細胞の生死を切りかえることができることです。シグナル分子を受け止めるとき重要なのは、いつ受容したか ということと、その後どんなリアクションをすべきかです。もしも同一のシグナル分子でタイミングが調節できて、異なるリアクションができるなら、例えば、 発生過程で同一段階にある細胞の生死を他のシグナルの有無を考慮に入れながら決められるわけです。この場合、第二のシグナルはアポトーシス調節因子の量か 機能を調節している必要があります(この点についてはまだ不明な点が多いです)。第二のメリットは、自分自身は死にながら他の細胞に情報を送れる点です。 植物の過敏感反応の場合はこちらで、病原体の感染細胞は自殺しながらも周りの細胞に「か、感染したぞぉ。俺は死ぬけど、後をよろしく守ってくれ」という情 報を送るわけです。
また、カスパーゼ1などのいくつかのカスパーゼはアポトーシスではなくインターロイキン1β(IL-1β)や18(IL-18)のプロセシング に関与しています。Nod1系や死受容体系はNF-kBを活性化して情報伝達物質などの合成を促進するとともにIL1βやIL18の分泌も促進しているの かもしれません。
TNFαなどの細胞膜死受容体系とNod1系は以下の2点でよく似ています。
@ いづれもカスパーゼを活性化すること A 両系いづれもよく似たキナーゼRICKとRIPが重要な役割をしていること @については既にカスパーゼの近接活性化モデルでとりあげたように、Nod1系 (または類似タンパク質Apaf-1)ではカスパーゼ9が、死受容体系ではカスパーゼ8が最初に活性化されま すが、いづれのカスパーゼも上位の活性化因子と結合するための領域をもっており、上位の因子が多量体化・集合することで活性化されると考えられます。一 方、AのRIP,RICKの構造はたいへんよく似ており、その機能も類似しています。RICK,RIPと もに下流因子のIKK 複合体に結合します。上流因子には結合できるのだけれども下流のIKK複合体には結合できないRICK やRIPの変異体はNF-κB活性化を阻害します。このことはRICKとRIPがそれぞれNod1系,TNFR1系のNF-κB活性化に必須の役 割を果たしていることを示しています。実際、RIP 遺伝子を人工的に欠損させたマウスではTNFαによるNF-κB活性化が起きなくなります。
え? IKKって何だって?
そうですよね。IKKもそうだけど、NF-κBに ついてきちんと説明していませんでしたよね。
NF-κBに は2つの顔をもつ転写調節因子です。まず、表皮や肝臓の発生段階での一部のアポトーシスを調節しています。その分子機構についてはまだ不明な点が多いです ので、ここでは述べません。
次にNF-κBは 菌・細菌・ウィルスなどの病原体に感染したときに起きる免疫反応を、他の転写調節因子であるAP1(Jun/Fos)とともに仲介していま す。NF-κBは日頃、その阻害因子I-κBと結合しています。I-κBは刺激を受けると壊されて、自由に なったNF-κBが標的遺伝子を活性化するという寸法です。I-κBの分解はそのリン酸化によって調節されていて、リン酸化 をうけるとI-κBはユビキチン化を受けてタンパク質分解装置であるプロテオソームに認識されて、分解されます(IAPの項参照)。従って、免疫応答でのNF-κBの活性化で重要なのはI-κBのリン酸化に行う酵素(略してIKK) の活性調節なのです。IKKはタンパク質の複合体でIKKα(別 名CHUK/IKK1),IKKβ(別 名IKK2),IKKγ(別 名NEMO/IKKAP1/FIP3) というサブユニットからなっています。IKKαとIKKβはタンパク質をリン酸化する活性を持ち(キナーゼ活性といいま す)、AP1活性化や他のストレス応答の上位キナーゼとよく似た形のタンパク質です。これらに調節タンパク質であるIKKγが結合していま す。IKKγはTNFα,IL1などの刺激をIKKαやIKKβに伝える橋渡しの役割を果たしています。
