私の言いたい放題 - アポトーシス編-

大阪弁翻訳は→こ ちら

 
 
 
 

猪原直弘
インデックス

あれ?マウ スとヒトってちがう?? - 動物モデルを使った研究の落とし穴-


国 立大学独立法人化に対す る素朴な疑問

Nod

マッキントッシュの思い出

具体的でないものへの助成とその評価の確立を

ノーベル賞

テロをなくそう

『研究費』ウィルスに注意

クローン 病の研究で思うこと

遺伝子名 を全部覚えよう

お そろしや、遺伝的背景

J. Rev. Sci. Sys.

20世紀のア ポトーシス研究

がんばれ!元 Cell Pressのジャーナル!!

生 命情報学の目指すもの

論文 そっくりさん

マイクロア レイのほしい人、商売に踊らされているだけでは?

一 般近接活性化理論の提唱

SFの世界へ (2) -人類DFF45改造計画-

石油代替品の開 発を。 儲かりまっせ

あんまり役 立たない(いやひょっとしたら役立つかもしれない)分子生物学的倹約方法一覧

インターネッ トで日本のジャーナルを救える

私にとっての真 の2000年問題

SFの世界 へ(1) 人類Apaf-1改造計画

On-line 投稿のやり方 (特にJ.Biol.Chem.)

守秘義務は 必ずしもタダではない

エッペンだこ -もしや同じ悩みを持っていらっしゃる方がいるのでは、と思って書きました

究極の プラスミド送付 対 至高のプラスミド送付

熱 耐性高等動物の全ゲノムをシーケンスしよう!儲かりまっせ

タ ンパク質の大量発現で機能を見るなんてけしからんーーー!(の反論?)

三次構造のデータ 1年間保留制度廃止を

クローン技 術の人間への応用規制に反対

科学 ジャーナルの審査(レビュー)制度のインターネットでの開示を

いか さま研究試薬に注意

日本の研究 者の独立性改善を

文 部省の学習指導要領と教科書検定の適応範囲に限定を

ア ポトーシス調節因子の名前は統一できるか

Bcl -2ファミリーのプロセシングは本当に生理的に重要か

ミシガン大 学で驚いたこと

電子レンジ の極意

考案:完全自動マ イクロあらい(IP)装置!

他の人のいい たい放題
 

 
 
マウスとヒトってちがう?? - 動物モデルを使った研究の落とし穴-
進化や生物の多様性って本当に面白いですね。いろんな生き物がいて、いろんなことができて。

でも、ついうっかりこれを忘れてしまう。特に医学系で動物を使って疾患モデルと称して研究していると、どうしてもヒトと使っている動物の共通点だけを強調 して考えるので、頭っから、「ヒトと同じで、疾患の治療に役立つ!」と堂々と謳ってしまう(笑)、特に科学助成金申請書類中なんかでは。もちろん、ヒトと 共通の部分に絞って研究さえすれば、医療に役立てる重要な情報が多く得られます。1980年代、基本転写調節因子の働きの研究で、ヒトもコウボもハエもみ んな同じところがあるというのを見て本当に感動を受けました。でもコレって、実際には病気を理解するためには、健常に働いているイキモノの体のつくりやし くみがどうなっているかを最初に理解することが必要で、ふと気がつくとその動物固有の現象を追っていることになってしまいます。もっとも逆に「進化ってす ごい!」という感動とともにです。

計画細胞死の分野では、線虫の遺伝学が、今の「単BH3タンパク質(EGL1)→×細胞死抑制性Bcl-2ファミリー(CED9)→×カスパーゼ活性化因 子(CED4)→カスパーゼ(CED4)」の情報伝達経路の概念の確立に中心的な役割を果たしました。自分自身もその中のい くつかの仕事にかかわりました。この線虫での細胞死の調節の基本はこれらの因子が互いに直接結合して情報経路上の次の因子のはたらきを調節するこ と。このことがわかったときには「あ あ、これでアポトーシスのすべてがわかった」と早合点したものです。ところが、その後、ヒトではミトコンドリアから流れ出るチトクロームcが Blc-2ファミリーとCED4のホモログであるApaf-1との間に介在して、これがアポトーシスの調節にたいへん重要であることがわかってきました。 実際、自分自身の手で追 試に近いようなものをやってみて、「ああ本当だ、線虫とヒトは違う!」と感銘を受けたものです。このときはまあ線虫だからしょうがないかな(意味 不明)、と思いました。ショウジョウバエにもApaf -1のホモログがあります。これはもう構造的にも完全にヒトのApaf-1そっくりです。ところが、未だ、このハエのApaf-1がチトクローム cで制御されているという直接的証拠が報告されていません。ひょっとしたら、ハエのApaf-1はチトクロームc以外を認識する?このときも、まあ、ハエ だからしょうがないかな(汗)と思いました。動物モデルに懲り始めたのはゼブラフイッシュからです。ゼブラフィシュのASC の介する情報伝達経路を解析したところ、ヒトのcaspase-1とそのホモログCaspyでは構造が違う!それに対するASCの結合も頭(N) としっぽ(C)が、反対に結合する!信じられない。ゼブラフィッシュって同じ脊椎動物なのに・・・。Caspy のノックダウンをしてみると、caspase-1欠損マウスでは見られない軟骨形成に異常が起きます。caspase-1やASCは炎症で大切な IL-1βを前駆体を切断して作るのに重要な役割を果たしているといわれているのですが、よくゼブラフイッシュのIL-1βの構造を見ると、なんと caspase-1切断部位の配列がない!さらにニワトリのIL-1βでもこれは認められません。に、にわとりもーっ!「で、で、でも所詮、線虫、ハエ、 魚、鳥だからなあ。やっぱり欠損マウスの解析が一番」と甘ーくこのときも見ていました。Nod2のリガンドMDPは免疫刺激物質として知られているのです が、これでヒトの細胞を刺激するとNF -kB活性化がおきて、サイトカインやキモカインの分泌が起きます。ところが、マウスの細胞を同じ濃度のMDPで刺激してもほとんど応答しませ ん。「これは生理的か?」と思える100〜1000倍の濃度がばーっと入れるか、他 の刺激といっしょに入れて初めて応答します。マウスとヒトでこんなに応答性が違うものか・・・。さらに、ASCの阻害因子パイリンの変異は家族性 地中海熱(FMF)を引き起こしますが、マウスのPyrinにはヒトのC末端側にあるドメインがありません。しかも、その場所にFMFで頻繁に認められる 変異が存在するんです。こりゃこりゃ。マウスもヒトとこんなに違うのか・・・

と、思っていたところ、衝撃の論文がっ!!クローン病と同じ変異をもつマウスの細胞をMDPで刺激するともっ とNF-kB活性化されるという報告が出ました。ヒトのクローン病患者さんからの細胞ではこのようなことはおきず、逆にMDP やその関連物質に応答しません。まあマウスのコンストラクトがまともかどうか疑わしいところもありますが、もしも本当だとするとマウスはヒトのク ローン病疾患モデルに不適切となってしまいます。いやあ、本当かなあ・・・この分野ではおそろしく影響力の強い研究室からの論文なので、誰かこのグループ からマウスをもらって、再試とウェスタンブロット解析を行ってもらいたいところです。もしも、この論文が本当だとすると内容は「マウス学」的、つまりマウ スだけのものである可能性があります。ああ人類は何度おなじ過ちを繰り返せばすむのでしょう。自分のことは棚にあげて、訴えるものであります。

(2005年2月)


 
 
国立大学独立法人化に対する素朴 な疑問
4月から日本の国立だった大学は独立法人化されました。いい点はたくさんあると思うのですが、もっと素朴に疑問に感じるのは・・・

「どう して、国立大学の研究者だけ生活が不安定になるのか?」

ということです。任期制・評価をはじめ、多くが当然いままで安定していた職として選んで就職したのにもかかわらず、不安定化したわけですから、それに見合った代償が払われたのでしょうか。確かに再評価は必要だと痛感しますが、それなら他 の公務員には再評価は要らないのか、なぜ任期制にならないのか、と疑問がつきません。

一方で、国家公務員として就職したとき、この職業の安定性について疑問を抱いて念書を国や上司からとった人がいたらおもしろいのにな、とへんな想像してし まいます。とりあえず、不安定性の補償って、されているのでしょうか。どなたか、教えてください。元々営利団体である企業に比べて給料が少ないのにわざわざ大学に就職しているからには、純粋に崇高な学術的興味 や自己犠牲的・社会奉仕的な意味からの仕事を目指しているわけですから、この不安定化は甚大な意味合いを持っていると思います。

それともう一つ気になるのが、もともと大学は営利を上げる性質の団体ではなく、また、研究活動は、特に基礎研究は必ずしも営利を求めるものではないのに、 どうして評価にこれらの性質を加味した要素も用いられるのか、ということです。この場合、営利は個人にもきちんと帰結するべき問題ではないでしょうか。な お、そのための方策の1つとして、知的所有権の保護がありますが、単に特許申請し、管理して企業との受け渡しをやる部署を設けるだけでは裁判に勝てませ ん。法的に保護するためには各学科ごとの弁護士が必須だと思います。委託弁護士を設けるところは、費用の支出の点から独立法人になってからではむずかしい 大学もあるかもしれません(ほとんどの大学?)。こうしたことを含めてシステム整備不良のまま、いきなり荒海にぽーんと投げ出された同研究者たちが、独立 法人化のために新たにかかえこんだ類の仕事に対して、補償はされているのでしょうか。

もともと初等・中等教育の学習量低下とあいまって、この大学の研究者の不安定化により、日本の科学は100年の再生不能点を超えてしまったのではないかと 不安です。
改革しなければならないところはもっともっとたくさんあるのに、わけのわからないところから変革が始まった・・・そんな印象を受けます。

(2004年4月)


 
 
Nod
最近、不思議な現象に困惑しています。初めの人に「あのNodで有名な○○先生のご研究室の猪原さんね」と言われて、 しばらく うっとつっかかってしまいます。日本の方には学会にも呼んでいただき、私とNodの関係をよくご存知なはずですが、そういえば驚いたことに欧米である Nodタンパク質関連の国際的ミーティングで私が呼ばれたことは確かにありません。独立してラスト・ネームになった仕事でもです。仕事ほぼ100%私でも 発表は、呼ばれる元ボス。同じ大学、同じ学部に長い間いると本当にいろいろと便利ですが、驚いたことに、同じ大学内、同じ学部内、同じ学科内の人やチェア マンから言われます。そういえば、もはやグラントさえ書けないBimp/MALT1Ciper(Bcl10)の論文の後 で、たしか日本の○○先生からご相談受けてプランから実験の大半を仕上げたんだっけ(ちなみに私は1st authorでもlast authorでもありません)。Nod2のことを考えると・・・うーん・・・引越しか転職の時期かな?米国内にいい職があったら誰か紹介してください。い やいや、まずしい私の英語を補ってくれるのは彼しかいないしなあ・・・困った。

(2004年1月)


 
 
 
マッキントッシュの思い出
ミシガン大学癌センターと付属病院でついにマッキントッシュ(マック)のネットワーク保守がなくなることになりまし た。事実上のマック時代の終焉・・・感慨ぶかいです。

日本にいたときは周りはマックだらけでした。医学部は特に その傾向が強かったように記憶しています。現在でもマックを利用して私のホームページをアクセスして下さっている方は15%に達します(一般的なサイトは すでに100台に2台程度)。私がミシガン大学に来た前世紀(1996年)にはここにも多くのマッキントッシュがありました。DOS, Windowsでしかプログラムを組んだことがない私は1995年にマックもやってみようと奮起してSEを買いました(たしか当時16万)。ところがプロ グラム環境はかなり不便で、リソースの呼び出し方(DLLの参照の仕方)がかなり異なることでぜんぜん進まず、そのうち、米国に移ったため結局一年もしな いうちに投資がパー(PCにも100万ぐらいは投資していたけど、これもパー)。というのは、本体が重くて引越しに際して捨てざる得なかったのです(引越 しで失ったパソコン資産だけでゆうに200万かな・・・)。加えて、米国では当時インターネットが普及していたためスタンドアロン実行で、しかも機種依存 性の高いプログラムの価値はほとんどなくなっていました。

ところがこうしたパソコンのネットワークの時代に大きな問題が出てきました。ネットワークにWindows系とマッキントッシュ系が あって、当時ほとんど互換性がありませんでした。そのころのWindowsはドロー系が弱かったので、「マックドロー」と呼ばれるソフトを中心にマックの ソフトをよく活用しましたが、事務系統は全てWindowsなので、書類等のフォーマットの変換などがたいへんでした。

