メイン リンク 目次 最 近出たアポトーシス関係の論文 私 の言いたい放題 ア ポトーシス調節因子一覧 新 規遺伝子 ミラー(/) What's New?

- 細胞の生死を制御する -


ようこそ、アポトーシスの世界へ.
図: アポトーシスを起こす細胞





 

ミシガン大学 医学部病理学  猪原直弘

計画細胞死・アポトーシスに関する日本初(1997)のホームページ 本項目はNetscape 3.0以上と1024x768以上のモニタを用いてご覧になられることを推奨します。ブラウザのウィンドウサイズが小さいと図が乱れます。 本項は宗教論でも哲学論でもありませんで、その手の方は勘弁してください。本ホームページは分野の発展するたびに付け加えてますので永久に工事中です。 以前掲載していただいた専門誌:細胞工学、日経BPムック、日経バイオ、実験医学

ニュース

Nod2欠損マウスを利用して腸でのNod2の役割などを調べた論文がScience に出ました。今後のクローン病の研究に大いに役立つものと思われます(2/4)・・・同時に奇妙な論文もいっしょに出ました(こちらは追試の広 場)

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 The current interest of my lab is molecular signaling of innate immunity mediated by Nod proteins. I am looking for a motivated candidate to join my lab and study the functions of signaling molecules in the immune system. This research project includes functional analysis of genetically altered mice in disease models and in vitro assays. The candidate should have a PhD or MD with experience in molecular or cellular immunology documented by a strong publication record. Information for the scientific topics of our field is available in our recent review in Inohara & Nunez (2003) Nature Review of Immunology 3, 371-382. More information for our publications is also available at http://www-personal.umich.edu/~ino/myself.html

Naohiro Inohara

Department of Pathology, University of Michigan

Contact information: ino@umich.edu




 
 
 
目次
 

 
 
 
 
 
 
死はどこから来たか -生命の進化と死-

 
 
 
死もまた生に必要 -計画細胞死-

 
 
 
細胞の自殺には共通性がある。

 
 
 
 
計画細胞死を制御する者たち
個体全体の統合性にとって計画細胞死はたいへん大切なので計画細胞死を調節する遺 伝子や因子には細胞の増殖とも関連するものもあります。一方で計画細胞死を専ら制御する遺伝子もいます。

例えば、Bcl-2そ の仲間です()。はじめ、タンパク質の一種Bcl-2を作る遺伝子bcl-2は 濾胞性リンパ腫の原因遺伝子として見つかったのですが、その後その仲間が報告されてBcl-2ファミリーというタンパク質群からなることがわかり ました。Bcl-2ファミリーのうち、Bcl-2やBcl-xLな どはアポトーシスを抑制します。Hrk(Harakiri), Mtd, Bax, Bakなどは細胞死を引き起こします(後述)。人工的にBcl-xL遺伝子を培養細胞に入れてやると培養細胞のアポトーシスは抑制されます。逆にHrk遺 伝子を入れてやると細胞死は促進されます。こうして細胞の生死を制御できます。実際の人体では遺伝子を出し入れしているわけではなく、遺伝子やその産物で あるタンパク質の働きが制御されています。いつスイッチオンになりオフになるかで生死を制御しているわけです。Bcl-xは脳で特に多く含まれています が、同 遺伝子を破壊したねずみは大量の神経細胞が死に、胎児の段階で死亡します(Bcl-2ファミリーの働きの詳細については後述しています)。

このようにアポトーシスを制御するタンパク質を大量に作ったり、逆にその遺伝子を破壊してその影響を調べることで、アポトーシスを調節するメカ ニズムがだんだんと明らかになってきました。
 
 

Bcl -2ファミリー  

哺乳類のもののみをあげた。この他、線虫Ced-9,Egl-1、 ゼノパスはxR1xRII、 ウズラはNR-13、 ウィルスはBHRF1,LMW5-HL,ORF16,vBcl-2な どをもつ。遺伝子の配列が決定されていないものはcDNAの配列をリンクさせた。独自の判断でBRAG1BNIP3/BNIP3Lは 加えていない。BH3サブファミリーには膜結合部位のある強力なもの(1)と膜結合部位のないもの(2)がある。

遺伝子名 その産物   

(タンパク質)