RICKとRIPはIKKγに直 接的に結合します。こうして、Nod1や死 受容体はRIP・RICKそしてIKKγを介して、IKKα,IKKβの活性を調節し ているものと考えられます。したがって、RIPとRICKにNF-κB活性化の機構はほぼ同じです。他の免疫系の情報伝達経路(IL1・TLR, PKR)についても同様のメカニズムが考えられます。TNFαは三量体(3つの分子が集合したもの)で、TNFR1はTNFαに結合すると三量体化するも のと考えられています。Nod1のトリガー分子は現在わかっていませんが、Apaf-1との類似性から見て、シグナル受容後は多量体を形成するものと考え られます。RIPとRICKさらにIKK複合体はNod1とTNFR1複合体に結合しますので、IKK複合体は受容体複合体の多量体化を介して互いに近づ くものと考えられます。このIKK複合体はこのIKK複合体同士の近接によって活性化される可能性があります。実際、細胞の中でRICK,RICKや IKKの各サブユニットを人 工的に近づけてやるとNF-κBの活性化が起きます。もっと違った情報伝達系ではどうでしょうか。CIPERは そのCARDを介して多量化します。CIPER の中央部は下流因子のMALT1に結合しています。これらの因子を強制的に多量体化させると、やはりNF-kBを活性化しました。
「おやおや、こうしてみるとみんななんだか似てますね」
そのとおりです。
@細胞膜で死シグナルを受ける死受容体系も、Nod1(またはApaf-1)もいづれも、それぞれの系特有のカスパーゼをもつこ と。NF-κB活性化するしくみの中でも両系は特有のキナーゼをもつこと。 Aカスパーゼ8も9もともに下位カスパーゼを介して多くの細胞死特有の現象を誘導すること。RIPもRICKもともに下位キナー ゼIKKを介してNF-κB活性化を誘導すること。 Bトリガー分子による受容体とその下流因子の多量体化によって実行分子が活性化されること。つまり、近 接活性化モデルが適用できると考えられる点。 最上流実行因子の近接活性化モデル・・・これはもしかすると他の情報伝達系もみんないっしょか もしれません。研究者の皆さん、ぜひあなたのシグナル伝達の最上流実行因子が近づくと働きが上がるかかどうかためしてみてください。
なお、Bの点(近接モデル)については明らかでない点があります。酵素の近接活性化は果たして実行分子の修飾を必要とするかどうか、 という点です。最近の研究からカスパーゼ9の近接による酵素活性化にはプ ロセシングによる活性化は必要ないらしいという点です。同様のことがIKKにも言えます。IKKα・IKKβがキナーゼ活性を示すには活性調節領 域のリン酸化が必須です。しかし、TNFαやNod1によるNF-κB活性化の場合、キナーゼの活性化が調 節領域のリン酸化の増進を介するものかどうかまだ明らかでありません。一方で、カスパーゼ9もIKKも基質の濃度が変わっても酵素 活性(Km)に影 響がほとんどない(活性にアロステリック効果ない)ことが知られていますので、両者の活性が近接によって局所的に濃縮された基質濃度によって昂進 しているわけでもありません。今後、酵素学の新たな展開が期待されそうです。
図 カスパーゼとNF-κB活性化の機構 (ブラウザのウィンドウサイズを最大にして閲覧されることを推奨します。図は小さなモニタをもつパソコンにも対応していますが、大きなモニ タだ(とA,B)と(C,D)が横に並んで比べやすいです。)
カスパーゼの調節機構をAとB,NF-κBの調節機構をCとDにそれぞれ示した。細胞質で働くシグナル受容体の代表としてApaf-1系 (A)とNod1系(C)、細胞膜で働く死受容体の代表としてTNF受容体1(TNFR1)系(BとD)を示した。アポトーシス(A,B)ではApaf- 1とTNFR1複合体は、それぞれシグナル分子とチトクロームcとTNFαを受容するとカスパーゼ-9と8に結合し、これらを活性化する。活性化されたカ スパーゼ8と9はさらに下位のカスパーゼを活性化する。TNFR1の場合、TNFR1はカスパーゼ8にTRADDとFADDを介して結合する。Nod1に ついてもApaf-1同様の機構によりカスパーゼ9を活性化するものと思われ、LPSが最有力である。一方、Nod1とTNFR1複合体はトリガー分子を 受容すると、それぞれRICKとRIPに結合する。