今世紀に入ってWindows系のドローソフトが格段によくなり、ついにどうしてマックが存在するのか、というところまでになりまし た。Windowsを主に使いながらも「マックドロー」が離せなかった私はマックを使い続けていましたが、去年、研究室の全てのマックのフロッピーディス クが使えないという非常事態が起きて(笑)、フロッピーの使えるマックをさがして回るハメになりました。ところが・・・・2年前と比べてマックがなんと所 内に少ないことか・・・放浪の末、愕然としました。

こうしてマックの時代は終わりました。今振り返れば、ファイル互換性に苦労し、パソコンに投資し、マックしか動かないソフトを買って、 フリーズと戦ったのは、あれはなんだったんでしょうか。

そして去年、Windows XPが登場し、使ってびっくり。フ リーズしない描いて描いて、書いて書いて・・・いきなりフリーズ、 全てが水の泡・・・マックを使った方なら経験がありませんか?リソースのリミットがあったWindows 95/Meを長らく愛用していた私はアプリケーションがほとんど無限に開ける環境に驚愕しました。また、セキュリティもいくつかの手法の組み合わせでかな り上げられます。・・・マックを使っているあなた、ラボに配っているあなた、かなり損してますよ。
    

(2003年3月)


 
 
具体的でないものへの助成とその評価の確 立を
ライフサイエンスへの研究助成を見ていると、いろいろなキーワードの呪縛のようなものがあるように思います。「ポストゲノム」「脳の 知る・守る・作るの研究」「バイオインフォマティクス」・・・こうしたキーワードの向こうにオーダーメイド医療、ゲノム創薬、バイオリソースのインフラ整 備といったゴールがあります。これらは過去の分子生物学など多くの基礎発見に基づいてのことです。新たな発見と発達は過去の蓄積に基づいて成されるのは当 然です。しかし、際限なくこうした既存の基礎に依存することで何かを見失っていないか、不安です。つまり、新たな基礎が発見されれば世の中の研究の価値は 大きく変わるはずです。それこそ、科学そのものの発展ではないでしょうか。まだ概念ができていないものを見つける、つまり分野を作ると、そこには新たな価 値が生まれる。具体的でないもの・説明できないものへの助成こそ大切ではないでしょうか。新規なものを調べる初期では、既存のものの一部ではないか、それ と似たものではないかと類推し、報告します。もちろん、そういった部分もありますが、ひとつに分野とかキーワードとかがない、または作る以前はこうした研 究が受け入れられるためには既存の研究とのすりあわせが必要だからです。このすりあわせをもしもしなかったら、この研究は認められない、という恐怖が新た な発見には常に伴います。最終的な報告結果では当然であっても、計画段階のある時期に、「これはいける」と思われるものでも認められないとどうしても先に いけない場合が多いです。こうした研究がどれだけ世界に眠っているか・・・。
いまや大学といえども浮浪民並の扱いをうける日本の研究者ですが、それでも米国より雇用関係がまだ安定しています。夢を、科学の夢を育てやすい環境をフル に生かせたらいいのに、と対極の世界から見てふと感じます。なお、こうした科学の方向性に関するリスク評価を学術的に研究すると、断然面白い結果が出ると 思います。

(2002年11月)


 
 
ノーベル賞
ボブ・ホロビッツ博士にノーベル賞が授与されました。これは彼個人はもちろん、お師匠・お弟子さん、アポトーシスや線虫に携わる者、 彼を中心に歩む学会への社会の評価を向上させるものとして大いに歓迎されるものです。表彰はかくあるべきものですね。

(2002年10月)


 
 
 
テロをなくそう
米国同時大規模テロ事件・・・多くの方の命が一瞬にして失われてしまいました。これを祝福するパレスチナの人々の映像をみると悲しみ と怒りを通り越して、ではどうしたらいいものか、しばらく考え込んでしまいます。のっとり航空機による攻撃という未曾有の事態を受けて、いままで多くのエ キサイテイングな情報を放ってきたCold Spring Harborのアポトーシス・ミーティングが延期になりました。失われた人命の多さに比べればたいしたことはないですが、やはりせ つなさを感じます。ぜひ、テロや戦争のない社会を実現してほしいものです。また、ウィルスやその他の手法を用いたサイバーテロも後をたちません。20世紀 の後半から地域的紛争を超えたこの手の問題が拡大しつつあります。一部の主張を通すための強制行使に対して強く反対します。
 
 
後記: Cold Spring Harbor Meeting

2年に一度のCold Spring Harbor Meetingへ行ってきました。学会中、近くにまたまた飛行機が墜落して一時学会の会場ではスライドのかわりにTVニュースが流されましたが、無事何事 もなく終了しました。

晩餐会には大きなロブスターが出ました。イセエビが大好物の私は大喜びで、開けてみると・・・あらら、中はほとんど空っ ぽ、旬がすぎていたのかな。少ない肉はおいしかったですが、大食漢の私にはイマイチでした。しかし、コックさんもたいへんだったでしょう。少ない肉のロブ スターをどう料理すればおいしそうに見えるか、頭をひねったにちがいありません。このロブスター料理を見て「肉は少ないけどよくぞここまでした!いろいろ なテクニックの組み合わせで今後が楽しみだ」と思うか「ロブスターにこだわらず、仕入れ段階で他の食材に切り替える思い切りがなかったのかな」と思うかは 人それぞれでしょうが、なにはともかく350人の参加者の胃袋を満たして生かさなければならない、という現実もそこにはあったのでしょう。

今回の学会の特徴は「Post-KO」ではな いでしょうか。4年前の学会では次々と新しいアポトーシス調節因子が報告され、2年前には主要因子のKO(遺伝子欠損変異導入)マウスが報告され、そして 昨年までにかなりのアポトーシス調節因子のKOマウスが作成されました。こうしてPost-KOの時代が幕を開けました。Post-KOでは、個々の因子 がアポトーシスにどうかかわっているか、または、個々の因子に制御されている計画細胞死が個体にとってどういった生理的な意味合いを持っているかといった 解析が残されていました。この点がBcl-2ファミリーのBaxのBakのノックアウトマウスを中心に初日の話題になりました。また、アポプトソームの電 子顕微鏡像が報告されて、荒削りながら同複合体の形を知ることができるようになりました(ただ、イメージの平均化の戦略に由来する結論やその他の矛盾に問 題を感じました)。Clarp(c-FlipL)によるアポトーシス活性化機構もYangらがきれいに示しました。残念なことにTNFαファミリーを解析 した演題やポスターが少なく残念でした。

それにしても今回の学会はおばちゃんパワー爆裂でした。大の男どもは、テロのせいか、post-KOのせいか、ほとんどい ませんでした。Horovitz, Wang, Leonardo, 辻本, 清水, 須田、各先生が結局来られなかったのに加えてGreen, Reed, Dixit, Tschopp, Nunez, Mak, Goeddel, Marino, Abrams, Wallach, Fesik, Alnemri, Salvesen, Strasser・・・日本の多くの先生・・・最初から不参加でした。それとApoptosisミーティキングをKeystone, Gordon, CSHと同じ年にやるのはやめてほしいものです。
 


スライドは若干見づらいですが、全トークはインターネットを通じて公開されています。
 
アドレスはhttp://nucleus.cshl.org/leadingstrand/pcdparticipant.htm

Real Playerで閲覧できます。なお、生まれて初めて英語で学会報告した私のものは恥ずかしいので決して見ないでくださいね。

追記:2001年11月

(2001年9月)


 
『研究費』ウィルスに注意
先週、『○○ Grant・・・』というEメールが見ず知らずの人(中国人)から届きました。それには”Grant.Doc.Pif”添付書類がありました。Docは Windowsではマクロソフトワードの書類を示すために、一見研究費関係のドキュメントファイルに見えます。しかしPifは設定実行ファイルのひとつで あり、研究者を狙った悪質なウィルスであると思われます(「思われる」というのは、クリックして感染を実際に確かめたわけではないからです)。皆さんもぜ ひ気をつけてくださいね。また、ウィルス感染を避けるために、ぜひ拡張子を表示しましょう。マックの場合は・・・この手の差をどう見分けて回避するんだろ う・・・どなたか教えてください。
 
 
追記: その後に来たウィルス
その後、来たものだと

「請求書.XLS.PIF」・・・いかにもホテルの請求書風に見える。もしも日本にいたらクリックしていたかも
「readme.exe」・・・たいへん一般的なもの
「○○.Vcf」・・・Nimdaウィルスのバリエーションか

あと、意味のないファイル名のものとか・・・

追記:2001年9月

(2001年7月)


 
 
クローン病の研究で思うこと
ヒトの全遺伝子の構造が決定され、病気がどの遺伝子と密接に関係しているかというのが容易に調べれるようになってきました。Nod2 もこの恩恵を受けてクローン病の病因遺伝子であるらしいことが明らかにできました。ここで注目したいのは、一見正常な人でもクローン病と同じ変異を持って いる方がいらっしゃり、特定の細菌LPSに刺激されなければ病気にならない可能性がでてきました。つまり、個人は異なる遺伝子DNAを持っていますが、あ る遺伝子が原因で特定の条件・環境に置かれたときにのみ病気になる、そんな病気のひとつが今明らかになったわけです。同様のことが、ヘリコバクター・ピロ リ(通称ピロリ菌)との関係が知られ、抗生物質による治療の可能なMALTについても言えます。菌による刺激がなければMALT関連遺伝子に変異があって も活性化がない可能性が考えられます。おそらくこうした「条件つき」の病気の存在がどんどんと明らかになり、自分の遺伝子情報を知っていることでこれらの 病気にかかるのを避けることができるようになるものと推定されます。こうした成果は個人のヘテロジェネイティをゲノム規模で決めようとする一連のプロジェ クトの正統性と必要性を裏付けるものであると考えております。一方でとりあえず特定の遺伝子を至急重点的に個人別に調べてデータベースを作成し、個人の治 療に役立てることも重要であると考えています。

(2001年5月)


 
 
 
遺伝子名を全部おぼえよう
ヒトの遺伝子がほとんど完璧に決まりました。遺伝子数はわずかに3万ぐらいと結論付けられました。漢和辞典に出ている漢字と同じぐら いでは。それなら、汎用する漢字とその熟語(遺伝子の組み合わせ)ぐらい暗誦できますね。生命科学を目指す人で、昔代謝マップを全部覚えた人ならたやすい こと。また、簡単な大腸菌、酵母、ショウジョウバエはもちろん、植物も第二言語を覚える感覚で覚えられますね。30億塩基の情報量って240M(メガじゃ なくてエム)バイトしかないんです。圧縮かけなくても旧式CD-ROMにはいります。
 
 
追記: 報道ミス? 遺伝子数は本当に3万?
Celera社のデーターベースが公開さ れました。ところが検索してみると、いくつかの遺伝子が見つかりません(たとえばcaspase-3,CIDE-A)。全遺伝子配列が公開というのは、報 道ミスのようです。それよりもなによりも、遺伝子数は本当に3万でしょうか?もしも、この公開部分が論拠ならもう少しあるように見えますが(4万?)。計 算された読み枠もかなり雑に見えます。また、相同性検索による分類もいいかげんで、いくつかのファミリータンパク質を同じ号のScienceにある Kooninの論文と比べると5%ほど少ないです。
(2001年2月)
追記2: やっぱり、そうでしたか・・・
Cellに投稿された方がいます。 やっぱりそうでしたか・・・・セレラの株が下がる? 2001年
(2001年8月)

(2001年2月)


 
 
 
 
おそろしや、遺 伝的背景
Keystone Meetingへ行って来まし た。今年は以前の報告が再評価される年でした。例えば、Avenが転写活性化因子だとわかったり、XIAPはApaf-1調節にあまりかかわらず、 SMACを除去してもそんなに効果がなかったと報告されたり。Caspase-8を除いたS100でもBidが壊れるけど、Caspase-3を除くと Bidが切れないとか。Bax複合体はVDACに結合しないとか。なかでも、遺伝子欠損マウスの遺伝的な背景を変えると遺伝子欠損の影響がたいへん異なっ ているということには驚きました。tBidが死受容体とミトコンドリアを繋げる、必須の因子とした話が数題続いたあとだけに会場のショックはすごいもので した。

某Apaf-1発見者:「マウスって本当にApaf-1以外にCed4オーソログないよな」(不安げに)
私:「え?ないですよね。先生の結果って、Apaf-1がCED4と同じ生理機能を示すことを示しているじゃないですか」
某Apaf-1発見者:「そうだよな、ハハハ。いや、ちょっと確かめたかったんだよ」
私:「・・・」

うーん、気持ちがわからんでもない。
 
 

Keystone Apoptosis Meetingでの報告

遺伝子 以前との違い
Apaf-1 他の遺伝的背景にしたらほとんど胚致死にならなくなって、いろいろ解析できた
Bid 他の遺伝的背景にしたら全く正常。
Bim 血清除去の細胞死は野生型と同じ。

・・・



 

(2001年1月)


 
 
 
J. Rev. Sci. Sys.
出版者のみなさん、既存ジャーナルのレビューシステムの研究とか、レビュアの公開や論文採用システムなどの新たなシステムを専門に研 究するジャーナル(仮称 Journal of Scientific Review System)を作ってもらえません?
 