機能 その他
bcl-2 Bcl-2α 抑 制 濾 胞性リンパ腫の病因遺伝子
bcl-x Bcl-xL

Bcl-xS

Bcl-xβ

抑 制

促 進

促 進/抑 制

おおよそどこでも発現しているが、脳に特に多い。
立 体構造 (RasMolで 閲覧)
mcl1 Mcl-1 抑 制 マ クロファージ誘導遺伝子
A1(bfl1) A1(Bfl-1) 抑 制 GM -CSF誘導遺伝子
bcl-w Bcl-w 抑 制 精 子形成に重要
bax Baxα 促 進/抑 制 細胞の種類によって細胞死の抑制vs促進が変わるという
bak bak 進 /抑制 Bcl -xLとの結合像 (RasMolで 閲覧)。シグナルの種類によって細胞死の抑制vs促進が変わるという
bok/mtd Bok/Mtd 促 進 成体では卵巣に多い
diva Diva/Boo 促 進/抑 制 成体では生殖系に多い
bcl-g
Bcl-Gs/Bra
Bcl-GL
促 進
成体では精巣に多い
bcl-rambo
Bcl-Rambo
促 進

bpr
BCL2L12


harakiri Hrk/DP5 促 進 単BH3サブファミリー。誘導遺伝子
bik/nbk/blk Bik/Nbk/Blk 促 進 単BH3サブファミリー
bad
Bad 促 進 単BH3サブファミリー。Akt/PKCa/PAK1によってリン酸化されると無力化
bid Bid 促 進 細胞外からの細胞死誘導経路の補強
立体構造(1,2)
bim Bim/Bod L,M,S 促 進 単BH3サブファミリー。日 頃細胞骨格タンパク質に結合しているがIL3除去で細胞骨格から遊離して作用
bmf
Bmf
促 進
単BH3サブファミリー。日 頃細胞骨格タンパク質に結合しているが細胞同士の結合がむりやり離されると細胞骨格から遊離して作用
noxa/apr
Noxa/APR
促 進
単BH3サブファミリー。誘導遺伝子
bbc3
Puma/Bbc3 α,β,γ,δ
促進
単BH3サブファミリー。誘導遺伝子。p53による細胞死に関与


 
 
人も虫も死ぬのはいっしょ

 
 
 
殺し屋の姿 カ スパーゼとその調節タンパク質の構造−

 
 
 
死ぬきっかけは何? - カスパーゼ活性化タンパク質の調節機構(共通部分について)-

 
 
 
死ぬのと殺されるのは違う - カスパーゼ8と9-

 
 
レイドース失われたアーク(ARC) アポトーシス最期の聖戦 -死の受容体による細胞死の調節-

 
 
 
賛成の反対なのだ- Bcl-2とハラキリ -

 
A B
ハラキリ遺伝子を入れたもの(アポトーシスを起こしている) 対照(正常な細胞)
A, ハラキリ組み換え遺伝子を培養細胞に入れて一日後アクリジンオレンジエチジウムブロミドで染めたもの。核は凝縮し、明るく光っている。B, 正常な培養細胞を同様に染めたもの。上の写真のようなアポトーシスをおこした細胞は認められない。







ハラキリがBcl-2,Bcl-xLにBH3領域で結合している示す図
A, 実験に用いたタンパク質。抗体で検出できるようにHrkにFlagタグをつけた。下はBH3を削ったミュータント。B,Hrkと結合した Bcl-2, Bcl-xLを抗体で検出した。C,Bcl-2に結合したHrkを抗体で検出した。D,細胞抽出物中のHrk, Bcl-2, Bcl-xLを検出した(対照実験)。各パネル上部の"-, Hrk, ΔBH3, Bcl-2, Bcl-xL"は対照プラスミド、Flag-Hrk, Flag-HrkΔBH3, Bcl-2, Bcl-xLを作るプラスミドを導入した細胞からの抽出物を使ったことを示している。






 
 