TNFR1複合体はTRADDを介してRIPに結合する。RICKとRIPはさらに下位のIKK複合体 に調節サブニットIKKγを解して結合する。カスパーゼ・NF-κB活性化いづれの場合も、トリガー分子の受容体への結合により多量体化(または三量体 化)が起き、下位のシグナル伝達分子が互いに近づく。近接した下位のうちの実行分子(アポトーシスではカスパーゼ8,9、NF-κBではIKK複合体)は これにより活性化される。矢印は各分子のドメイン(タンパク質に存在する機能単位構造)間の相互作用を示す。略号:CARD・DD・DED(前述なので省 略),IM(中間領域),LとS(カスパーゼ大・小サブユニット領域),LBD(リガンド結合ドメイン),LZ(ロイシンジッパーなどを含む領域), HLH(HLHモチーフなどを含む領域),nCCとcCC(N末端およびC末端寄りのコイルドコイル構造領域),NOD(ヌクレオチド結合性多量体化ドメ イン),TM(膜貫通領域),TRADD-N(JNK活性化を引き起こすTRAF結合ドメイン),ZF(亜鉛結合ドメイン)
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前者は増殖する上で障害になる敵を撃滅することを目的にしています。
典型にエイズウィルス(HIV)が います。通常免疫系はウィルスなどに感染を防ぐようにできています。エイズウイルスはこの防御機構をずたずたにします。エイズウイルスは免疫系の特定の目 印のある細胞のみに感染し、増殖し、宿主細胞から放出されます。ところがこの増殖に伴う細胞死では免疫系の低下は説明がつきません。エイズウィルスは積極 的に細胞を殺しています。このエイズウィルスの戦略は巧みで、自らの武器で直接細胞を殺すのではなく宿 主のアポトーシスを引き起こします。かくてエイズウィルスの野望は遂げられるわけです。
後者は自分が増殖する間感染した宿主が死なないようにするものです。
よりたくさんの子ウィルスを作るためにこうした努力をするわけです。天然痘ウィル スの仲間は感染細胞の細胞死を誘発する因子の受容体そっくりのに せもの因子を作って、こ れを結合して細胞死を阻害しています。牛痘ウィルスの 仲間はcrmAというカ スパーゼの阻害剤遺伝子を持っています。crmAはか なりの種類のカスパーゼを強力に阻害して、細 胞死を食い止めます。ヘルペスウィルスの仲間の場合、DED カスパーゼ経路を阻害します。この間にしこしこと自分の子孫を作ります。また、昆虫のウィルスの一種、バキロウィルスの仲間はICEファミリーの 前駆体に結合して活性化されるのを防ぐp35 遺伝子と神 経細胞死阻害蛋白質(NIAP) の仲間にあたるIAPを 作ることでアポトーシスを抑制します。アデノウィルスはE1B 19KというBcl-2と同機能の蛋白質を作ってアポトーシスを抑制します。さらにBcl-2ファミリー(BHRF1,LMW5-HL,ORF16な ど)を合成してアポトーシスを抑制したり、細胞のBcl-2ファミリー遺伝子を活 性化してアポトーシスを抑制します。
もしもエイズウィルス感染によるアポトーシスが防止できたら、どうなるでしょうか。実際、長期間生存されていらっしゃる患者さんはアポトーシス
を起こすのに必要なウィルス遺伝子が壊れている場合も報告されているようです(確か日本のグループ。日本の新聞が大々的に報道。原著見つかりません、誰か
教えて!)。かつて猛威を奮った天然痘そしてエイズ・・・、アポトーシスの分子機構が解明されるなら、ウィルス疾病の治療にどんなに役立つことでしょう。
| 作用 | ウィルスタンパク質または遺伝子名 | |
| シ グナル因子に結合して阻害 | crmB(Poxvirus),G4R(VMV),B28R(VV),T2(MV,RFV),C5L(cPV),A53(VcV) など | TNF 受容体に似 ている |
| 死 活性領域(DED)に結合して阻害 | E8(EHV2),M159L/M160L(MCV1), K13(KSAV/hHV8),E1.1(BHV4), VG71(HVS11),Q2/2L(CPV) など | FLIPs |