 

- 第1巻 1号 サンプル -

CONTENTS Title 著者 ページ
Reviews C○llの論文審査システム ○○○(C○llのエディタ) 1
Articles レビュア名公開のジャーナルの採算性と科学的価値の補償点を求める式 △△△ 12

Impact Factorと被引用文献の再被引用率に関する研究 ○■△◆ 17

○×国のゲノム研究グラントのレビューシステムの変遷とその効果 ××○○ 24

・・・





News Journal of ××のチーフエディタに○○氏就任 ○×△ 211

・・・

とりあえず、この雑誌のレビュア名は完全公開、記述言語は英語、On-lineのみとするってのはどうでしょう。私が図書担当者ならこ んなんあったらぜひほしいです。

(2000年12月)

◆ Reference

インパクトファクターとは 何か by 山崎茂明
インパクトファクター in 国立成育医療センター研究所
科学専門雑誌の「インパクトファクター」 by 細川啓
"Bad peer reviewers" in Nature (2001) 413, 93
"Editors' requests of peer reviewers: a study and a proposal" by Frank. E. Prev Med 1996 Mar;25(2):102-104
"Variation in journal peer review systems. Possible causes and consequences." by Hargens LL. JAMA 1990 Mar 9;263(10):1348-1352
"Catch 22 in the NIH peer review system." Rosenberg E. Med Hypotheses 1976 Jan;2(1):27-28

 
 
20世紀のアポトーシス研究
今世紀も残るところわずかとなりました。自分たちの研究してきたアポトーシスにとって20世紀はどんな世紀だったのでしょうか。下図 はPubMedで"Apoptosis"とか"p53"などの単語を要旨に含む論文の割合の相対的推移を示したものです。「アポトーシス」は今年2000 年についに全論文の2%にも達しました。この数は「ホルモン」とほぼ同じぐらいのかずです。アポトーシスを冠する論文は1990年代になって急速に増え て、1996年ごろにもっとも急激に伸びました。そして今年ほぼ分野は成熟しました。分子生物学の先駆分野を代表する単語「Promoter」を研究する 転写調節の分野が50%確立するまで10年ぐらい、さらに先駆の「ATPase」や「cAMP」の分野はもっとかかっていますが、「アポトーシス」や「癌 抑制遺伝子p53」ではわずかに5年でした。別の言い方をするとATPaseやcAMPを10年かかって研究していても、まだ分野が50%確立されていな かったのに対して、近年勃興したアポートシスのようなフィールドは5年で、つまり大型グラント1.2〜2ラウンドの期間で50%成熟したことになります。 この分野の加速傾向から見ると10年後には新分野の成熟は1.5〜2ラウンドの大型グラント期間でほぼ終了すると予想されます。このことは1970年代に cAMPやATPaseの研究を20才代後半ではじめても教授になるまで続けられたのですが、21世紀初頭では1ポジションが約1分野を仕上げる時間であ り、2つ目のグラントが切れるころには、そのグラントで関連の新規分野を研究していることとなるとも考えられます。


 
 

(2000年12月)


 
 
 
 
 
がんばれ!Cell Pressのジャーナル!!
Cell, Immunity, Mol. Cell, Neuronとすばらしい質の論文を次々と載せてきた元Cell Pressのジャーナル。まさに我々分子生物学者の憧れの的で、Nature, Scienceとちょっと違った印象のあるジャーナルでした。今は学術論文の質も絶対評価される時代となりました。研究者や研究機関の中にはジャーナル自 体のImpact Factorをかなり重んじる方がいらっしゃり、Cellはその頂点に立つものでした。Cellに載った論文は間違っていても、次の論文で徹底的に検証す る必要があります。ところが、最近これらの元Cell Pressの出す論文の質に変化が現れました。Cellファンの私にはショックです。原因ははっきりしています。ぜひとも根本解決を!がんばれ!元 Cell Pressのジャーナル!!
(2000年10月)
 
追記: う〜ん、Cellがぁ・・・
今月ついにCellがCurrent Biologyと並べられてしまった・・・。文字が固定フォントなのでブラウザでの閲覧もむずかしいです。Cellは前世紀末期に果たしてきた役割を終え たんでしょうか。うわさだとImmunityはまだ研究者たちだけが論文採用の合否を決定しているそうです。
追記:2001年3月

 
 
 
生命情報学の目指すもの
今まであまりに画期的で儲かりそうなのにもかかわらず、社会の基盤がなかったのでアイデアをしまっていたものがあります。

ヒトのゲノムDNA配列の決定がほぼ終わりました。今、生命科学は新たな段階を迎えていますが、これは情報学にとっても大きな転機なの です。遺伝子の配列がどんどん決定された1980-1990年代にかけてタンパク質の一次構造の相同性解析の技術が飛躍的に向上しました。その結果、はじ めキー配列が与えられればこれを元に相同性のある配列を発見し、これらをもとにドメイン構造やファミリータンパク質の共通性が求まります。もしも、ファミ リータンパク質の一つがなにかの受容体や転写調節因子で、結合因子との共結晶ができているならば、その配列から他のファミリータンパク質の結合相手や結合 DNA配列が予想できます。予想した結合相手をデーターベースで探し出し、これをさらにキーにファミリーを見つけてきます。

これらは生命情報学の基礎ですが、その中で使われるアルゴリズムは次世紀の一般的な情報学の基礎でもあるのです。私がこれに気がついた のはずいぶん前でちょうど擬似会話プログラム"Dancing with Waves"(1996)に簡易音声認識ルーチンをつけようとしたときです。 例えば、このプログラムは以下の応用が可能です。

まず、音声認識に使えます。今までの音声認識の最大の問題は、波形パターンの一致を見つけるアルゴリズムが極めて弱かったために、特定 の人やフレーズでのみ有効でした。ところが、PSI-BLASTのようにファミリー化された「似た」波形を求めるアルゴリズムなら、よりフレキシブルに音 声をできるのです。

次に、概念認識と言語認識です。同様の手法により、関連のある単語をファミリー化し、認識することができます。また、データーベースで 見つけた関連単語から、コンピュータは他の単語へのリンクを計算・作成し、これをキーに推論して最適の関連概念を作ることができます。ちょうど、共結晶の データで相手の形を推論するのと同じことができるのです。これなら、例え、入力者が「あのー」とか「ええと」を汎用しても、途中無関係な言葉や間違った言 い回しをしても(実際には結構多い!)正確に認識できるようになるのです。また、違った言い回しをしてもコンピュータが理解できます。これは音声入力に限 らず、スキャーナー入力についても同様のことが言えます。

とりあえずの課題はこの認識ルーチンの高速化にありますが、おそらくこれはマルチCPUにより安価に解決できるものと考えられます。 ちょうどサブプロセッサを用いた処理と同じ考えです。サブプロセッサをいっぱい作るようなものです。こうした発想を実現するソフトを多数作るには現在のス タンドアローンが基本となったOSではむずかしく、開発が急がれます(この点では社会的基盤ができてないですが、認識ルーチンを開発するなら今でしょ う)。

おそらく、この技術的困難を解決した会社はかなり豊かな会話やしっかりした判断のできるコンピュータを開発できるでしょう。基本的な部 分はホストで処理し、端末を小型化すれば、スタートレックのバッチのようなものも簡単にできるはずです。そして、これが自己思考型の、つまり演繹型思考の より得意なその次の、さらに次の世代のコンピュータと社会の基礎となると考えています。

ソフトハウスさん、儲かりまっせ。組みませんか?

 (2000年9月1日。本アイデアは知的所有権で保護されています。)


 
 
論文そっくりさん
IAPに結合・阻害することでアポトーシスを促進するというSmac/Diablo。どの程度生理的に意味あるかははっきりしないも のの、にわかに最近注目されています。そこで出た二つの論文。見てびっくりしました。図がそっくり!Srinivasula et al. J. Biol. Chem.の図2・3とChai et al. Natureの図3・4。得られたデータが似ているのはさておき、略図のプレゼンまでそっくり。Smac/Diabloの最初の論 文が7月7日に出て、「報告された配列を元にPCRでとった」発現プラスミドを用いた実験で8月18日にJ.Bio.Chem.がアクセプトというのもす ごいです。競争の激しい分野ではたまにこういうことがおきます。

 (2000年8月)
 

後記:ええ?!私のも?!
げげっ!!!!なんと、上記の研究室から今度は私の論文そっくりさんが出ました。いつ投稿したんだろう?? J.Biol.Chem.はいまや印刷中でも読めます。私の論文は6月6日に出て・・・あちらが9月8日。いつ投稿されたのか大変興味深いです。そこで、 オンラインジャーナルin pressについて大きな疑問が生じました。もしも後の場合、印刷されるまで投稿OKなんでしょうか??・・・ぜひ、J.Biol.Chemや Proc.Natl.Acad.Sci. USAなどに問い合わせたいです。
(2000年9月)

 
 
マイクロアレイのほしい人、商売に踊らさ れているだけでは?
ヒトのゲノムシーケンシングが済んで時代はポストゲノムの時代・・・その中で注目されているのがマイクロアレイ・DNAチップ。でも これ本当に期待ほど有効なんでしょうか?
誰もが最初に思い浮かべるのは、疾病と関連して異常細胞と正常細胞の遺伝子発現パターンを比べてみるというものです。使っている研究者が多い分論文も多い のですが、インパクトの強いジャーナルを検索したところ、8月現在、たったの25報。で、Scienceなんかの内容を見ると・・・熟練した人が普通の Differential Hybridizationでやった方が安くて、早いんじゃないの?といいたくなる人もいるのでは。それと、私の考えている「わかる」というのとちょっと 定義が違うような・・・細胞が丸くなった、堅くなったのを別に言いまわしをしているだけのような。診断や根本治療の難しい疾病の対症療法を考えるとき重要 かも。また、今まで言われていた遺伝子のシグナル応答の大規模な追試という意味で 重要であると考えられます。

とりあえず、みんなが機械かチップを買うんじゃなくて、cDNAあれば安価にそうしたサービスをする会社や機関を気軽に利用できるシス テムを作ることが重要ではないかと思います。 (2000年8月)
 

後記:マイクロアレイの公共データベースを整備しよう
マイクロアレイのデータを得てもそれを比較できるまともなデータベースが事実上ありません。例えば、TNFα とIL-1βによって誘導される遺伝子を比較しようとしても、他の研究者のデータを集めたデーターベースがありません。このため、マイクロアレイ のデータは他のデータベースにリンクしていますが、逆に発現調節を示すデーターベースとリンクしたものがほとんどありません。
ぜひ、データベースとともにそのユーティリティを整備してほしいです。
(2001年8月)

◆ 関連項目

分 子診断としてのマイクロアレイの価値 by Bustin SA, Dorudi S.(2002)
Post-analysis follow-up and validation of microarray experiments. by Chuaqui et al. (2002)

 
 
一般性近接活性化理論の提唱
カスパーゼだけではなくNF-κBも調節因子の多量体化そして実行分子の近接によって活性化されるのではないかという仮 説を報告いたしました。

@トリガー分子は受容体の多量体化を誘導する。
Aこれに間接的・直接的に結合した上位実行分子同士が近接する
B近接した上位実行分子同士が活性化される。

以上はカスパーゼやNF-κB活性化だけではなく、他の情報伝達経路のもっとも初期の段階での反応開始の一般的なモデルとして提唱でき ると思います。もっとも実際の情報伝達系では、この活性化された上位実行分子により下位実行分子の活性化・または不活性化のカスケード式反応を要する過程 や小分子のセカンドメッセンジャーを利用する過程などが、実際に細胞で生理現象を引き起こすために必要であると考えています。はじめカスパーゼ8,9で酵 素近接活性化理論が提唱されたときには、両カスパーゼは下位カスパーゼや溶血系と同様にプロセシングによって活性化されるものと考えられました。なぜなら ば、活性化と自己のプロセシングがよくマッチしたからです。しかし、実際のところプロセシング段階が本当に両カスパーゼの活性化に必要であるかどうかは明 らかではありません。なぜなら、両カスパーゼはプロセシングされてもカスパーゼ3のようには活性が劇的に上がらないからです。このことは酵素近接活性化モ デルでは必ずしも実行分子の修飾を必要とするものでないことを示しています。一方、カスパーゼもIKKもアロステリック効果に乏しい酵素ですので、これら の近接による活性化が基質である自身の局所的濃縮によるものではないと考えられます。こうした点からリン酸化やプロセシングなどの特別な修飾の起きない、 しかもアロステリックな活性化が起きないような初期実行分子が関与する他の系でも一般的に近接活性化モデルが適用できる可能性があります。いや、修飾が起 きるほうを特殊、修飾を必ずしも必要としない方を一般と考えて近接活性化理論を考える必要があると考えています。