Bcl-2ファミリーの生理的役割
 
次にBcl-2ファミリーの生理的な役割について述べます。

下流の因子であるApaf-1,Caspase-9,下位カスパーゼといった基幹となる因子がだいたいどこでもいつでもあるのに対して、Bcl -2ファミリータンパク質の量や活性は様々なシグナルによって調節されています。別の言い方をすると、恒常的に存在する下流の因子であるApaf-1, Caspase-9,下位カスパーゼといった基幹部分と上流の細胞の生死を決定するシグナルとを結びつける役割を果たしていると言えます。個別のBcl- 2ファミリータンパク質の量や活性を調節する因子はそれぞれ異なっており、この多様性ゆえに生命は細胞の生死を肌理細かく調節することができるのです。

現在までにbcl-2,bcl-x,bcl-w,A1,bax,bak,bad,bim,bid,mcl1を 欠くマウスが作られて、発生段階における役割を中心に解析されています。bcl-xmcl1欠 損マウスが胚発生段階で致死となる他は、仔ホモ接合体マウスが得られます。bcl-2の 欠損マウスは成熟TおよびBリンパ球、発生段階での腎細胞やメラノサイトなどのアポトーシスが増進することから、Bcl-2はこれらの細胞の生存に重要で あると考えられます。bcl-x欠損マウスでは神経系や造血系などの細胞でアポトーシスが増進していました。bcl-x欠 損キメラマウスでは未熟BおよびTリンパ球が半減しますが、bim欠 損マウスは未熟BおよびTリンパ球の蓄積しますので、両遺伝子が未熟リンパ球の生存に対して拮抗的に働いているようです。実際Bcl-2を余分に 作るマウスやBimを欠いたマウスでは、本来ならなくなる自 分自身を攻撃するリンパ球が死なず、自己免疫疾患を起こしてしまいます。bak,baxは生理的な役割がオーバーラップしており、両遺伝子を共に 欠くとき、様々な異常が生じます。Apaf-1の ないマウスのように指の間の細胞がアポトーシスを起さないので、水かきをもったネズミになってしまいます。p53依存性、ERストレスや成長因子除去によ るアポトーシスもなくなり、bax,bakがこれらのアポトーシスに重要であることがわかりました。以前、述べたように p53は遺伝子の傷ついた細胞でアポトーシスをおこして、癌になるのを防いでいますが、実際、baxを欠くマウスでは癌 になりやすくなり、MMP+大腸アデノカルシノーマで実に半 分はBax遺伝子が壊れています。ただ、神経ではbaxbakの両方を欠いても細胞死が若干抑制されますが、 caspase-9やApaf-1ほど劇的ではないので、神経などで重要な役割を果たしているアポトーシス誘導因子がいるみたいです。

Bcl-2ファミリータンパク質を欠くマウスを調べてみると、アポトーシスが予想外に精子卵子を作るのに重要な 役割を果たしていることがわかりました。精子形成の過程では精原細胞の多くがア ポトーシスを起こします。この時期にどうしてアポトーシスが必要なのかよくわかりませんが、正常な精子を作るのに必須の役割を果たしています。bcl-w欠 損マウスでは精巣における精原細胞のアポトーシスが促進されていて、bcl-wは精子形成のごく初期の過程でのアポトーシス抑制に 重要な役割を果たしていると考えられます。また、アポトーシスを起こす時期の精原細胞ではBaxの 強い発現が認められ、bax欠 損マウスは正常な精子ができません。Divaは さらに後期の精母細胞において特異的に発現していますが、この生理的役割もまだわかっていません。一方、卵巣でもアポトーシスは卵子を作るのに大切です。 卵母細胞のうち、排卵されるのはごく一部であり、ほとんどは周りの顆粒膜細胞とともにアポトーシスを起こします。卵巣顆粒膜細胞ではBaxBok(別 名Mtd)、Diva(別 名Boo) が強く発現しています。bax欠 損マウスでは本来死滅すべき濾胞細胞のアポトーシスが抑制されていますので、濾胞細胞の細胞死の調節にこれらのアポトーシス促進性Bcl-2ファ ミリーが関わっているらしいです。まだまだ調なければならないことが多そうです。
 