| Bcl -2同様に働いて阻害 | BHRF1(SCV),LMW5-HL(ASFV),ORF16(HVS11),vBcl-2(KSAV/hHV8),E1B 19K(Adenovirus)など | |
| カスパーゼ活性を直接阻害 | crmA(cPV),p35(Baculovirus) | |
| 追試の広場で議論 | IAP(Baculovirus, CIV) 4CL/p27(ASFV) |
| 画像 | 内容 | リンク先 | 推奨 |
| AIDS ウィルス(HIV)の感染でアポトーシスを起こしている細胞 | HTML | 長 崎大薬学部小林信之教室 | A− |
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狂牛病(BSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病、クールー病ではプリオンと呼ばれるタンパク質がアルツハイマー病 のβアミロイドタンパク質よろしく、脳に蓄積するのが原因で起きます。プリオンの実体は糖タンパク質なのですが、これが煮ても焼いても壊れにくいという頑 丈なもので、βアミロイドタンパク質と違ってなんと食べると食べた近似種の生き物で長い期間をかけてプリオンの蓄積をおこし、まるで病原のように振舞いま す。じょじょにア ポトーシスを伴いながら頭をおかしくしていきます。
脳の死に関してはもうひとつ重要な課題があります。脳 卒中の時に一時的に脳に血がかよわなくなる(脳虚血)と、その時は回復してもしばらくしていきなり死んでしまうことがあります。これは脳虚血が きっかけとなって神経細胞のアポトーシスを引き起こすためです。この現象が克服できれば、卒中後の救命率があがることでしょう。同様の現象が心筋梗塞を起 こした後でも知られています。私たちの見つけたARCは この虚 血時のアポトーシスを抑制することが見出されています。
また、先に述べたように癌発生とアポトーシスは密接な関係にあります。癌抑制遺伝子p53が変異した癌細胞では放 射線も抗 癌剤も効き目が弱くなります。しかし、それでもいくつかの薬はアポトーシスを起こすことができますが、このアポトーシスはBcl -2によって抑制できます。つまり、もしも内在的なBcl-2の機能をもっと抑えてやることができればもっと薬効が期待できます。Hrk,ARCな どアポトーシス制御因子の研究によりアルツハイマー、狂牛病、脳卒中、癌、エイズをはじめとする疾病治療に役立つものと期待されています。
| サイト | 説明 | 内容 | リンク先 | 推奨 |
| Cancer GeneticsWeb | 癌関連遺伝子データベースを簡単に検索できる。ためしにBcl-2と入力してみよう。 | HTML | Simon Cotterillの | AA |
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でもBcl-xSはアポトーシス誘導能が弱く(下図)、Bcl-xLやBcl-2でその細胞死が抑制されるので、この方法ではBcl-2や
Bcl-xLを大量発現する癌細胞を殺しにくいのです。癌患者さんの化学療法を続けていると、Bcl-2やBcl-xLを大量に発現してこうした治療に耐
性を示すようになり、これが化学療法の大きな障害となります。
| Hrk>Bax>Mtd>Bak>Bcl-xS> Bad |
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ちなみにMtdはスペイン語「闘
牛士」マタドールの略です。ハラキリの後は、私はぜひ「コロリン」とか「ジバク」とかしたかったのですが、前が日本語だか
ら今度はスペイン語(上
司はスペイン人)となりました。CLARPの時は米国人に「なんか赤ちゃん語みたい」と馬鹿にされ、DCP2では「DCP1の二番煎じ」と言われ
ています。なんでもMatadorは殺し屋(Murder)に通じてバッチグー(ちょベリグ)だそうです。ちょっと待てよ、ハラキリの時は自殺だから