今後、上位実行分子の一般性近接活性化の機構を明らかにするには、
(1)精製度の高い実行分子および上流調節因子の標品の酵素学的な解析
(2)両者の立体構造の動的解析
(3)多くの系での生理的役割の検証
が必要であると考えています。
 
 

■ 他の系での検証

パーティにおける重要性

【系の概要】
1. 幹事たちは互いのEメールを受容し、これにより集合を開始する。
2. 幹事たちには通常数人の友人をもち、情報を受けるとともにこれらの者にコンタクトをとる
3. 集合した参加者の中のいわゆる「妙に明るいやつ」同士が互いに近づき、パーティはもりあがりはじめる。
4. 妙に明るいやつは次々と参加者を話に巻き込み、パーティは絶頂に達する。

【解析】
幹事による明るいやつの近接活性化が重要であることを示す第一段階として、日頃あったことのない妙に明るいやつ同士を別の機会に人為的に近接させ様子を見 る。なお、妙に明るいやつだけの空騒ぎになっているのか、周りも活性化しているかを示すために、人工的にハイにした妙に明るいやつを友達の中に放ち、カス ケード反応の有無を観察する。次に、これら明るいやつの状態を変えてみる。まず、なんらかの方法で彼らから明るさを取り去って近接させてみる。次に明るい のだけれども互いに近づけないように別々の場所にクラい友人とともにおいてみる(自己活性化しないことが前提)。これらの実験により近接活性化の重要性が 明らかになる。実際どのようなメカニズムによって妙に明るいやつがハイになるかを明らかにする方法として、どんな話題で盛り上がっているか(ジョークの種 類,シモネタの有無,一発芸の種類等)などを調べるだけでなく、いつどういうツッコミやボケをしたかなど動的な変化を詳しく見る。

◆ 関連項目
 

カスパーゼの近接活性 化機構
NF-κB 系の近接活性化機構


 (2000年7月)


 
 
 
SFの世界へ(2) -人類DFF45改造計画-
「アポトーシス時のDNA断片化調節因子DFF45がないとネズミは賢くなる」という画 期的な論文が出ました。我々アポトーシスを研究する者にとっては「本当にDFFはなんのために存在するのだろう」という疑問がまず浮かぶのです が、それはさておいて、ふと思ったんですが、DFF45を欠く人間はもっと賢い?
 
 
あらすじ
外務省国際情報局の美人局員折田は、アポトーシス研究の大家である大反大学医学部中田教授の誘拐事件についての情報を収 集するように命じられる。(国際安保問題専門の私にどうしてこんな事件を・・・)。どうも教授は国際的なテロ組織によりコロンビアに連れ去られたらしい。 折田は事件解決の糸口を見つけるためにコロンビアの首都サンタフェデボコタへと飛ぶ。ところが空港から拾ったタクシーの運転手に殺されそうになり、激しい カーアクションの末に美青年パウロに助けられる。嫌がる折田をパウロは例のタクシー運転手のアパートにむりやりつれて行き、二人は部屋に侵入する。そこで 折田はヒットラーの写真を発見する。「あなたはいったい誰なの?」パウロは自分がモサド(イスラエル諜報特務機関)の局員であることをあかし、自分も同事 件を追っていることを彼女に告げる。「もう君は彼らに知られている。消されるぞ」こうして折田はいやいやながら彼とコンビを組むこととなった。アパートで 手がかりを探す彼らが見つけたものは、なんと爆発寸前の時限爆弾。間一髪アパートごと爆破されるところだった二人は現場から急発進する車を見つけて追う。 再び激しいカーアクションの末、追っていた車はクラッシュ、爆破犯人どもは皆死んでしまう。パウロは上官のヤコブを折田に紹介する。ヤコブは米国軍事衛星 の画像を利用して犯人の車がどこから来たかを調べ上げ、敵の本拠地がアマゾンにあることを知る。迷彩服に身を包んだ折田とパウロはアマゾンの秘密基地へと 侵入する。しかし、そこで彼らが待っていたのは敵の死体と大規模な実験施設であった。なんと中田教授は生き残っていた。そして、彼の口から驚くべき事件の 全貌を知った。
敵はかつて密航してきたナチ指導者の直系の子孫達であり、大ゲルマン民族主義の盲信者達であった。彼らはゲルマン民族のDFF45遺伝子を破壊すること で、より優れた人類を作り出そうとしていたのだ。風媒性のウィルスに人種特異的配列を認識するリコンビナーゼとともにDFF45のドミナントネガティブ変 異体遺伝子を組みこみ、このウィルスを世界中にばら撒く予定だった。ところが、事故が起きたのだ。実験段階のウィルスが漏出し、これに全員が感染、ゲルマ ン人である犯人らだけが死んでしまった、というのである。「私も感染してしまった。ゲルマン人でない私は死なないが、もしも私が日本に戻るとウィルスは急 速に伝播し、ヨーロッパでカタストロフが起こる。私はどうして彼らが死んだのか今だ理解できない。DFFがなくともマウスは正常だからだ。こうしてひとり ここに残り、それを明らかにすることこそ、触ってはならない神の域に手を出した私の宿命だと思っているのじゃよ」教授は語った。
折田には、自分らの役割が今になってはっきりと理解できた。ヤコブは折田とパウロをウィルスのホストとすべくここに送りこんだのだ。もしも、自分らが母国 に帰るとゲルマン人は全滅である。最初は痛快がっていたパウロも折田にそれではホロコーストと変わらないことを告げられ、研究所にとどまる決意をする。失 意のパウロを慰めるうちに二人の間で愛が芽生える。トロピカルな背景に二人の白い肢体があやしくからまる。
月日が過ぎた。ついにヤコブは折田らホストたちを強制的に収容するためにコマンドを送り込んで来た。「死体でもいい。収容するのだ」ナチストらの残した武 器で自衛する折田たち。激しいバトルシーンが描写される。しかし、パウロ・中田も戦死し、最後に残った折田も被弾してしまう。折田の足元には今年産まれた ばかりの赤ん坊が泣いている。折田は我が子にかすかに微笑んだ後、研究所の自爆装置のボタンを押した。折田役の女優の歌うエンディングテーマの流れる中、 「モサドの内部調査文書によると、その後、裏切り者ヤコブを見た者はいない」というテロップが現れる。
(これは全てフィクションです。実在の人物・団体とはいっさい関係ありません。  
シリーズ1の内容を知らなくとも楽しめますが、知っているとチョコチョコの小物 につながりが・・・ (2000年6月) 

 
石油代替品の開発を。 きっと儲かりまっせ
とにかく、今(2000年6月)、ガソリンが高い!私の住む米国ミシガン州アナーバーではついに2$/ガロン(約56円/リットル) のガソリンスタンドまで出ました。OPECによる生産調整と需要の拡大のためのようですが、オイルショックを体験した私は「石油以外のもので代用できるも のがあるんじゃないか」とふと考えてしまいます。1970年代と違うのはタンパク質工学が多いに進み、合成化学と組み合わせると、天然に大量に存在するセ ルロースやその他の生物資源から代替製品を作ることが原理上そうたいへんではないように思われる点ではないでしょうか。石油の枯渇以前でも原油価格次第で この点を再度検討始められます。企業の方、このへんのコスト計算を今一度やり直して、開発するときっと、儲かりまっせ。政府の方、特に日本は生命化学分野 の技術力は極めて優れている上、石油資源に乏しいので、研究推進の旗振り役になれるのではないでしょうか。石油代替に関する蛋白工学・生物資源調査・植物 分子生物学等などの生命科学分野にもっと助成することで将来の国の繁栄を!代替技術を確保しておかないとどうなるか、セレラの遺伝子情報問題なんかで懲り たでしょう?出資もしないのに苦労して開発した会社に「技術は人類共通の資源だ」とまたまた宣言して株価を落とすなんて二度は許されないですよ。また、こ れは石油代替製品にとどまらず、その流通と派生製品・周辺商品のあり方も研究する必要があるのではないかと思います。ガソリンに関しては代替燃料が既にあ りますが、自動車メーカーも「ガソリン以外を使用した場合、保証をしない」といった態度を捨てて、「今度の新型は代替燃料でもOK」というようなものを 作ってほしいです。また、ナフサ中心の原材料のあり方も考え直す必要があるかもしれません。

○ 関連項目→熱耐性高等動物の全ゲノムをシーケンスしよう!儲かりまっせ

おっと!6月17日通産省が生物工学技術による石油製品代替品開発の委託を来年度予算に盛り込むことを発表しました。デュポンやカーギ ルなどの先進巨人と50億円の予算で闘うそうです(^^;)。ちなみにデュポンの全研究開発費16億ド ル。頑張れ、日本、ヤマトダマシイを見せてやれ!


 
 
 
あんまり役立たない(いやひょっとしたら 役立つかもしれない)分子生物学的倹約方法一覧
今やの時代。再利用できるものは再利用して倹約するとともに地球に、環 境にやさしい研究者に。
なお、私はこんな再利用法を知っているという方はぜひご一報ください。
 
再利用できるもの 再利用方法 メモ
大腸菌や酵母を引っかいた爪楊枝 爪楊枝の先を火で焼いた後、オートクレーブかけることで再利用できます わずか数円/10本を節約できるが、火で先をなめした爪楊枝はプレートを傷つけないためにかえってストリークが容易で別 の意味で役立つかも。もちろん、森林伐採防止にもちょっとは役立つ?
SDS電気泳動のバッファ(1) 器具洗いの洗剤に利用する さすがSDS。タンパク質がよく解ける。pHまで完璧なので酸などによるこべりつきに有効
吸引式ブロットに使ったペーパータオル ノーザン・サザンブロットに使って、まだSSCに浸っていないペーパータオルはもちろんきれい。実験に使う勇気がなくて もベンチ・床みがきにはOK 注:アルカリ変性溶液や高塩濃度溶液を使うので手拭には向いていません。
サブクローンに失敗したプラスミド 制限酵素で切断して分子量マーカーに。また、CADアッセイなどに用いることができる。 こつ:マーカーを作るときにはぎりぎり切れる制限酵素の量を決めておくと経済的
エッペンドルフチューブの袋 ハイブリダイゼーションパックをさらに二重にシールするときに用いる他、RIのゴミ箱の内側の袋に使えます。 注:オートクレーブには向かない
試薬をオートクレーブするのに使ったアルミ箔 数枚がさねのものは内がDNaseフリーなのでDNAの乾燥時、開いたチューブの上につけて埃の混入を防ぐのに用いま す。 パラフィルムと異なり、穴をあけなくても隙間があるのでグー
DNA電気泳動に使ったゲル 溶かして、再利用できるそうな。 実際にやったことはありません。
SDS電気泳動のバッファ(2)、TBEポリアクリルアミドゲル電気泳動のバッファ 数回、再利用できる。電気泳動槽の下側(正電極側)に使えます。 特にRIの電気泳動の場合、減容にもなります
保証期限の切れた血清 ウェスタンブロットの非特異的吸着防止のキャリアに使えます。  
胎児ウシ血清(FBS)の空びん 大腸菌や酵母の培地を入れる容器に再利用できる 注:メーカーによってはオートクレーブに弱いものがあります
活性の落ちたRI 色素と混ぜてポジションマーカーに使える 注:コンタミを防ぐためにマークした上にテープを張ります
古いカタログ ブロッティングのオモシに使えます。 変形しにくいハードカバーのものがグー
「失敗」したX線フィルム UVランプ上からDNAゲルをすくいとるための板に使える。OHPがわりになる。 あの厚みが絶妙
オートピペットのチップのはこ
マルチ・チャンネル・オートピペットの液を吸うときのホル ダーに
抗体の付着度等がちょっと気になりますが、ブロッキングな んかは大丈夫みたいです。
使用しなかったコニカルチューブのフタ 集めて、子供のおもちゃに(例:メンコ遊び・おはじきができます。) 注:集めても学校に遊具は寄付できません。
(2000年5月)

 
 
インターネットで日本のジャーナルを救える(?)
日本で発行されているジャーナルをよくしたい

という話を聞いたことがあります。今ならできます!