Bcl-2ファミリータンパク質の活性調節にはいくつかの方法があります。

第一の調節機構は量的な調節です。

タンパク質の量を決める重要な段階の一つは、遺伝子DNAからmRNAができる過程(転写といいます)です。血球系細胞は他の細胞から与えられるインターロイキンなどの生存因子 がなければアポトーシスを起こします。この生存因子の制御する転写調節因子によってアポトーシスを抑えるBcl-2ファミリータンパク質の量は調節されて います。bcl-2IL-2,-4お よび-7な ど、bcl-xIL-3,エ リスロポイエチンなど、mcl1a1GM-CSFな どによってmRNAの量があがります。bcl-xの場合、これらのシグナル分子は転写調節因子STAT ファミリーによって調節されています。実際、STAT5 を欠いたマウスではbcl-xの発現がなくなり、アポトーシスが起きます。

また、Bcl-2とその仲間がアポトーシスを調節している場所は、その種類で異なっています。こうしたBcl-2ファミリーの持ち場分担ができ る1つの理由は、Bcl-2ファミリーが、その働く組織や時期にだけ存在するように転写調節されているためです。bcl-2の場合、成熟T リンパ球で重要な役割を果たす転写調節因子NF-AT4に よって、bcl-xはさらに造血に重要な転写調節因子GATA-1に より転写調節を受けています。

A1の発現は炎症系のサイトカインやバクテリアリポ多糖(LPS)でも誘導されますが、これは転写調節因子NF-kB(調 節機構は後述)の活性化によるものです。NF-kBの活性化はときにアポトーシスを抑制しますが、A1の研究者はこの効果がA1によるものであると考えて います。
 
 

単BH3タンパク質の中にも転写がその活性調節に重要な役割を果たしているものがあります。

モデル系として使われてきた線虫では、体ができる途中でアポトーシスがおきますが、抗アポトーシスBcl-2ファミリータンパク質であるCED9が 恒常的に発現しているのに対して、単BH3タンパク質Egl-1が 組織・時期・性 特異的に発現してアポトーシスを誘導します。
ヒトの単BH3タンパク質ハラキリ(Hrk) やBimは、 アポトーシス抑制性Bcl-2ファミリータンパク質と全く反対の挙動を示します。つまり生 存因子の除去すると誘導される遺伝子です。
 

Bcl -2ファミリーの調節
注意!以下の生理的な役割・調節因子に関する報告には報告間で結果の一致 しない点が多く、100%信じられないものもあります
。(1) BlkはマウスBikオーソログの名前。最新の詳細情報はこちら
遺伝子名 機能 転写調節 上流調節因子 考えられる生理的役割
bcl-2 抑 制 Aiolos, Myb, Brn-3a, p53, Bcl-6, NFAT4, PAX8, RAR/RXR, WT1, PU.1, Pi1, STAT3, CREB, GATA-1, SP1/ER ILs, G-CSF(-), EGF, TGF(反 対),IGF-I, 女 性ホルモン, NGF リンパ球やメラノサイトなどの成熟に伴う細胞死抑制。生存因子依存的な未熟細胞の細胞死抑制?
bcl-x 抑 制 GATA-1, Ets2, NF-kB, Bcl-6, STAT3, STAT5A&B Epo, IL3, CD40, EGF, GM-CSF(反 対), TGF, 女 性ホルモン, 神経系や造血系などの成熟に伴う細胞死抑制。生存因子依存性細胞死抑制
mcl-1 抑 制 SRF/Elk-1, CREB GM-CSF, DNA 傷害, IL3, gonadotropins マクロファージ系の成熟に伴う細胞死抑制
A1/bfl-1 抑 制 NF-kB, STATs GM-CSF, LPS, CD40 マクロファージ系の成熟に伴う細胞死抑制。NF-kB活性化によるアポトーシス抑制?
bcl-w 抑 制     雄性生殖細胞の成熟に伴う細胞死抑制
bax 促 進/抑 制 p53(反 対) G-CSF, IL1 p53応答性細胞死。細胞死増強。生殖細胞の細胞死による選択
bak 進 /抑制 p53   p53応答性細胞死。細胞死増強。
bok/mtd 促 進     生殖細胞系のアポトーシス調節?
diva/boo 促 進/抑 制     生殖細胞系のアポトーシス調節?NF-kB活性化によるアポトーシス抑制?
harakiri 促 進   NGF/IL3除 去,β アミロイド 神経、造血系統の未熟・異常細胞のアポトーシス誘導?
bik/nbk/blk(1) 促 進    
bcl-Rambo