Murderはだめだ(前述)といわれたのにどうしてMtdはOKなんだ、と疑問が残りますけど。でもって、
1998年ごろには略号をそのまま名前にすることが多いのですが、毎回いいゴロ合わせが思い浮かばず、悩んでいました。1999年のNod1論文でどうし
てそういう命名にしたか、説明するのをやめました。なぜなら、レビューアの趣味(?)で名前の変更をさせられたタンパク質がいくつか出てきたからです。慣
れ親しんでいた名前がいきなり役所の戸籍係で変更されると、日頃そう呼んでいた現場の私達は混乱を起こします。だ・か・ら、どうして私が「猪原直弘」なの
か説明せず、「私は猪原直弘だあ」と言いきることにしました。
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このコーナーは、一旦一流雑誌に報告された「あの研究」のその後を私が知りたいという、超わがままな目的のために作られました。従っ
て、追試だけではなくその後どのように研究が発展したか、こんなこともできるのではといった内容も含んでいます。いわば研究版「あの人は今」のコーナーで
す。「あの研究」のその後をご存知の方、ino@umich.eduまでぜひご一報下さい。また、「あの研究」をされた方自身のその後もお
教え願えれば幸いです。
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| 第72回生化学会「アポ トーシス」演題 | 和 | B | 演題名のみ。シ ンポ1 シ ンポ2 シ ンポ3 ポ スター1 ポ スター2 |
| 第73回生化学会「アポ トーシス」演題 | 和 | B | 演題名のみ。シ ンポ1 シ ンポ2 ポ スター |
| 第74回生化学会「アポ トーシス」演題(2001) | 和 | B | 演題名のみ。シ ンポポ スター |
| 第22回 (1999年度)日本分子生物学会「アポトーシス」演題 | 和 | B | 演題名のみ。ワーク ショップ, ポ スター1、ポ スター2 |
| 第 23回日本分子生物学会演題 | 和 | B | 演題名のみ。PDFファイル。ワークショップ、その 他 |
先にあげた応用もさることながら、細胞の生死がどのように決定されるかという生命の根本原理に迫れたらどんなに素晴らしいことでしょう。人類が 生死をコントロールする時代はすぐそこに来ているのです。
もしも、私の研究にご支援を賜れる方がいらっしゃいまし たらこれに代わる幸いはないものと存じます。
共同研究承ります。
大歓迎!
企業、団体からも助成大歓迎。現在、私が日本からもらえそうなものを見つけていません。日本に職がないと無理ですか?
| ☆ 協力・提携企業の皆様へ 私どものご研究を支持していただき、たいへんありがとうございます。ここに謹んでお礼申し上げるとともに今後ともよろしくお願いいたします。 ☆ 新規提携をお考えの企業の皆様へ |
現在、いつでも書ける状態です。→作 者連絡先ino@umich.edu
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す。ただし、リンクは自由です。ここに記載した項目はいかなる医学的治療や見
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くまでつれづれのもので全く正しいかどうか保障しかねます。アポトーシス調節の軍事応用に反対します。本ホームページに示したアイデアによる特許または意
匠商標取得・非公開営利活動は著者の承諾を必要とします。
ハラキリ、CLARP、Mtd,CIDEサブファミリー,ARC,RICK,DIVAについては私と同様に共同研究者およびミシガン大学も特許権を有しま
す。Nod1は前者に加えましてHuman
Genome
Scienceも特許権を有します。BH3キラーを発現するアデノウイルスを用いた癌遺伝子治療法は私と同様に共同研究者およびミシガン大学も特許権を有
します。以上、研究成果に関する知的所有権に関するお問い合わせはこちらまで。
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