投稿するジャーナルを選ぶときに、まず考えることは、自分の論文がどのジャーナルの内容と同じレベル・分野かということです。次に、も しも同様のジャーナルが複数あったときは、どちらのジャーナルが通りやすいかと考えます。最後に、もしも通りやすさが同じならどちらが自分らの投稿に都合 がいいかと考えます。この第3点目に注目しました。

ジャーナルはインターネットの普及で大きく変わろうとしています。この変革にうまく乗ったジャーナルはそのポジションをあげることがで きると思います。オンラインジャーナルの時代では、投稿者や読者の利便性をより早く獲得するかで、この第3点目における有利性を獲得できます。

第1に
インターネットを含むコンピューターの記述容量からすると、現在ですら1論文あたり20Mバイト程度を費やしても経済的になりたつ状態となってきました。 この情報量は紙に印刷されたものでは難しいです。従って、日本のオンラインジャーナルは大容量の論文の投稿を認めるべきです。マルチメディアを利用できま すので、単に白黒の文章と図といった構成だけでなく、色情報をいれることができます。分子モデルについてはシュミレーション等を示すアニメーションが容易 に挿入できます。3次元の表現も可能でしょう。
 

第2に
引用文献の書式です。引用文献の書式は各ジャーナルにより、大きく異なります。これを変更するのが結構面倒でそのために、専用ソフトまで登場する始末で す。ところが、オンラインジャーナルでは引用文献がオンラインでリンクすることによりその機能をフルに果たすようになり、いづれもNCBIの PubMedとリンクしています。別の言い方をすると、NCBIのPubMedにリンクしていさえせれば、引用文献の書式など関係なく機能を果た します。そこで、日本のジャーナルは引用文献記述項目を廃止し、ダイレクトにハイパーリンクすることにより、利便性を獲得すべきです。このことで、著者の 負担は激減します。また、この点についてさらに考えを進めると、NCBIのPubMedに別にリンクしていなくとも、自分らのホームページでもなんら機能 を損なわないことになります。これを読んだ方の中には「それじゃいいかんげんな引用にならないか」と心配される方もいらっしゃるでしょうが、それはレ ビューシステムでカバーできると思います。
 

第3に学会誌についてです。
日本の学会の発表内容をそのまま、インターネットに掲示すべきです。ことのことにより、発表そのものが、論文と同様の意味合いをもつ、「文献」となりま す。上記のPubMed以外のリンクの中心的存在になることでしょう。おそらく、将来には引用文献との境界がなくなると思います。学会内で考えると、学会 報告がその学会の発行しているジャーナルを強力にサポートする第2のジャーナルとして機能するわけです。このサイトはたとえ日本語で記載されていてもかま いません。近い将来、自動翻訳サイトの機能も画期的に向上するのは明確であり、文献とは歴史的な価値をもつものであるからです。また、これが実現すると、 例え参加者が遠隔地にいても学会に参加することができます。また、本来の発行ジャーナルからすると、新たな付加価値を得ることになります。
 

利便性を獲得したサイトは徐々にその地位とあげていきます。内容もより洗練されたものになります。ジャーナルも全く同じだと思います。 そのジャーナルに投稿すること自体で付加価値が出る、またはその学会に参加しているだけで付加価値が出る・・・一方、リーダーはより、検索や情報量等のよ り利便性を得る・・・どうでしょうか。
学会報告の著作権をクリアするのが難しいコマーシャルジャーナルを発行されていらっしゃる方の猛反対を受けるでしょうが、学会はがんばってみる価値がある と思います。あ、別に悪気はないんです。コマーシャルジャーナルのエディタさん、論文落さないでね。
(2000年3月)


 
私にとっての真の2000年問題(?)

  2000年問題(Y2K)が年末たいへん騒がれました。しかし、これといっても年始に何も起きなかったよう に記 憶しています。あれはなんだったんでしょうか。ところで、今年はPubMedが大幅更新される年です。NCBIのホームページによると3月から旧PubMedのサービスは停止され るみたいです。従って、PubMedにつながっているリンクを切りかえる必要があります。私のホームページはPubMedべったりなので、もしも リンクが途切れたらほとんど無用の長物となってしまいます。かなりの危機感を感じてHP保守作業を行いました。
ところが、私のもの以上にPubMedべったりのサイトがあります。on-lineジャーナルです。今や、引用文献を手で引くなんて人はほとんどいないと 思います。各代表的なジャーナルの現時点での対応はどうなっているでしょうか。2/11現在全て旧型です。
 
 
ジャーナル 2/11現在 3/28現在(後記)
Cell 旧型 新型用に直接書き換え対応
Nature 旧型 リンク書き換えプログラムで対応
Science 旧型 リンク書き換えプログラムで対応
EMBO J 旧型 リンク書き換えプログラムで対応
J.Biol.Chem. 旧型 リンク書き換えプログラムで対応
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 旧型 リンク書き換えプログラムで対応

このままいけば、引用文献が調べられず論文が書けないという「2000年3月問題」が生じてしまいます。か なりの危機感を持っています。この不安をなくすためにジャーナルはぜひ「問題対応済宣言」をしてもらいたいです。さもなければ、3月前に大量のプ リントアウトしておくとか、2月中に論文を投稿するとか、研究者は対応に迫られることとなります。もっとも、Y2Kで数年分の食料を買いこんで困っている 人もいるとか・・・ことの推移にしばし注視する必要がありそうです。

なお以下の方法でリンクを変えられます。

旧型CGIサイト名 旧型CGIサイト名
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/htbin-post/Entrez/query
http://www3.ncbi.nlm.nih.gov/htbin-post/Entrez/query
http://www3.ncbi.nlm.nih.gov:80/htbin-post/Entrez/query
http://www4.ncbi.nlm.nih.gov/htbin-post/Entrez/query
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/utils/qmap.cgi

ポストするデータ(「?」以降のキーワードなど)はそのままで大丈夫で した。したがって、MS Wordのマクロなどを使ってハイパーリンクの前半部分を置き換えるだけで大丈夫みたいです。なお、新型PubMedは旧型との互換性が乏しいが、多くの メリットのある

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi

があり、これはマクロやプログラムによる置換がたいへんでした。新しいPubMedは1リンクに対する複数引用が容易にできて我々ホー ムページ作者にたいへん便利です。
(2000年2月)
 

後記:3月27日 安全宣言
全てのパブリッシャーは問題なく対応しました。Cell Pressが直接的にコンテンツ内のリンクを直接新型用に書き換えたのに対して、他のパブリッシャーはCGIで対応しました。CGIで対応することで今後 の変更にも対応するといったところでしょう。一方、Cell Pressは今後ともNCBIのPubMed変更ごとに各コンテンツを毎回書き換えていくつもりなのでしょうか。また、現在のところ、旧型のCGIサイト にリンクしていてもなんら問題はないようです。やはり、2000年問題は起こりませんでした。ほっ。

 
SFの世界へ 人類Apaf-1改造計画
アポトーシスのキー的な分子Apaf-1がなくても5%のマウスは見た目正常」という画 期的な論文が出ました。我々アポトーシスを研究する者にとっては「Apaf-1にかわるアポトーシス誘導因子とはなんだろうか?」という疑問がま ず浮かぶのですが、それはさておいて、驚くべきことに、apaf-1遺伝子を欠くマウスは普通のマウスよりも超アクティブで、3倍もよく動けるとのことです。
で、思ったのですが、人間にもApaf-1を欠くと3倍パワーアップできるのでは?うーん、SFの世界です。残念なことにオスは子供ができませんが、メス は正常に子供が生めるようです。
     
あらすじ
アジアの某独裁国Nにあるバイオ研究所・・・
そこでは、指導者の命令により、Apaf-1ノックアウト人間が開発されていた。しかし、正常に成長できるのはたった5%のみであるが、一旦、成長すると スーパーソルジャーになるのであった。主人公もそのうちの一人であり、幼いときから隔離されて、軍の研究所兼訓練所で生ける殺人兵器として育った。彼に与 えられた最初の仕事は裏切り者の抹殺であった。彼の開発に携わり、その恐ろしさを知ったこの研究者は、国境を徒歩で超えて自由世界の某国Sへ逃げたが、も しも彼がアメリカに渡ってしまうと、堕落した資本主義の悪魔どもに計画の全貌が明らかになってしまう。そこで彼の出番となった。既に抹殺計画を察知した CIAは研究者を保護すべく、凄腕のエージェントを送り込んできた。S国の空港で繰り広げる激しいアクションと圧倒する彼のスーパーパワー!
ところが、無事、研究者暗殺というミッションを終えた彼を待っていたのは死の罠であった。彼は軍部が用意した諜報部員の女性(美人)と夫婦として偽装され てS国に送り込まれていたのだが、彼女から道中、研究所の外の世界を教えられるのだった。これによって、動揺した彼のしたちょっとしたミスから母国への退 路を失ってしまうが、数時間後、もしも帰っていたら彼女もろとも爆死させられるところであったことを知る。彼は隣国の日本へと密航・逃亡する。
今度は彼が追われる番となった。彼を殺そうと次々と送り込まれる工作員を次々と倒していく。その彼に彼同様のスーパーパワーをもった強敵が現れる。トー キョー市街での激しい戦闘の後、敵をついに倒し、ふと顔を見ると、自分とそっくりであるのに驚く。どうも、もう一度、研究者を殺したS国に戻る必要があり そうだ。何か手がかりがあるかもしれない。流されるように渡り歩く二人にはいつしか恋が芽生える。密航船の中では激しいラブシーンが描写される。
S国に戻った二人はそこで殺した研究者が某サイバースペースにApaf-1ノックアウト計画の全貌を暗号化して隠していたことを知る。その過程で助けてく れたのが謎の人物Cであった(後にCIA部員だと判明)。彼はすっかり信用する二人を米国に送ろうとするが、計画の全貌から危険性を知った主人公は、母国 に帰って研究所を破壊することを決意する。相棒の女性もそれがいかに危険であるか知りながら、共に母国Nに潜入する。
二人は無事、研究所へと辿りつく。次々と襲いかかる自分そっくりの敵を倒して研究室に辿りついた彼らの見たものは・・・・SFXを駆使して表現されるおぞ ましいバイオの世界がそこにはあった。Apaf-1ノックアウト人間のうち、男は不妊性であるために、そこには大量のホモザイゴートの女性がおり、排卵誘 発剤を投与されながら日夜ヘテロザイゴートの男どもとセックスを強要されていた。一方で、できたホモザイゴートの男児は一旦、ばらばらに解体されて、ク ローン化され、仮母に移植されていたのだ。自分そっくりの大量の赤子が眠る保育室、ナンバーで呼ばれるクローンたち・・・
主人公は、自分の産みの親である研究者もろとも研究所を爆破する。
国境へと逃げる二人と、二人を追う軍。激しい戦闘が繰り広げられる。後少しというところで、彼女が被弾し、彼の胸の中で死ぬ。軍は密かに開発していた原爆 の使用を決断する。光る閃光、激しい爆風!しかし、Apaf-1ノックアウトゆえに放射線耐性の彼はこの最大の危機を乗り切る。彼女の死に絶望しながら も、越境した彼を待っていたのは、病魔の攻撃であった。Apaf-1を欠く彼は既に全身を癌でむしばまれていたのだ。自分の死体から再びクローンが作られ てはならない。最後の気力を振り絞って自分の体を溶鉱炉へと投げ入れる。
最後のシーンでは謎の人物Cが再度現れる。CIA部員の彼は、全てを終え、帰国の飛行機に乗る。降り立った彼は手にした主人公の髪の毛を研究者に渡す。エ ンディングテーマが流れる中、バックでは研究者が遺伝子解析を進めている。
(これは全てフィクションです。実在の人物・団体とはいっさい関係ありません。)

映画の主役兼敵役には新人の韓国系アメリカ人を起用したいです。ヒロインも新人ですが、ダイナミックなコがほしいですね。謎のCIA部 員にはベテランをぜひ入れたいです。研究所のシーンでは、Apaf-1の発見者たちや他のアジア系のアポトーシス研究者を端役として、ちらつかせたいです ね。ちなみにシリーズ第2弾はインターネットに隠された例のファイルをネオナチのハッカーが見つけるところからはじまります。
(2000年2月)


 
 
On-line投稿のやり方 (特にJ.Biol.Chem.,2000 年10月)

 On-line投稿のやり方 論文の投稿も今やOn-lineの時代となりました。でもTIFFファイルしか受け付けないジャーナルの説明ってまわりくどいんですよね。
以下の方法でPDFの作成が簡単にできます。

1. Adobe Acrobat(Readerではない!),Photoshop(以上はミシガン大学医学部内では無 料ダウンロード可能)と高画像スキャナーを入手する
2. MacDrawやPowerpointなどのドローソフトで作画する。
3. 図を高解像度でPDFに一旦変換する
4. PDFファイルを.TIFF(圧縮IBMフォーマット)ファイルに変換する (これをしないと、フォント依存性などで図がへんになることがある)
5. 再度、図(.TIF)のPDFを作成の後、論文のPDFに再度添付する
6. ジャーナル指定の方法(FTP転送,HTTPポストなど)でファイルを転送する

今のところ、これが最良だと思います。段階2でドローファイルであってイメージファイルでないのがミソ。
ワンポイント:  IllustratorPowerPoint, MacDrawなどと事 実上互換性がないの で使いづらいです(ドローが中間色を塗るとピクチャーに化ける)。 Photoshopに 直接文字を書き込むと、後で修正がたいへんです。 (2000年1月)

追記1: J.Biol.Chem.の場合、3の段階のPDFファイルをそのまま添付していてもアクセプトされました!  でも最終的にはEPSやTIFファイルがいるので、どっちみち4以降の処理が必要です。  J.Biol.Chem.の場合、 PowerPointファイルのまま添付しても、印刷されました!(後記)  なお、Iustratorで作ったEPSファイルはサイズが断然小さいようです。
追記2:マイクロソフトのOffice 2000以降は標準でPDFライタがついているんですね。これでAcrobatを買わずに済みます。(2001年6月)



 
 
 
守秘義務は必ずしもタダではない

  企業との共同研究などで守秘義務協定を結ぶことが多くなりました。ところが、守秘義務協定は相互で交わすことが重要なのであって、一方的に結ぶとたいへん 不利になります。(ちなみにミシガン大学の事務はこのあたりがたいへん敏感ですばやく処理してくれます。)先日、知り合いの奥さんが某メーカーのバイトを 辞めたのですが、そのとき、事業計画について守秘義務協定を結んで、それに対する報酬をとるか、それとも、報酬なしで退職するか、という選択を与えられま した。これはたいへん合理的だと感じました。なぜならば、守秘義務協定で不利益を被ったときには裁判によってそれを受け取る権利を主張できますが、この場 合、双方に負担がかかるからです。日本の研究者の皆さん、とくに退職される企業の研究者の皆さん、会社への忠誠で守秘義務を果たす時代は過ぎましたよ。ど うどうとこれに対する報酬を請求しましょう。  (1999年12月)

追記:中村修二博士に日亜化学工業が発明に応じた代償を研究者に払わなければならないという判決が出ました!日本の研究者に慶賀。日本 の企業 は今後開発のあり方について大きく見直す必要がありますね。(2004年1月)


 
 
エッペンだこ -もしや同じ悩みを持っていらっしゃる方がいるのでは、と思って書きました

 - 学生時代、放射線同位元素(RI)を汎用した 時期がありました。放射線障害がたいへん気になりました。それまでは自分の手などマジマジ と見たことがなかったんですが、この時期、毎日、手をチェックしました。するとどうでしょう、RIを汎用した次の日には指の先が痛くなりました。また、長期的にはチューブを持つ指の皮が 剥け出しました。「こ、これはたいへんだ!」。RIを 使わなくなったとたん、手がきれいになりました。うーん、RIってこんなに有害なのか・・・。それからしばらくして、また同様の実験をすることがありまし た。ところが今度はぜんぜんなんともありませんでした。「おお、RIに免疫がついたぞ」 でも、なんかへん。そこで、前回と違うのはどこか、よーく考えてみました。あ、エッペンドルフチューブ(微量遠心管)が違う!以前はスクリュー式チューブを利用していたの に、今回は通常のもの。RIでは汚染に気を使うので、かなり神経質にチューブを開け閉めします。また、ふたもかなり強くしめてしまうので、開け閉めが指に とってかなりの物理的負担になっていたのです。うーん・・・では、じゃ、どうして以前は指があんなに荒れたのだろう・・・。そのときはわかりませんでし た。その後、RI汚染除去用の洗剤を使い切ってなくなっていたので、補充したとたん、いきなり手荒れが再発しました。そうなんです。RIを使うと手袋をし ていても気持ち悪いので、頻繁に手を洗う、しかも、よく落ちるようにとRI除去用洗剤で手を洗う・・・。それに気がついて以降、RIを扱っても手があれな くなったのはいうまでもありません。チャンチャン。
さて、最近、RIの健康検査が近づいて自分の手をまたマジマジと眺める機会がありました。すると、指の表面の一部がやや盛り上がって、堅くなっているので す。「つ、ついにRIから肉腫か!」良く見ると、左手の人差し指第二関節と、 右指の中指の第二関節と第三関節の二ヶ所が堅くコブ状になっているのです。「両手切断か」 かなり悲壮な発見でした。
しかし、数時間後にはこれが何かわかりました。左手のが「エッペン だこ」、右手のが「ピペット だこ」だったんです。左手は頻繁にエッペンドルフチューブのふたを開けるために知らないうちにタコができていたんで す。右手はピペットマン(オートピペット)を握るために自然にできたものです。研究者のみなさん、指にコブ状のものがあってもご安心ください。それ はきっとタコです。
なんか、職人さんになった気分でうれしかったです。「てやんでえ、こちとら宮大工でえ。けちなシゴトなんかできるけえ」みたいな感じで。と りあえず、女房には私が首なし死体で見つかっても同定できるように、この身体 的特徴を伝えておきました。
(1999年11月)

 
 
究極のプラスミド送付 対 至高のプラスミド送付

  「こ、こやつ、なかなかやるな

最近、とある研究室からリクエストしていたプラスミドを受け取りました。封筒を開けたとたん、思わず、うなりました。
自分のもっとも好きなプラスミド送付方法はチューブに入れたまま送ることです。これだと、コンタミとか気にしなくてすみますよね。自分は至高の送付方法だ と思っています。しかし、たまにチューブが破損したり、ふたが開いたりして大切なサンプルがすっかりなくなることがあります。そこで、ろ紙にDNAをス ポットして乾燥後、送るというもよく見うけます。その日、受け取ったプラスミドは、この「スポットされた」プラスミドでした。ただ、他の研究室から届いた ものと微妙なところで違い、工夫が凝らしてありました。
まず、スポットしたDNA液をBPBで色づけし てあったのです。スポットしてあるのはいいけど、どこにあるのかわからなかったり、丸が書いてあって、その中にDNAがスポットしてあるはずなのに、なぜ かシミは外れたところにあったり・・・そんなサンプルをよく受け取りました。しかし、このように色がついていればDNAのある場所が一目瞭然です。次に2 種類のプラスミドを注文したのですが、それぞれ別のろ紙にスポットして、そのろ紙を別々の1cm四方ぐらいのビニール袋に入れてシールしてあったのです。これにも感動しまし た。というのは、1枚のろ紙に何種類ものプラスミドがマイクロアレイのごとくスポットしてあるサンプルを少なからず受け取るからです。もち ろん、プラスミドのマップも全配列が容易にわかるようにレファレンスがついていました。受け取る側へ思いやり・・・究極のプラスミド送付を見た気がしまし た。
(1999年11月)
 


 
 
 
熱耐性高等動物の全ゲノムをシーケンスしよう!儲かりまっせ

  Cold Spring Harbor Meetingに行ってきました。3つのグループからショウジョウバエApaf-1が報告されました。そこで、はっとひらめきました。ショウジョウバエに あるなら、同じ甲殻類のカニに絶対にあるはずです。今こそアポトーシスの中心分子Apaf-1が結晶化できるのでは、と! 結晶化や酵素解析の時、最大の問題は熱安定性です。高温に耐える高等生物の酵素は熱耐性のはずです。好熱菌PS3の酵素の解析を近くで見ていたので思うん ですが、変異体タンパク質の解析や結晶化も容易でしょう。また、これは別にカニやApaf-1だけの話ではありません。耐熱高等生物の種名をもしも ご存知の方、教えてください。材料をお持ちの方、共同研究しましょう。いや、別に生きていなくてもいいです。DNAは他の生物で発 現させますから。また、企業の方、耐熱高等生物の全ゲノムを決定すると、医学的・工業的、その他諸々の応用が多様で本当に儲かると思いますよ。
(1999年10月)

 
 
 
タンパク質の大量発現で機能を見るなんてけしから んーーー!(の反論?)

  日本から日本語の総説雑誌が届きました。その中で、日本のアポトーシスの第一人者が「新規タンパク質を過剰発現させ、細胞死誘導・抑制や相互作用の有無を 見るだけで雑誌に出すのはなげかわしい」という記事を見つけました。おもわず、うんうん、うなずきました。正論です。でも同時に問題も感じました。
私が思うに、新規タンパク質の発見は、大航海時代の新生物種発見競争に似ています。荒くれ船乗りとともに大海原(おおうなばら)を駆けて未開地に行き、動 物や植物を見つけてヨーロッパの学会に報告する・・・あれです。でも、なかにはカモノハシを鳥類と見間違う者もあったでしょう。チョウチンアンコウのオス を別種と報告したこともあったでしょう。なぜなら、始めはだれもそんな生物がいるとは想像しないからです。しかし、系統分類学や進化論などの考えは、こう した礎から構築されたと思います。また、チョウチンアンコウの場合に見るように最初の報告で、その生殖まで示すのはかなりムズカシかったと思います。新規 タンパク質の機能は生理的条件下で検討するのが一番だと思います。しかし、競争の激しい分野で、抗体を作ったり、ノックアウトマウスを作成したり一番始め の報告できるでしょうか。勝負するならいくつかできるでしょうが、かならず、しかるべき報告になる保証がありません。また、報告の重要性を考えてみましょ う。上記のように報告された新規タンパク質STAT,TNFRファミリー等がインパクトを与えなかったでしょうか。また、内在性ものを見ているからといっ て、本当に有意なのでしょうか?例えば結合性の検討なら本来KdとKiを求めるのが本来の姿では・・・でも最初の報告でなかなかできないです。それに最初 に発見し・応用を考えたもののみが特許等の知的所有権を主張できるのですが、報告が1日でも遅れるとこれらは失われます。ソフトウエアを書いていて思うん ですが、これからの時代は世界規模で研究者の知的所有物のことを考える必要があると思うんです。少なくとも、バイオインフォマティクスなどの異なるビジョ ンを許す寛容さが社会の原動力になると思うんです。うん。 (1999年10月)

 
 
三次構造のデータ1年間保留制度廃止を

  タンパク質の三次構造データは論文報告後も一年間データを 非公開にできます。データを見られない研究者は研究で不利になるだけではなく、論文報告自体を検証する手段がありません。タンパク質の一次構造がすぐさま 開示されるのに対してあまりにも不自然です。ぜひ、改善してほしいです。でも、誰が、どうしてこの規則決めたんでしょう?
(1998年9月)

 
クローン技術の人間への応用規制に反対

最近、哺 乳類におけるクローニングが成功しました。これに対して猛烈な反対がありました。ヒトへの応用は特に反対を強く、規制する国も出てきました。しか し、このクローン化技術は不妊治療など、かなりの有用性が見込めます。従って、私はこの規制に強く抗議します。また、学問の自由という点からも規制に反対 します。クローン技術の安全性の判断は研究機関や学会に任せるべきです。 (1998年9月)  ついにかなり包括的な禁止法案が提出されました。米国は宗教国だからなあ(2004年4月)
 
関連リンク ロケーション
ヒト細 胞・組織の研究利用に関する倫理問題 JCB
生 命倫理・安全部会 議事録 文部科学省

 
科学ジャーナルの審査(レビュー)制度 のインターネットでの開示を

論文を科学ジャーナルに投稿すると、必ずレビューがあるはずです。このレビュー制度はたいへん不透明で弊害が多いように思われます。通常、レビューアはそ の分野にもっとも詳しい人で、投稿者と直接繋がりのない人、つまり、競争相手となります。ときには競争相手は、報告の質に関わらず、意図的に論文を遅らせ ようとします。その手段として、レビューを遅延することがあります。私はジャーナルのレビュー日数もぜひ、タイトルと著者の次に示してほし いと考えています。逆に、一流ジャーナルの多くでも「これは審査されているのか」と思われるぐらい速い報告があります。質の高い論文なら納得いくのです が、そうでないものもあります。ぜひ公正であってほしいです。さらに、レビューアが審査論文のデータを利用して次の論文を書いた、という話をよく耳にしま す。インサイダー取引のようなものですが、これらを監視する制度の創設を切望します。また、制度自体、ディスクロージャーの対象にしてほしいものです。
(1998年9月)

 
いかさま研究試薬に注意
サンタ○○○○の抗体はあまりにもひどすぎる。アポトーシス関連で使える抗体はまずない。注意しましょう。(1998年9月)
 
Caspase-3の抗体の中には使えるものがあるそうです。使える抗体の情報がありましたらドシドシお寄せください。(1999年5月)

 
日本の研究者の独立性改善を
 日本は若い人の独立性を削ぐ制度が多くあります。研究者、特に若い研究者の金銭的、人事的に独立を助ける土壌を作ってほ しいです(ミシガン大学で驚いたこと参照)。次に、グラントの使い方にもっと自由度と裁量権を与えてほしいで す。また、研究機関と研究者間の繋がりをもっとゆるやかにしたほうがいいと思います。さらに研究者がグループを組んでお金をとる方法を改めて、個人ベース にすべきだと思います。最期に、公立研究機関にいる研究者でも個人が容易に知的所有権を取得したり、会社設立したり、共同研究したりすることを助成する制 度を創設する必要を感じます。
(1998年9月)
  

[REFERENCE]
文部省 文教施策
科学技術庁 振興施策
厚生省 施策詳細発見できず
通産省 施策詳細発見できず

参照:ミシガン大学で驚いたこと

追伸:その後、日本も改善される傾向にあるようです。今後とももっと改善を進めてほしいです。(2000年11月)


 
 
 
文部省の学習指導要領と教科書検定の適応範囲に限定を
 現在の日本の初等教育の根本は学習指導要領と教科書検定にあるといえます。これにより均一な教育が実現でき、国民の教育 レベルは格段にあがりました。ところが、この一律な水準はいくつかの弊害を生んだため近年必須学習内容が減少する傾向にあります。これは科学にとって大き な脅威だと思います。そこで、これらの文部省の指導範囲内を公立学校に限定し、私立学校については基本的に自由化してどうでしょうか。これにより多様な教 育、また競争が生まれます。同様に大学入試についても漢文や英語ができなければ数学者になれないような現実を産む制度を廃止したほうがいいと思います。国 語・社会の点がとれず科学者になれなかった天才が日本には少なからずいると思います。科学の前進に適した教育制度の創設を望みます。
(1998年9月)
[REFERENCE] 文部省 学習指導要領
 
石 原慎太郎都知事文部省通達無視 堂々とした主張でうなずきますが、通達無視権限あるのでしょうか、心配です。もし、あるとしたら、地方の権限でかなり地 方色豊かな教育が可能ですね。2002年3月

 
 
アポトーシス調節因子の名前 は統一できるか
私たちの発見したアポトーシス調節因子のほとんどは、いわゆる、同時報告のために複数の名前を持っています。別に私のものだけではな く、ホットな領域では因子の発見はほぼ同時になることが多く、重要な因子であればあるほど、複数の名前を持つこととなります。これは研究に新規参入する者 にとってたいへん不便なばかりか、私の因子の場合、まだ総説が存在しないので、いちいち全ての論文を引用することとなりました。それで、ここらで名前を統 一した方がいいのではないか、と考えています。かつてNa,K-ATPaseやTRAF,caspaseで番号制度が導入され、あのたいへん複雑だった名 前がたいへんすっきりしました。最近、Bcl-2ファミリーの実際に命名を統一しましょう、というデータベース関係の人からコンタクトがありました。私も Hrkの場合、まさか最終的に「は らきり」になるなど思っていなかったので、たいへんうれしかったです。ところが、聞けばHrkはBid3になるといいます。うーん、BH3-3な らわかるけど、BidとHrkは構造的も細胞局在性も異なるから、これはちょっといただけないですねぇ。次に問題になるのはBax,Bakなどのアポトー シス誘発性Bcl-2ファミリーにはBH4領域がないと主張するグループがあり、これが分類に支障をきたしました。また、最近のNCBIのOMIM分類を見るとがっくりくるものがあります。なん でFas がTNFRSF6だあ?TNFRSF4 がOX40とかCARD-CONTAINING ICE-ASSOCIATED KINASEがRICKだとか気がつくまでずいぶん時間がかかりました。

さらに番号制にはかなり大きな問題があります。Smadで特に顕著ですが、caspase-??という名前で論文を通している間に同じ 番号の遺伝子が報告されてしまうのです。ちなみに米国の全ての通りには名前がついており、住所がたいへん覚えやすいです。また、日本の戸籍法でも子供の名 前を番号で呼ぶことを禁じています。CAD,ICADはDFF40,DFF45に比べていい名前だと思います。なぜなら両者のサイズは生物種が変われば分 子のサイズも変わってくるはずですから、CAD/ICADの方がだんぜんいいです。ただ、やはり一番最初に報告したグループはDFFxxと呼んでいるの で、彼らが認めないことには・・・。それはそうと、ICADよりもiCADの 方がiMACみたいでかっこいいと思います。

私たちの発見したタンパク質で複数の名前をもつもの
私たちの命名 他のグループの命名
Harakiri(Hrk)
DP5
Mtd
Bok
CLARP
Casper, I-FLICE, c-FLIP, CASH, FLAME, MRIT, Usurpin
RICK
RIP2, CARDIAK
DCP2
DREDD
DIVA
Boo
CIPER
Bcl-10, CARMEN, mE10, CLAP, c-E10
NOD1
CARD4

かつて、MORT1FADDが 同じ報告されて、後にFADDが優勢になったように時間に任せてみるというのもいいのではないか、とも思えます。しかし、CLARPの 別名、cFLIPが メジャーになりつつある傾向にはちょっと疑問を感じます。というのもCasper,CLARPな どの報告にあるように同タンパク質はアポトーシス誘発能力があり、キャスパーゼ様ドメイン(CLD)のないvFLIPとは機能的に異なっています。同タン パク質をコードする同一遺伝子から選択スプライシングによってできるCLDなしのものについては、おそらく誰もがcFLIPと呼ぶのに抵抗を感じないで しょうが。私自身はCasperでもいいかな、と思っています。一番最初だし、なんといってもかわいい名前だからです。学会で一部の先生に その話をしたところ、「いや、うちのが一番」と主張されて「うっ」とつまって しまいました。次にMtdの 別名Bokで すが、我々の論文で示したように決して卵巣特異的タンパク質ではないので、これもいただけません。RICKの 別名、 CARDIAKについても我々はICEとの結合を見出せないので、これもどうかと思っています。ただ、DCP2などの謙虚な名前は逆に二番煎じ風 で、「ゴミムシモドキ」や「ニセイワシ」のようなものを感じるのは私だけ?
学会で複数の名前をもつ同一タンパク質の発見者が一堂に会し、統一した名前をつける機会があることを今一度切望しています。
(1998年9月,1999年5月)


 

追記1: なんじゃそれ・・・
Kenneth H. Shain, Terry H. Landowski, and William S. Dalton J Immunol 2002; 168: 2544

Adhesion-Mediated Intracellular Redistribution of c-Fas-Associated Death Domain-Like IL-1-Converting Enzyme-Like Inhibitory Protein-Long Confers Resistance to CD95-Induced Apoptosis in Hematopoietic Cancer Cell Lines 

ここまで、徹底するとなんのタンパク質のことか、さっぱりわかりませんねえ・・・(答え:=NCBIあたりがつけた CLARPの別名)

追記:2002年2月

 
追記2: なんか、Hっぽい・・・
M. Lopez-Fraga, R. Fernandez, J.P. Albar, and M. Hahne EMBO Rep 2001 Oct;2(10):945-51

Biologically active APRIL is secreted following intracellular processing in the Golgi apparatus by furin convertase.

あ、なんかHっぽい感じのタイトルだと思ったのはおバカな私だけですよね・・・

追記:2001年9月

 
 
 
Bcl-2ファミ リーのプロセシングは本当に生理的に重要か
 最近、Bcl-2ファミリーのりん酸化の論文がいくつか出ています。ご存じのようにBcl-xLはSDS電気泳動でりん 酸化されなくとも電気泳動で数本のバンドとして出ます。出なかったりもします。これは脱アミド化によるものです。これをコントロールとの比較で除いた場合 を考えて、Bcl-xLのような小さくて標準的なタンパク質がりん酸化されてシフトしないはずがありません。ところが、組織のウェスタンブロットでりん酸 化に対応するシフトが見えた覚えがありません。本当にBcl-xLのりん酸化は生理的に重要なのでしょうか?Bcl-2やキャスパーゼのりん酸化について も言えることですが、本当に有意な量だけ生理的条件でりん酸化されているのでしょうか?また、それによって誘導される抗アポトーシス活性の変化は本当に生 理的に有意なものなのでしょうか?キャスパーゼなどによるスプライシングについてもいえます。スプライシングされるBcl-xLやCed-9の量は本当に 生理的に有意なのでしょうか?
(1998年9月)
 
 
追記: なんとなく「有難い」あみど様
うおっ、Bcl -xLの脱アミドまで調節されている・しているという論文が出てホットな感じになっていますが・・・ほんとかしら。
追記:2002年10月

 


 
 
ミシガン大学で驚いたこと
  • ミシガン大学にはお店がたくさん入っています。 まず、制限酵素のお店が 入っています。アイスクリームよろしく3大メーカーの制限酵素がずらりと並ぶ中から好きなものが選べます。しかも安い!もちろんわからないときはお店のお ばさんやおじさんに「これ、活きがいいですか?」(仕入れがわかる)とか「お買い得はどのメーカー?」とか聞けます。また、シーケンシングやオリゴヌ クレオチド合成のお店もいいです。癌などの研究のためには25-50%オフのサービスもあります。一回のシーケンシングは12.5 -25$です。サンプルのサブミットはイントラネットででき、結果のグラフやパターンもダウンロードできます。また、トランスジェニックマウスのお店も あります。近く、X線結晶化、NMRによる高次構造解析のお店ができます。もちろん、レストランの「デニーズ」なんかも入っています。
     
    後記:上記の学内オリゴヌクレオチドのお店がついに閉 鎖になりました(1999年秋)
    外注のものと競合できなくなったためです。それにしても25¢/塩基(翌日発送)という価格を聞くと隔世の間があります。恐らく今後学内ペプチド合 成のお店などもどんどんと閉鎖されていくのでしょう。
     
  • 大学が警備員ではなく独自の警察を持っています。警備員ではない ので、警察と同じ業務を全 てこなします。殺人者が射殺されることもありました。彼等の発行する駐禁取り締まりのチケット等は市のものと全く同じ効力(本当は同一)を有します。で も、駐車場で車のキーの閉じ込めやバッテリー切れが起きた場合、すぐ来て解消してくれます。
  • 学内の輸送無料で す。学内はバスが運行されてい る他、夜間などバスの運行がないときは、バスのかわりにタクシーを無料で利用できます。学 内は夜間でも空調、照明、コンピュータ、遠心機、インキュベータ等の電源が切られることはありませんので、まず機械、特にコンピュータがクラッシュするこ とはありません。従って、機械の寿命はかなり長く、維持コストが低いです。冬は雪が多く降りますが、公道同様に塩を撒くので雪が積もっている道は皆無で す。従って、チェーンを装着する機会はまずありません。
  • 日本でしばしば談合や癒着が問題になる納入業者制度がほとんどないので、注文が早く安いです。グラントは通常年度持ち越し ができます。しか もグラント等を運営する大学(公立です!)はファイナンシングによる利益を得られます。また、大学が職員による会社設立を奨励しており(あえて言います が、ミシガン大学は公立です)、いい事業には出資してくれます。逆に、特許等にはたいへん敏感で、外部の企業からの圧力に強い研究運営がで きます。学科クラスの組織は独自の顧問弁護士と公証人を持っています。

  •  
    後記:ついに・・・これで日本の研究者もお金持ち?

    ついに日本でも当たり前になってきた? 公立大学研究者の起業(2000年8月)

    ニッケイバイオでたい へんおもしろい記事を見つけました。広 島大学の歯学部口腔生化学研究室が起業するために人材を集めているというものです。また、北海道大学医学部の方が遺伝子情報ベンチャー企業ジェネ ティックラボを設立されました(本当にこんなんで採算とれて競合できるのか、情報源は公的資金を利用していないか、素人ながら心配)。おそらく、この研究 室だけではないでしょう。1980年代米国のBayh-Dole活動によって築かれた大学・企業の融合による研究と新製品開発の促進というストラテジーが ついに日本でも実現されてようとしているものと推察いたします。これで日本の公立機関の研究者も「アメリカン・ドリーム」を手に入れやすくなる環境がつい にできるのでしょうか。学者貧乏が昔語りになること切に願っています。
    この手で先を行く米国で最近問題になったのが、臨床の倫理と科学者の利益の問題です。とある大学で遺伝子治療技術を開発していたのですが、患者さんが死ん でしまいました。もしも、昔のように技術の評価が必ずしも研究者自身の富貴の問題に直接繋がらなければこのような事故は起こらなかったであろう・・・とい うのが新聞の論調でした。商売に熱心になるばかりに本来医学・科学のめざした医の奉仕の心を忘れてしまったのであれば、それは悲しむべきことだ、というの です。まあ、批判は簡単ですね。でも真実でもあります。果たして、日本の目指す未来は???
     
  • 就職や求人に年齢制限を設けることは違法です。
  • 助手、助教授は基本的に教授とは独立で す。助 手、助教授にも自分のテクニシャン、ポスドクの人事権があります。教授が口出しすることはありません、できません。学生といえどもグラント(育英会のよう な借金ではない!)を持っています。グラントは学会が選んだ大物ではなく、その分野にもっとも近い筋の中堅が審査します。場合によっては実際に書類だけで はなく研究室の下見や面接をすることもあります。奨励研究だけではなく、かなり大きなグラントも審査基準の重きは印刷された論文ではなく、グラントの対象 自体の未公表のデータと計画にあります。文部省重点領域科学助成金のようなグループでとるグラントの比重が高くないです。グラントの消耗品品種に対する規 制が少ないです。管財人がいるので自分で研究費を管理したり、そのために人を雇うといったムダな金を使う必要がありません。
  • 全職員の給料の平 均学生 人種別内訳などもインターネットで開示されています。もちろん、大学の収支報告も開示 されています。イントラネットでは学生の氏名も完全開示です。
  • 研究室間の物の貸し借りはほとんど自由で、まず断られることはないです。実 際、私たちの研究室にはPCRマシーン,分光計,HPLCが長らくありませんでした。
  • 学生やテクニシャンに掃除や機具洗いをさせることはありません掃 除 はプロの掃除人が毎日してくれます。ゴミもいっしょにとってくれます。ゴミは危険物と資源ゴミ以外分別しません(家庭でもいっしょ)。ピペット、シャー レ、タオルなど基本的に使い捨てなので洗う必要がありません。
  • 外人(一世)が多いのに、留学生の比率が低いです(米国国民全体でも1割は一世です)。日本人とヨーロッパ人以外はまず、帰国し ません。研究者は永住権が 簡単にとれます。優秀な研究者の永住権取得は大学が費用を負担してくれます。
  • インターネットのアクセスがとにかく速いモデム通信でも日 本の ISDN並み。全米どこでもそうですが市内通話は無料な ので、学校を通したインターネットは基本的に無料。大学の職員住宅はISDNが利用できます。パソコンやそのソフトのセットアップは各学科に専門家がい て、全てセットアップしてくれます。大学でのホームページ開設、Eメーリングももちろん無料。研究用には数ギガバイトの空間を利用できます。プリンターな どは99%ネットワークなので、出力装置を購入する必要はありません。また、「MSオフィス」や遺伝子解析ソフトも各部門のサーバーから無 償でダウンロードできます。マック版だってあります。イントラネットで私たちの癌センターでは各デスクに2本ずつISDNライン(10Tピン)と 電話線があるので、全ての研究者が自分のコンピュータをつなげれます。学内報もEメーリングで、コストダウンされています。ただ、医学部ではマック,ウィ ンドウズとUNIXがそれぞれネットワーク化されているものの、マックのデータがUNIX経由でしかデータをやりとりできない孤立状態となっています。
  • 培地がまずコンタミすることはありません。湿度が低いからです。大腸菌は火の側で取り扱わなくてもカビや雑菌はまず生えません。 培養細胞も指をつこんだ り、オートクレーブのかかってないチップで吸っても数日ではまずOKです。外へ出ると太陽光線が水などの微粒子で遮られることがないので、低緯度であるこ とと重なってたいへん眩しいです。
  • 各実験机にバキュームライン、エアライン、ガスラインの3本セットがきている他、普通の水道の脇に脱イオン水が出る水道がありま す。もちろん、研究者が直 接管理することはありません。
  • 一年に一度の驚くべき催し物があります。第一に皆でマリ○ァナを吸おう、 という日 (ハッシバッシ)。逮捕者が続出しながらもちょっとした人溜りが煙でくよります。もう一つは、深夜全裸マラソン。男女の卒業生が卒業式の日、全裸で疾走す るものです。この模様はローカルテレビで放映されます。ただし、足だけの映像と、見物人の「おぉっ!」という歓声だけが延々放送されます。
後記:深夜全裸マラソンがなくなる? (2000年4月)
2000年、ついにミシガン大学は上記の深 夜全裸マラソン(ネイクドラン)の阻止に乗り出しました。1986年野郎どもが始めて以来、 年々参加者と野次馬が増えてきたこのイベント。数年後には女子大生も参加するようになり、野次馬も数千人規模となりました。もちろん、法律で性器の露出は 禁止されていますが、毎年、よくオーガナイズされていたためか、さしたる混乱もなく、大学側は今までイヤイヤながらも黙認してきました。ところが、近年つ いに高校生たちも加わるようになるにいたり、健全な青少年・少女たちへの悪影響が懸念されて来ました。また、大量の野次馬などにより公道や大学校内が占拠 されるといった状態でした。野次馬の多くはカメラやビデオを手に、また一部の不届き者は キャプチャーをインターネットで公開するといったことをしでかしました(リンク先の画像は明らかに走者・HP作者いづれも法律違反であることは明 確です)。今年になり、わが町の「ア ナーバー新聞」が一面で大きく取り上げるにいたり、街の人の間でも盛んに議論されるようになり、学長は全ての卒業生に全裸マラソンに参加しないよ うにメールを送られま した。また、こうなると警察もだまっていないかもしれません。
果たして、今年はどうなるのでしょうか?もしも全裸マラソン参加者が逮捕された場合、市内に住む私としては野次馬が暴徒化しないか心配です。一方で、二児 の親としてあんまりありがたいイベントでないのも確かです(私は一度も行ったことありません)。
それにしても、こちらは公衆に対する性の規制が厳しく、テレビではトップレスも厳禁でモザイクが入ります。以前、美術館の紹介番組で写実主義の絵画にある 裸婦にモザイクがかかっているものを見たことがあります。成人向けチャンネルでは恥部露出の性交シーンまで放映しているのと対照的です。ただし、アジアの 未開人種の場合、土着の風習ということでボカしなしのドキュメントを見たことがあります。日本人もそうなのでしょうか、第2次大戦のドキュメントでは平気 で下腹の出た兵士の死体などが出ます。また、女性の水着姿はセクシャリティの警告とともに放映されますが、筋肉ムキムキもっこし男性の姿はOKで、日本の 100倍ぐらい頻繁に画像に出ます。女性解放運動の成果を見るようです。こうした感覚のギャップが学生をマラソンにかりたてるのでしょうか。
一方で、暴力シーンには比較的寛容で、ドラマなんかで安全装置をはずした銃で相手を脅すシーンにはドキッときますが、殴らない限り「子供不適」にはなりま せん。歴史専門チャンネルではよく過去の戦争の歴史をやってますが、「攻めてくる日本人が怖かったが、あぶないところでぶっころしたぜ」風の発言を平気で 放映します。原爆投下は戦争の終結、つまり平和の到来に重 要な役割を果たしたと放映します。物質的被害が画像になりますが、人的被害は全く示しません。同じ暴力でもセクハラのように性と絡むとたいへん厳しいで す。水着ギャルのポスター?論外です!

どーっと話がそれましたが、まあ、今年の全裸マラソンはどうなるのか・・・事の推移を見守ろうと思います。

結末:参加者は大幅に減少しましたが、例年通り開催されました。
 

後記2:深夜全裸マラソン合法化路線へ転換 (2002年4月)
毎年、圧力が強くなる一方のネイクドラン。ついに今年の参加者のほとんどが下着をつけて走りました。警察の見てないとこ ろでは例年通り全裸になったようですが、目の前で全裸になった走者からついに逮捕者が出ました。今後、ネイクドランは合法的に走ろうという路線に転換する ものと思われます。また、一般のケーブルテレビも有料アダルトチャンネルの配信をやめ、一切の性的アクティビティは無事子供たちに届かなくなりました。イ ンターネットの性表現コンテンツへのアクセスもプログラムやプロバイダーで厳しく制限するのが当たり前になってきました。
 
  • 一般にMD&PhDを持っている研究者の方がPhDのみの研究者より優秀だと考えられています。
  • どれだけ優れているかで評価されることが多いですが、欠点がいかに少ないかで評価する、さ れること がほとんどありません。人事の中心は足の引っ張り合いではなく、優秀さの比較です。
  • ろくに取材せずに科学ネタ、はては横領ネタ、談合ネタなどを書く新聞社をあまり見かけません。少なくても本人にはかならず取材に 来るようです。
    (1998年9月)

 
 
 
電子レンジの極意
電子レンジはタッチパネルが多く、しかも液晶パネルなので、数字入力に時間がかかる。そこで、如何に少ない手順で事を足せるかを考察 した。例えば1分30秒のあたための場合、明らかに「90秒」と入力した方が早く入力できる。なぜなら、手数が2手であり、しかも9と0は隣あっているか らである。また、1分,1分30秒,2分という感覚で入力すると「1:00」「2:00」と時間がかかる。次に、注目したのが、「1分11秒」「2分22 秒」・・・である。手数は3手と同じであるが、同じパネルなので高速で入力できる。最期に、繰り返し電子レンジを使用する場合、毎回一々時間を入力するの ではなく、途中でドアを開けて、強制中断した後、次のサンプルを入れて、再開するというテクニックである。これらの方法で、反復度の高い電子レンジで「チ ン」の処理をより高速で行えるようになる。この結果については近々"Journal of Denshi-renji"(J.Den. Ren.)に報告する予定である。 なお、私はこの過程で、電子レンジは「90秒」という数値を受け付けるだけではなく「99分99秒」という、日頃の感覚だとちょっと計算しにくい数字も受 け付けることを見出した。このことについても別の機会に報告したい。
(1998年9月。ちなみに電子レンジは英語でMirowaveでElectoric Rangeじゃないです)

 
 
考案:完全自動マイクロあらい(IP)装置!
蛋白質間の相互作用を検討する方法として共免疫沈降実験(IP)という方法があります。蛋白質AとBを培養細胞で発現 させ、蛋白質Aに結合する抗体で免疫沈降させ蛋白質Bに結合する抗体で、BがAとともに沈降したかどうかをみる、というものです。私の場合、通常新規蛋白 質を対象にしていますので、読み枠にタグをつけて、市販のタグ抗体を用いてこの手の実験を行っています。ところが・・・・・
今や、アポトーシス調節因子は膨大な数となってしまいました。キャスパーゼだけで10種類以上、Bcl-2ファミリーや他のキャスパーゼ調節因子も同様で す。コントロールを兼ねて全ての因子と総当りをやるので、有に100サンプルを超えてしまいます。酵母のTwo Hybrid法も併用していますが、こちらは生理的条件以下の親和性(μM)でも検出できてしまうし、転写調節因子と似た領域、たとえば酸性アミノ酸残基 続いた領域があれば両者が結合しているようなデータが出てしまいます。

そこで、ぜひ業者さん、以下の装置を作ってください。名づけて「マイクロIP装置」!

マイクロアレイってみなさんご存知でしょう。そう、ドットハイブリダイゼーションをどかーっとやるやつです。このIP版を作るってわけ です。ELISAの好感度版だと思ってもらえればいいです。

  1. まず、293T細胞を96穴にまき蛋白質A,Bの発現プラスミドをトランスフェクトします。これもロボットで完全自動でできれば もっとグー。
  2. 培養後、96穴対応完全マイククロIP装置にかけます。
  3. 装置はマルチチャンネルピペットを用いて培地を除いて界面活性剤入りのバッファで細胞を溶解します。
  4. プレートを遠心後、上清をとり、96穴対応マイククロIPカラムにかけます。カラムの底は最初ふさがれおり、若干のバッファとと もに蛋白質Aに対する抗体 とプロテインA/Gセファロースが分注されています。
  5. 装置は自動で2時間ほどプレートをゆすります。
  6. 底が除かれて、バッファーが吸引されます。と、ともにマルチチャネルピペットで洗い用のバッファーが加えられます。
  7. 数回マトリクスは洗われた後、自動で電気泳動にかけられます。
  8. 自動にウェスタンブロットもしくはそれ相当の方法でtagのついたタンパク質が検出されます。
いくらなら買うだろ?うーん
(1998年9月)
 
 

上記のプロトタイプのようなものがScience(だっけ?)に報告されました!でも残念なことにブロットなのでどこまで結合を信じて いいのか、わかりません。おそらくtwo hybrid system程度の特異性と見ていいのではないかと思いますが。
(2000年)



 
 
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歯学 部教授選考をめぐって 広島大学広報委員会
大 学等におけるバイオサイエンス研究の推進について 学術審議会特定研究領域推進分科会バイオサイエンス部会 1999/06/17 答申


 
 



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